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ここだけの話♬

今週の火曜日と木曜日に、久しぶりに夜のコンサートに出かけた。しかも、中一日置いて、というパターンは、たぶん初めて。行き先も火曜日は、都内の洗足。木曜日は千葉市で、私の感覚からいうと、真逆だった(乗る電車の行き先がもちろん変わるから、そう感じたのかもしれない)。

内緒話のようなタイトルにしたのは、火曜日のコンサートについて、ちょっと思うことを書いておこうと思うからだが、もちろん、少し残念な内容だったりするわけです。

この日、私が出かけたのは、京都市交響楽団のコントラバス奏者のJuvichanと、ピアニストの諸田由里子さんとのデュオリサイタル。ただし、私のお目当ては、Juvichanのほうだった。

彼女を知ったのは、3年前くらいだと思う。相方を通して、だった。

相方はクラシック音楽にはまったく興味がない人だが、音楽自体は嫌いではない。京都市町内会バンドという、マイナーなバンドの追っかけをしていたりもする。

相方もわりに人にこだわるタイプ。このバンドのヴォーカルの笹野みちるさんに興味が出て、彼女の動きを追いかけているうちに、このバンドを追いかけるようになった(ただし、現在は活動休止中らしい)。

笹野さんは現在は東京在住だが、京都のご出身で、大学の同級生たちとバンドを結成した。この中に原田博之さんという方がいて、この方は地元でいろいろな活動をしているそうだ。そうした中で、どういうご縁でか、京都市交響楽団の人たちとも出会ったらしい。その中にこのJuvichanがいた。

3年前に相方が京都まで原田さんの野外ライブに行った折、Juvichanのことを知ったのらしい。私がクラシックが好きで、しかも、弦楽器が好きだということを知っている彼女は、JuvichanのオリジナルCDを購入して、私にプレゼントしてくれたのだった。

Juvichanは、フランス音楽がお好きだという。そのなかでもエリック・サティが一番お好きなのだという。そのサティの曲をコントラバスのためのアレンジして(ご自分で。彼女は作曲も得意なのだ)演奏している。

聴いて驚いた。コントラバスが、こんなに豊かに歌うなんて、私は全然知らなかったから。ヴァイオリンやチェロとは味わいの違う、全身にしみ込んでくる深い響きがそこにはあった。しかも、とてもおしゃれで、明るくてユーモアもたっぷりある。一発で好きになり、一度彼女の演奏を目の前で聴きたい、と、願うようになった。

Juvichanは、オーケストラの業務の外で、独自に音楽活動をしてらっしゃることは、Twitterをフォローするようになって、知った。ただそれらは、京都での活動なので、さすがの私も、足を運ぶのはためらわれた。

山下一史のためなら、或る程度の遠出をする私だが、それは、初めての出会いがコンサートで、そこで一目ぼれしたから、彼の指揮を信頼しているから、できるのだ。

CDの演奏に魅かれたとはいえ、実際の演奏を聴きに京都に行くのは、今の私にはちょっと冒険が大きいように感じた。虫のいい話かもしれないけれど、初めて聴くときは、出来れば、関東で聴きたかった。

その願いが、ようやくかなったのが、火曜日のリサイタルだったのだ。

Twitterで、いち早く情報をキャッチした私は、チケット発売初日に無事、予約できた。後で聴けば、早々に完売したとか(コロナ対策もあって、20席限定だった。完売したのち、若干増やしたらしいけれど)。ワクワクしながら、当日を待ったのだ。

洗足駅が最寄りの駅だった。私には未知の土地だったから、先月の17日同様、電車の乗り換えなども新鮮だった(現地にいって気が付いたのですが、私は、この路線、以前使ったことがあるんです。洗足より先の奥沢に何度か行っています。いやぁ、こういうところ、良い加減だわぁ)。

知らない街なので、リサイタルが行われるホールの場所を確認した後は、少し散策することにした。ただ、悲しいかな、日暮れが早くて、電車を降りたら、もうあたりは暗くなっている。駅周辺を除けば、基本は住宅街らしい。あまりうろうろしていると、不審者扱いされるかもしれない。それで、偶然見つけたコーヒーショップに入って、本を読みながら、時間をつぶすことにした。

そうして、開演時間が来て、待望のJuvichanの演奏を聴く。彼女の演奏は素晴らしかった。ホールが広くはないから、本当に間近で、彼女の音色に浸ることができた。オープニングは、ロシアの作曲家で指揮者でもあった、クーセヴィツキーの「アンダンテ」。この演奏が、緑豊かで瑞々しい情景を私にイメージさせて、「聴きに来て、良かった!」と実感させてくれたものだ。

ただ・・・。弦楽器とピアノのコンビの場合、伴奏のピアニストの力量がかなり物を言うことを、私は経験上知っている。出しゃばりすぎてもだめだし、控えめすぎてもダメ。主張もしつつ、しっかり通奏低音の役割も果たさなければならない。

私の耳には、伴奏の諸田さんのピアノの音が、必要以上に強く聞こえた。私は楽譜は読めないので、彼女は楽譜通りに弾いていたのだと信じたいが、聴いていて、どうもバランスが良くないように聴こえて仕方なかった。メインの楽器の奏者と、伴奏のコンビネーションが素晴らしいと、聴く側にとってこんなに心地よいものはない。けれど、その逆だと落ち着かないのだ。

何時しか、私の耳は、諸田さんのピアノを無視して、Juvichanの音色だけを追う、という芸当をやっていた。このため、終演後私の頭の中では、ひたすら彼女のコントラバスの音色だけが、鳴り響いていた。まぁ、私のお目当ては、Juvichanだったのだから、良いのだけれど。

緊急事態宣言は解除されたけれど、油断は禁物ということか、終演後に彼女に挨拶することはかなわなかった。こういう時SNSは、助かる。Twitterの彼女のアカウントに、感想の一端を書けたから。

え? 直接挨拶できたら、なんと言ったかって? もちろん、演奏の素晴らしさへの賛辞ですが、それに加えて、「今度は、ぜひ、”弦五楼”で、関東にいらしてくださいね!」と、伝えたかった。この「弦五楼」というのは、彼女が、京都市交響楽団で信頼している楽団員の方と結成しているアンサンブルの名前。信頼しあっているメンバーとの名演を、ぜひ聴かせてほしいなぁ、と、願っている(まぁ、私が京都に行ってもいいんですが)。

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