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眼の前で、コンサートを聴きながら、天国にいる演奏家を思い出していた

暑中お見舞い申し上げますm(__)m💕💛

酷暑・大雨・・・・・。今年の夏も、なかなかに厳しいですね。皆様、お元気でしょうか? 

先週の土曜日、千葉県の市川市の市川市文化会館で、「第36回 若い芽のαコンサート」を聴いて来ました。

このコンサートは、千葉県にゆかりがある有望な若手演奏家を応援するべく、毎年「県民の日」に合わせて、開催されています。今年は、「千葉県誕生150周年」でもあるので、こちらに合わせて7月に開催になったようです(本来は、6月なんですね。千葉県の「県民の日」は、6月15日なので)。

山下一史さんが千葉交響楽団の音楽監督になられてから、都合が合えば(そして、指揮が山下さんならば)、応募して出かけるようにしています。招待制の無料コンサートですが、往復はがきでの応募が必要なんです。6月は、大好きなアテフ・ハリムさんのリサイタルと重なることも多く、山下さんの指揮であっても、応募しないこともありました。

それというのも、私は、応援したい相手を探しているわけじゃないからです。山下さんの指揮だから行っていますしね。応援したい音楽家なら、もういますもの。

主催者側が聴いたら激怒しそうな物言いですね(^^;(それゆえか、1度落選しました)

ただ、こんな不遜な聴き手を思いっきり惹きつけた方が2人いました。ひとりは、女性のヴァイオリニスト。もう一人が男性のチェリストでした。

ことに、チェリストの山本栞路(やまもとかんち)さんは、いまでも忘れられないです。2年前にこのシリーズコンサートで、彼の演奏を聴きました。ラロの「チェロ協奏曲」を演奏したんですけれど、その姿と音色たるや、熱量半端なかった。山下さんと千葉響が、彼の演奏に呼応して、だんだんヒートアップしてゆくのが、手に取るようにわかりました。

「僕の演奏を聴いてくれている皆さん、ぼくは、この曲が大好きなんです!  僕は、この曲が演奏できて、幸せなんです。この曲の素晴らしさ、伝わってますか?!」

演奏するその姿から、私はそうした彼の言葉を聴きとった気がしました。チェロと一体になって、全身で作品の素晴らしさ、彼の作品への愛情を伝えてきました。私はもうひたすら圧倒されて、聞き惚れていました。私がこれまで聴いてきた、大ファンのチェリストたちの演奏にも、決して引けを取らない名演でした。

しかも。演奏後のインタビューで、彼が私が聴きとった言葉をそのまま語っていたのです。これにも、腰を抜かさんばかりに驚きました。同時に、これほどまでに明確に、聴き手に伝えたいものを持っている演奏家に出会えたことを、心から嬉しく思いました。

山本さんは、この時19歳。将来どんな名演を聴かせてくれるのか。あんなにワクワクした経験はありません。「この人の演奏、いずれ、また聴けるな!」そう確信したものです。

ところが、今年の春先。Facebookには、彼の訃報がありました。詳細は不明ですが、闘病生活を送っていたのだけれど、力尽きてしまったようだと・・・・。

いずれ、彼の演奏を、コンサートで聴いた折には、終演後、言葉をかけよう。そんな楽しみもひそかに抱いていた私は、21歳で夭折した彼の無念を思って、言葉を失ったのでした。

この「若い芽のαコンサート」には若手の演奏家が必ず3人、登場します。今年は、ホルン・フルート・ピアノの方々。中でもメインを張ったピアニストのラフマニノフの「ピアノ協奏曲 第3番」は、迫力も熱量もすさまじいものがありました。

ただ、私のようなピアノが苦手な聴き手には、いささか辟易する演奏スタイルでしたけれどね。つまり、自己陶酔型なんです。己の演奏に没入しちゃって、そこへ周囲を巻き込むタイプです。別の観方をすれば、それだけのテクニックと魅力があるわけなんですが、私はこういうタイプの才能は、苦手です。

おそらく波長が合わないだけだとは思うんですが、彼の熱量が高くなればなるほど、「そうかそうか。うんうん、自由にやってて」と、突き放した覚めた眼と耳でしか受け取れません。

山下さんと千葉響は、ピアニストの熱量に呼応して、これまたすさまじい迫力で演奏していました。その熱演には拍手を贈りたいのですが、その熱気に煽られながらも、同化できない私がいました。

そうして、同じように山下&千葉響を本気にさせながらも、山本さんとは何が違うんだろう? と、考えていたのですね。

そうして私が出した答えは、「聴き手への意識」だということでした。つまり、山本さんには、「この大好きな作品の魅力を、伝えたい!」という思いがあった。聴き手への意識があったのですね。けれど、今年のピアニストには、そこが欠けていたような気がしてなりませんでした。

実際、演奏後のインタビューで今回の選曲理由を問われての答えは、こうでした。

「今年、ラフマニノフは、生誕150年。そして、千葉県も今年誕生150年ですから、お祝いにもいいかなと思いまして」

客席からは拍手が起きてもいましたが、私はこういうの、どうも嫌なんですね。小賢しいという言い方は、厳しいかもしれませんが、計算のようなものが見え隠れしている気がして、がっかりするんです。演奏スタイルが私の苦手なタイプだったので、余計厳しい見方したのかもしれませんが(^^;

熱演は認めるけれど、共鳴できない演奏を聴きながら(協奏曲の場合、指揮者とオーケストラが良くても、ソリストがバランスを壊すことが時々あります。専門的なことは、私にはわかりませんが、たぶん、ソリストがオーケストラの音を聴いてないことが原因だと、私は想っています)、私は2年前の山本さんの演奏を思い出していました。

演奏そのものは無理ですが、彼の熱くて情熱的な姿だったり、華奢な感じの人だったのに、大きく観えたことだったり・・・・。若々しさの中に、深く醸成された音色に惹き込まれたことなどを。

このシリーズコンサートは、若い演奏家への応援が主な目的ですから、「このコンサートにご出演の方々は、ここをスタートにして、世界へ大きく羽ばたいている方々ばかりです」という賞賛の言葉が、どうかすると飛び交います。実際、今人気のピアニスト・角野隼人さんも数年前、ご出演だったようです(山下さんが指揮でなかったので、私は聴いていません。山下さんが指揮されたオペラ聴いてました!(^^)!)。

それはそれでやむを得ないとしても、山本さんの夭折を知る私には、その賞賛の言葉が少なからず、悲しいものに聴こえます。

「山本君、今頃は天国で、元気にチェロ弾いているかなぁ・・・・・。天国に羽ばたいちゃったんだねぇ・・・・・(;_;)もう一度、聴きたかったなぁ」

そんなことを思いながら、暑さの残る頃合いに、帰途に着きました。

なかなか梅雨明け宣言が出ませんが、それもそのはず、梅雨前線戻ってくるとやら。マジか(>_<) いやまぁ、関東南部は降ってくれないと困りますが、酷暑を和らげる雨でありますように。

皆様も、くれぐれもご自愛くださいませm(__)m💕💛

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