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今年の聴き納めのコンサートは、素敵な贈り物ばかりだった💖

先週の土曜日の午後、千葉県の市原市にある、市原市市民会館で「千葉交響楽団特別演奏会 明日への響き」を聴いて来ました。

<今、ホールへのアクセスについて、あれこれ書いてきて、「あ、これだけで1本記事になるわ!」と気づいたので、今回割愛します>

初めての街・初めてのホールでしたが、快晴でコンサートの盛会を予感させました。

私の予感は的中しました。

ほぼ9割方は埋まっていたホールは、楽しそうなざわめきと期待あふれる熱気で、活気に満ちていました。今回、地元の4つの中学校の吹奏楽部から選抜された70人との共演もあったので、ご家族やご親戚などもたくさんいらしていたようです。そのせいもあってか、客席の雰囲気も、暖かい空気でした。

こうした状況で、始まったコンサート。
オープニングは、ベルリオーズの「ローマの謝肉祭」。タイトルは知っていたのですが、演奏を聴くのは初めてでした。

実は、指揮者の山下一史さんをはじめとして、コンサートマスターの神谷未穂さんや何人かの楽団員さんは、前日に別のコンサートの本番があったり、プレイヴェントがあったりして、相当お疲れのはずなんです。

ことに山下さんと神谷さんは、「リハーサル、どうするんだろう?」と案じられるほどのハードスケジュール。10日の旭市でのコンサートでも、山下さんはいささかお疲れが見えていたので、余計気がかりでした。

けれど、やはりプロはすごかった! 私の心配を吹き飛ばす迫力とエネルギーに満ちた演奏を聴かせてくださったんですね。とても華やかで明るい演奏は、クリスマス時分に聴くにはふさわしいものとして、私には響きました。

この後、演奏されたのが、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲 第2番」。ソリストは、小井土文哉(こいどふみや)さん。お名前は知っていたのですが、演奏を聴くのは初めてでした(ベルリオーズ作品と同じですな)。

最近の若い演奏家は、スタイルもいいし、美男美女さんも多いんですが、この小井土さんもすらりとしていて、なかなか愛らしいお顔をしている方です。

ただ。私は実は、ラフマニノフ、好きじゃないんですね。ピアノ自体が好きではない、ということもあるんですが、どうもねぇ・・・・。楽譜が読めないので、これは演奏家の演奏でいいものに出会ってない、というのも原因かもしれません。

これまでに聴いてきたピアニストのラフマニノフは、多分にテクニックにおぼれて、聴き手に伝えるものを持ってない気がしたのです。演奏家がラフマニノフを愛しているのかどうかすら、私にはわからないんです。それで、今回演奏されるのがラフマニノフだと知って、いささかうんざりしていたんですね。

ところが。小井土さんの演奏は違いました。私の席からは彼の演奏する姿が良く観えました。派手なパフォーマンスなどはありません。けれど、彼の弾くピアノには、一音一音深さがあり、暖かさがあり、悲しみもありました。激情がほとばしることもあれば、よろこびが爆発しているときもありました。

しかも、山下&千葉響の演奏を本当によく聴いてらっしゃるのが、素人の私にもよく伝わります。何故なら、聴いていて、バランスが絶妙で心地よかったからです。それは、オーケストラとの対話がうまくいっている何よりの証拠なのです。

「こんなに、しみとおって来るラフマニノフ、聴いたこと無い・・・・」

私は、コンサートマスターの神谷さんと小井土さんが醸し出す、真剣勝負だけれど何処か柔らかさも持った雰囲気に、すっかり魅了されていました。最愛のマエストロは、ピアノに隠れてしまって見えません。時々左手だけが見えるんですが、その動きもかなり熱を帯びていたようです。

私の中にある、ラフマニノフへの偏見を拭い去るような名演でした。

この後の彼のアンコールは、シューマンの「トロイメライ」。このところ、シューマンを聴けないでいるので(まぁ、”山下一史のシューマン”が、なんですが)、ストレスでもあるのですが、小井土さんの演奏は、そうした私を慰めるように、暖かく優しい響きを持っていました。

小井土さんとはぜひ、再び共演していただきたいものです。

そうして、後半がまず、中学生との共演です。ここでは、吹奏楽での演奏になりました。私は吹奏楽のオーケストラは聴いたことがなかったのですが(いわゆる”ウインドオーケストラ”と名前が付いていれば、吹奏楽のオーケストラと考えてよいようです)、ここで初体験することになりました。弦楽パートがいません。わずかにコントラバスが2台、低音部を引き受けています。新鮮でした。

山下さんは吹奏楽方面の指揮のご経験もあることは存じていますが、いやはや! あんなに弾けている、楽しそうなマエストロを観るのは久しぶりです。指揮台に上がれば、鬼の形相になりがちなのですが、中学生たちがいることも意識されたのか、終始笑顔で、踊ってらっしゃいました。若い人たちから、エネルギーをもらっていたのかもしれません。

ここでの明るさを、そのままラストの2曲の演奏に持っていかれた感じです。ヨハン・シュトラウス2世の「祭典行進曲」と、エルガーの行進曲「威風堂々 第1番」。どちらも明るい曲調の作品で、ことにエルガーの作品は、日本でも人気の高い有名曲です。

私自身は、エルガーの作品は合唱が付いてないと、気の抜けたビールみたいで、いつも物足りなさを感じるのですが、今回初めて、合唱なしの演奏で、満足したんですね。

緩やかに始まって、次第にアップテンポになるんですが、その様に、山下&千葉響の力強い行進の足音を聞いたからかもしれません。

7年前、山下さんが千葉響のシェフに就任された際のお披露目のコンサートで演奏された、チャイコフスキーの5番。あまりに貧相で、リハビリ中のけがの痛みがぶり返しそうになるほど、落胆したものでした。それでも、山下&千葉響は、今後の前進を聴き手に約束したのです。その時点での全身全霊の演奏によって。

あの時の聴衆との約束は、確実に果たされつつあります。7年追いかけている私には、そう断言できます。もちろん、まだまだ道半ばですけれどね。

そうして、珍しいアンコールがあって、それがシベリウスの組曲「カレリア」から第3曲の「行進曲風に」。エルガーの「威風堂々」よりも、もっと軽快で明るさを持っていて、私は大好きな作品でもあります。実は千葉響、来年度の秋の定期演奏会で北欧の作曲家のプログラムを組んでいます。少し早めのPRの意味合いもあったようです。いい演奏でしたし、会場が千葉市市民会館ですから、案外いいアピールになったかもしれません。

このところ、気分の波が大きいうえに、寒暖差が大きすぎて、参っていました。けれど、山下&千葉響&小井土さんのおかげで、かなり復活した私です。2023年の聴き納めが素晴らしい演奏で、本当に幸せでした💖

来年も、もちろん追いかけますし、ほかの愛する音楽家の方々にも会いに行くつもりです(すでにいくつか予定も入ってます、ハイ)。

今年も、私のつたないコンサートレポートにお付き合いくださった方々に、心から感謝しております。ありがとうございます💖

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