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未来への備え: LLMアプリケーションのセキュリティとガバナンス

この記事では、急速に進化する生成型人工知能(生成AI)の波に備え、インターネットユーザーや企業が直面するセキュリティとガバナンスの新たな課題に焦点を当てています。OWASPによる大規模言語モデル(LLM)アプリケーションのセキュリティとガバナンスチェックリストの紹介を通じて、技術的進歩がもたらす機会とリスクをバランス良く管理する方法を探ります。

OWASPの作成したガイドラインとチェックリストは非常に長いため、複数回に分けて解説していきたいと思います。今回はガイドライン作成の動機と概要、必要な知識を紹介します。

企業が直面する生成AIの可能性と挑戦

生成AIは、様々な産業において革新、効率向上、そして商業的成功を約束します。しかし、どのような力強い初期段階の技術もそうであるように、明らかな挑戦と予期せぬ課題をもたらします。人工知能は過去50年間で大きく進歩し、ChatGPTの公開が個人と企業の間で大規模言語モデル(LLM)の開発と使用を推進するまでは、さまざまな企業プロセスを目立たず支援してきました。これらの技術は当初、学術研究や企業内の特定の重要活動の実行に限定され、ほんの一部の人々にしか認知されていませんでした。しかし、データの利用可能性、コンピュータのパワー、生成AIの能力の進歩、そしてLlama 2、ElevenLabs、Midjourneyなどのツールのリリースにより、AIはニッチな存在から一般的な広範囲な受け入れへと変貌しました。これらの改善は、生成AI技術をよりアクセスしやすくするだけでなく、企業が運用にAIを統合し活用するための堅固な戦略を開発することの重要性を浮き彫りにしました。これは、私たちが技術をどのように使用するかにおいて、大きな前進を代表しています。

AIのセキュリティとガバナンスのチェックリストに関するOWASPのガイドラインは、このような革新的な技術の導入と活用を目指す企業にとって非常に重要です。本記事では、その概要と、なぜこのチェックリストが業界リーダーにとって不可欠であるかを紹介します。

OWASPによる安全なAI導入へのガイド

Open Web Application Security Project(OWASP)は、ウェブアプリケーションのセキュリティを向上させることを目的とした国際的な非営利団体です。2001年に設立されたOWASPは、ソフトウェアのセキュリティが直面する問題に対処し、開発者、技術者、および組織がより安全なアプリケーションを開発、購入、および維持できるように支援するためのツール、ドキュメント、フォーラムを提供しています。この団体は、セキュリティリスク、脆弱性、およびウェブアプリケーションのセキュリティに関連するその他の問題に対する意識を高めるために、コミュニティ主導のプロジェクトや広範囲の教育イニシアチブを実施しています。
OWASPのもっとも有名な成果物の一つは、ウェブアプリケーションセキュリティの最も一般的な脆弱性をランク付けした「OWASP Top 10」です。このリストは定期的に更新され、ウェブアプリケーションのセキュリティを改善するための基準として、世界中の開発者やセキュリティ専門家によって広く利用されています。

AI、機械学習と生成AIの定義

まずはいくつかの概念を理解していただく必要があります。

AIは人間の知能が必要とされるタスクを達成することを可能にするコンピュータ科学の全分野を包含する広い用語です。

その中で、機械学習と生成型AIはAIの二つのサブカテゴリーです。

機械学習はデータから学ぶアルゴリズムを作成することに焦点を当てており、生成型AIは新しいデータを作り出すことに特化しています。

大規模言語モデル(LLM)は、人間のようなテキストを処理・生成するAIモデルの一種であり、大量の自然言語データセットに基づいて訓練されています。

生成AIアプリケーションのセキュリティ

生成AIという分野の歴史が非常に浅いということもあり、企業にとっては生成AIソリューションのセキュリティと監視において未知の領域に足を踏み入れています。そして生成AIの急速な進歩は、攻撃者が攻撃戦略を強化するための扉も開き、防御と脅威のエスカレーションの二重の課題をもたらします。

大規模言語モデルの活用はテキスト生成に限られていませんが、OWASPのガイドラインの主な焦点は、コンテンツを作成する機能を持つ大規模言語モデルを用いたアプリケーションにあります。様々なアプリーケーションがリリースされることに連れ、新しい問題やチャレンジが発見され、それらに対処するべく、各国は法律やガイドラインを発表してきました。それによってAIの責任ある使用と信頼性の高いAIに関する方針は、元々理想論を元にしたものから現実に基づいたスタンダードへと進化しています。OWASPのガイドラインは、AIの全側面にわたるより広範で困難な考慮事項に対処しようとしています。

開発する前に確認しておきたいチェックリスト

OWASPのリリースしたドキュメントはただ様々なセキュリティ問題を定義し、それらの対処方法について議論するだけではなく、企業が生成AIを用いたアプリケーションを開発する前にチェックすべき具体的な項目をまとめているチェックリストも提供しています。

このチェックリストは、技術や法律、規制が急速に変わる中で、組織がLLM(大規模言語モデル)の初期戦略を立てる手助けをすることを目的としています。

チェックリストを使って戦略を立てると、ミスを減らし、目標をはっきりさせ、一貫性を保ちながら、集中的に戦略の策定や開発を進めることができます。チェックリストに従うことで、安全に技術を導入する過程で信頼を築き、シンプルで効果的な方法で継続的に改善を進めることができます。

しかし、すべてのケースや各国や自治体の法律や規則に対応しているわけではありません。そのため、提供されているチェックリストに含まれている項目のみならず、アプリケーションをリリースする予定地域の法律などを確認し、適切なチェック項目を設定する必要があります。

次回では大規模言語モデルのチャレンジと脅威のカテゴリーについて解説する予定です。

英語版の元のガイドラインとチェックリストを確認したい場合は、こちらのリンクからアクセスしてください。

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