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「販売員に必要なことって、何だと思いますか?」という質問の答えについて

先日、クライアントさんの紹介で、ラグジュアリーブランドの本部業務をされている方にお会いしました。

元々は店頭の販売員をされていて、現在はVMもMDもPR担当もこなす、真面目でクリエイティブな方です。

ちなみに相当かっこよかったです。この業界にいると見目麗しい人に見慣れますが、外見はもちろん身のこなしも、話の内容も、久しぶりの抜群クラス。話が面白かったので、帰るころには笑いすぎて疲れましたけど(笑)。

そんな初対面のスペシャルなイケメンの前で、大きなスペアリブを手づかみで貪っていた私ですが、突如向けられた質問に答えるため、持っていた骨をお皿に置くことになります。

「販売員にとって、一番必要なことってなんだと思いますか?」

イケメンの横に座っていたクライアントの社長がさんざん私を持ち上げた直後だったので、何かかっこいいことを言いたい気持ちにもなったのですが、そこはやっぱりいつも通りの答えを返すことにしました。

「常に、お客さんでいることです」

イケメンと社長は2秒くらい固まってしまいました。固まってる間にきっと適切なリアクションを考えたのだと思います。

「そういう考えはなかった!」「俺からその言葉は出ないわ!」と、元ラグジュアリー販売員のお二人は機転を利かせて受け止めて、感嘆で返してくれました。ありがたや。

おそらく、「予算への意識」とか「顧客づくり」とか、「商品知識」あたりが出てくると思われていたと思います。ちなみにイケメンはそのあと、「人間力」というワードを出していたので、彼自身は販売員の頃そう考えて店頭に立っていたのかもしれません。どれも正解だと思いますが、私の答えは「常にお客さんでいること」です。

販売員が、常にお客さんでいることのメリット

単純に、販売員としてお客様の立場に立って考えるより、お客様としてお客様の立場に立った方がちょっとでもお客様に近づけそうだと思います。「販売員として」の考え方や刷り込みを消さないと、お客様になりきることは難しいです。

私はあえて接客されに行くし、買い物もします。もちろんネットもチェックしますし、ネットでも買います。

サービスの快不快はもちろん、どのようなことをされるとどんな気持ちになるのか、販売員がやっていることがどう映るのか、お客様はどうしてそういう行動をとってしまうのか、そういったことが、販売員視点を捨ててこそ見えてきます。

販売員が「顧客満足のため」とやっていること、教わったことが、お客様は本当に嬉しいのか?求めているのか?

販売員がお客様に「なんで?」と思ってしまうこと、そんなに不思議なことなのか?そういう言動を取らせているのは何が原因なのか?

このあたりを顧客視点で感じ、推測でなく具体的な感想として持つには、お客様になるのが一番早いと思います。

お客さんになり切って気づいたことの例

たとえば、お買い上げ後のお見送りです。

接客されて買うと、だいたいのお店で販売員さんのお見送りが付きます。お店によっては、深々と頭を下げ続け、お客様の後ろ姿が見えなくなるまでお辞儀を続けています。それが基本だと教わるお店もあるでしょう。

でも、これをやられる方は、けっこう気恥ずかしいですよね。(満足度が上がる方ももちろんいらっしゃると思いますが。)

あと、その様子を見ながら販売員が手が空くのをずっと待っているお客様からしたら「おーい、まだですかー!もう見てないよ!」って言いたくなるような場面です。

私は、お見送り自体をしなくていいとは思いません。感謝の伝え方のひとつとして良い行動です。でも、お客様との関係やお客様が期待することはそれぞれ違うのに、一律で見えなくなるまでお辞儀するって、必要でしょうか?

ずっと背中に視線を感じながら歩くお客様のなかには、早く視界から消えたくて近くの角を曲がってみたり、お見送りから早く解放してあげようとお店の死角側の通路を通って帰ったりする方がいます。かくいう私もそうします。

販売員がお客様の満足度を上げようとしている行動に対して、実はお客様が気を使って販売員の気持ちを満たしてくれているなんて意味が分かりませんし、販売員としてそんな行動をするように言われるのも、言うのも嫌です。この業界には、こういう、ちょっとモヤっとするのに慣習として放置されているコトはよくあります。しかしそれこそが、いまお客様が店頭に来るのを億劫に感じる理由のひとつではないかと思うのです。

問題定義をしたところで、じゃあ、どうすればいいでしょうか?

接客はビジネスが絡む対人コミュニケーションなので、大切なのはきちんと落としどころを考えること

お客様になったときに実際モヤっとすることについて、不満を言うまでは誰でもできます。お客様ができます。でも解決や改善は、販売員がするべき関係です。だから販売員のみなさんには、ぜひ解決策を導き出すところまでしてほしいと思います。

参考までに、お見送りについての私の解決策は次のとおりです。

お見送りを期待していなさそうなお客様であれば、一番最後に「本日はありがとうございました。すみません、こちらで失礼いたします」と言い、失礼する宣言をしてしまうのです。

そうすれば、もしお客様が何気なく振り返ったとき誰もいなくても「失礼しますって言ってたわ、そういえば」となります。曲がりたくない角で曲がる必要もなくなります。反対に、何も言わずにお見送りを完遂しないでクレームになることもないでしょう。あと、コミュニケーションが取れているお客様であれば「すみません、こちらで失礼いたします」に対して「あ、はい大丈夫ですよ」くらいは返してくださいます。これなら、傍から見ている別のお客様が、早めにお見送りを切り上げる販売員に興ざめすることもありません。

ブランドによってはお見送りを徹底することが決まりのところもあると思いますが、そういうわけでもなくて引き際が分からない人は、やってみてもよいのではないでしょうか。

お客さんになりきって気づける、もっと単純なこと

最後に、話は変わって、

隣のお店のこと、同フロアの競合店のこと、どれくらい知っていますか?

もっと言うと、それらのお店の「今日の様子」を、知っていますか?

お客様は、あなたのお店を目掛けてきたわけでなければ、きっと今日それらのお店を見てきたか、これから見ることになると思います。それをあなたは見て知っていますか?

周りを知らずして、優位に立てるようなことを言えるでしょうか。セーフティーネットを張れるでしょうか。(決して周りを蹴落とすなどということではなく、たとえば「こういう感じで白って珍しいですよね」とトークをしたものの、競合店でも扱っているというオチは決まらないということ)

お客様は、自分にとって一番良さそうに思えるものを買っていかれます。

だから、売上をつくるためには、

お客様に選んでもらえるものを出せること、選んでもらえるようなことが言えること、お客様からこの人は分かってくれると思われる存在であること、頼りになると思われる存在であること、ついついこのお店に来ちゃう、そんなお店作りが必要だと思うのです。

そのすべての起点が「お客様」だから、私は「常にお客さんでいること」を大切にしています。

皆さんは、いかがでしょうか?


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