ふくすけ2024 歌舞伎町黙示録

ふくすけ2024
歌舞伎町黙示録 at Theater MILANO-Za

舞台「ふくすけ」は1998年の再演でみているので、26年ぶり。98年は世田谷パブリックホールとハコの大きさはさほど変わりないと感じたけど、歌舞伎町タワーというビルの6階にあることは、もともと歌舞伎町が舞台の作品なので、歌舞伎町を睥睨しているようでもあり、ランドスケープとしての歌舞伎町を強く感じてしまう。
松尾スズキの作品は大人計画名義のものが多いが、初演は「悪人会議Vol.1 ふくすけ」、自分のみた再演は「日本総合悲劇協会VOL.2 ふくすけ」となっていた。2012年のシアターコクーン再再演では、もうプロデュースを擬すこともなくなったが、今回は、-歌舞伎町黙示録-という副題がついた。

もっとも松尾スズキ的な作品が「ふくすけ」ではないかと思う。
いくつものエピソードが行きつ戻りつ、終局のカタストロフィーまで疾走する。躁鬱症のエスダマス(秋山菜津子)は、故郷の九州から出奔し、流れ着いた歌舞伎町の裏世界で暗躍し、あげくに都知事選に出馬。そのマスを捜し歩くヒデイチ(荒川良々)と彼が協力を頼む風俗嬢フタバ(松本穂香)とルポライター(皆川猿時)。盲目の妻、サカエ(黒木華)と彼女に歪んだ感情をもつコオロギ(阿部サダヲ)。薬害で奇形となった”ふくすけ”(岸井ゆきの)が、彼らに絡めとられ、振り回され、憎しみと哀しみの果てに、暴走してゆく話。(なんのこっちゃ、ですみません。)

人間が生まれ、生きることの不条理を、せせら笑いつつも、もがき抗い、逃げようとするありさまを、笑いと哀しさ、諦念に似た目線で炙り出す松尾スズキの傑作だと思う。

「この世はフィフティフィフティ」風俗嬢のフタバ(松本穂香)が、生も死も同じ価値であると断言するシーンは、絶望的な哀しさと美しさに満ちていた。
黒木華、松本穂香が熱演。岸井ゆきの動きと発声がふくすけの哀しみを体現している。コオロギの浮気相手チカを演じた内田 慈も強い印象を残した。何よりもマスを演じた秋山菜津子の素晴らしさたるや!
何度もみたいが、チケットがとれない。
#ふくすけ


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