横浜FCの2022新体制展望

 新体制発表を明日に控え、昨季の振り返りを含めて新チームの展望をまとめてみました。激動のJ1での2シーズンで大きく選手が入れ替わり、2019シーズンの昇格を経験したのは、武田・安永・齋藤・中村(俊)・松浦・大内(出場はなし)のみ。すっかり別のチームになってJ2を戦います。
選手動向は1/8現在です。選手の記載順には特に意味はありません(敬称略)。

【監督】
2021 下平→早川
 2021はスタートから躓き、初勝利も覚束ないまま監督交代となりました。まず、誰が主導しての補強だったのかわかりませんが、オフに移籍加入した選手がクレーベを除いてほぼ機能しませんでした。また下平監督のマネジメントにもいきなり疑問符。過密日程の中、前年からの継続性に疑問が残る初戦の選手起用から歯車が狂い、流れをつくれませんでした。
 早川さんはボロボロの状態のチームを引き受け、必死の立て直しを図りましたが、なかなか状態は上向かきませんでした。夏の大型補強でやや希望が見えたようにも感じましたが、はじめは機能した3-4-2-1もそれ以上の変化や工夫がなく、対策されて封じ込まれてしまいました。徳島戦での圧勝のあと、正念場だったはずのラスト6ゲームで2分4敗。チームとしての抽斗の少なさが露呈しました。

2022 四方田
 2022は長く札幌で知将ペトロヴィッチを補佐し、自身も札幌を昇格させた経験をもつ四方田監督が就任。主力選手が流出し、多くの選手が加入したことで、ゼロからのチーム作りになります。札幌では守備を重視するスタイルでしたが、シーズン当初から新しいチームを預かってどうサッカーをするのでしょうか。1年でのJ1復帰という至上命題と、チームの基礎づくりという、相反する仕事を達成するのは容易ではないと思います。辛抱強く見守っていかねばなりません。

【GK】
2021 南(途中移籍)・六反・大内・市川・猿田・ブローダーセン(途中加入)

 2020を支えた六反が完全移籍加入し、異例の5人体制ながら盤石と思われましたが、その六反がチームの低迷と同じように不調、凡ミスが増え、持ち味のフィードも影を潜めてしまいました。これでまったく固定できない状況になり。南や市川を起用して凌ぐも安定しないまま黒星が重なりました。夏に独五輪代表のブローダーセンが加入し、ようやく固定することができました。南はシーズン途中で大宮に移籍、寂しいですね。
 
2022 六反・大内・市川・ブローダーセン
 20年以上GKコーチを務めた田北さんが退団、新しい時代に入ります。神戸移籍の噂が流れたブローダーセンが残留でとりあえず安心です。とはいえ、ハイレベルな彼がJ2でプレーするとなれば、シーズン途中の流出の懸念もあります。六反はもちろん、出場機会の少ない大内と市川がどれだけ成長できるか、結構重要な課題です。
 ブローダーセンはシュートストップやハイボールの処理に非凡な能力を示しますが、やや古典的なGKで、攻撃の組み立てに参加したり、ハイラインの後方をケアしたりするタイプではありません。そのあたりが四方田さんの守備戦術とどう噛み合うかも見どころです。

【CB】
2021 伊野波・高橋・カルフィンヨンアピン(途中移籍)・袴田・ホガン・田代(途中移籍)・岩武・中塩・ガブリエウ(途中加入)
 もっとも不安定だったのがこのポジション。キャラと高橋が故障で出遅れ、伊野波もコンディションが不安定という状況で、常に不安がつきまとうパフォーマンスでした。神戸に戻った小林の穴が想像以上に大きかったと言えます。途中からホガンが先発に名を連ねるようになり、高橋が復帰し、なんとか持ち直すも厳しい状況でした。終盤は夏に加入のガブリエウが好プレーを見せ、岩武が3バックの右で健闘しましたが、最後まで失点は減りませんでした。CBだけの責任ではないですが、あっさり失点することも多く、最大の課題となりました。

2022 高橋・ホガン・岩武・中塩・ガブリエウ・杉田(ユース→)・西山(横浜FM→)
 袴田移籍、伊野波退団とさらに層が薄くなりました。今のところ高橋が中心になると思います。ガブリエウの残留は大きいですが、怪我が多い選手でもあるので、過密日程のJ2では不安です。岩武は本来右SBですし、若い杉田・西山は未知数ですから、ホガン・中塩の成長が頼み。正直即戦力の補強が必須だと思うのですが…。
 個人的には中塩が優れたフィード能力を生かしてビルドアップの基点になってほしいと思います。

【SB】
2021 マギーニョ・袴田・岩武・武田・前嶋・高木
 右はマギーニョ・前嶋が併用、左は高木・袴田併用から終盤は武田と、変遷。いずれも決定打に欠けるきらいがあり、不動の選手は生まれませんでした。4バックが多かった序盤と、3バック中心の後半とで要求されるプレーに違いがあったのも原因ではありますが。CBともども最終ラインのメンバーが固定できなかったのが、前半の停滞と直結していました。

2022 武田・高木・岩武・中村(拓)(FC東京)・亀川(長崎)・イサカ(川崎
 左は袴田が移籍、右はマギーニョ退団・前嶋移籍と大きく変わることになります。成長株中村と元五輪代表で左右ともできる亀川の加入はかなりの戦力アップが期待できます。右は残留の岩武に新加入中村と亀川。イサカは現状未知数ですね。マギーニョのようになれるかどうか。左は安定の武田に攻撃の高木ですが、ボランチ次第では和田も本職ですからここに参入します。
 高木が和田に刺激されて戦術能力を高めて攻守に一皮むけてくれると嬉しいです。

【DMF】
2021 高橋・瀬古・安永・手塚・古宿(途中移籍)・シルバ(途中加入)
 不動の瀬古が誰と組むか、というシーズンでした。手塚・安永が不安定、高橋は負傷中ということで、若い古宿も含めて猫の目のように代わる代わる起用されました。後半は高橋がCBで起用され、手塚は怪我のようでまったく姿を見せず。途中加入のシルバは非凡なプレーは見せるものの不安定で、結局瀬古と安永が中心でした。このあたりの変化のなさも苦しいところでした。

2022 高橋・安永・手塚・和田(横浜FM→)・田部井(法政大→)・古宿(レンタルは満了)
 瀬古が移籍し、シルバもレンタル終了でチームの根幹であるボランチを誰に任せるかが最大の焦点です。順当であれば安永と、本職はSBながらボランチもできる和田となりそうです。あとは手塚の回復次第ですね。また、ハイネルは広島でボランチ経験があります。法政大の中心選手である田部井がどの程度できるかでもかわってくるでしょう。大卒ルーキーながらポジションを掴み、中心選手となった瀬古の再来となってくれれば面白いのですが。

【OMF】
2021 松浦・中村(俊)・松尾・小川(途中移籍)・杉本(途中移籍)・近藤(特別指定)・齋藤
 松浦が負傷がちで、松尾も序盤は調子が上がらず、そこへもってきて齋藤も大怪我で離脱と、かなり台所事情が苦しいポジションでした。期待の小川や昨季加入の杉本もフィットせずで、サイドハーフにマギーニョを起用するほど人選に困りました。終盤は1トップの後ろの2シャドウというシステムになって松尾が定着し、右を松浦とジャーメイン、フェリペとかわるがわる起用、安定しませんでした。

2022 松浦・中村(俊)・齋藤・長谷川(川崎→)・山谷(横浜FM→)・ハイネル(広島→)・近藤(特別指定)
 サイドハーフになるかシャドウになるかでもかなり変わってきます。J1でハイレベルなプレーを見せてきた長谷川の加入はかなり大きいと思います。彼の攻撃力をいかすシステムで望みたいところですね。齋藤はカズが去ればもっとも長く在籍する選手となります。ユースからの生え抜きですから、頑張って欲しいところ。松浦と中村の継続起用は難しいかもしれないのでハイネルや未知数の山谷あたりがどの程度絡めるかです。ただハイネルは外国人枠の問題が…。
 中村を除けば、パサータイプがいないのがやや気になります。長谷川を生かせるかどうか。レアンドロ・ドミンゲスの幻影を追ってしまうことにならないといいのですが。

【FW】
2021 クレーベ・三浦・ジャーメイン・渡邉・伊藤(途中移籍)・サウロ(途中加入)・フェリペ(途中加入)
もっとも出入りが激しくなってしまったポジション。前半はクレーベが奮闘するものの渡邉・伊藤・ジャーメインがほぼ機能せず、得点が激減。一美・斉藤・皆川・瀬沼といなくなってどうなのか、という懸念が最も現実になってしまいました。夏にサウロ・フェリペが加入しましたが、不安定でなかなか定着せず、クレーベは負傷でほぼ出場がなくなり、結局は復調してきた渡邉を軸に戦うことになりました。チーム得点王は渡邉とサウロの4。とはいえ、サウロは2試合でしかゴールを挙げていません。この得点力では残留は厳しかったですね。

2022 クレーベ・渡邉・サウロ・フェリペ・小川(磐田→)・山下(東京V→)・長谷川(川崎→)・三浦(移籍が決定的ながら未発表)
 クレーベ・サウロ・フェリペ残留は大きな驚きとなりました。J2の生態系を壊すとも言われますが、そう簡単ではないでしょう。しかし、強力であることは確かですから、生かしていきたいところです。CFタイプでは、安定感のあるクレーベ・渡邉の残留はありがたいです。加えてサウロはもちろん、昨季磐田でインパクトを残せなかった小川がどの程度やれるかですね。山下と長谷川はウィンガータイプですから、システムでも起用法に大きく差が出ることでしょう。
気になるのがフェリペの起用法。昨季はシャドウでの出場が多かったのですが、あまりフィットしたとは言えず、たまの1トップでも不発。正直どこに入ると効果的なのか、わかりませんでした。

【新シーズン補強概観】
 5人の外国籍選手残留は補強とも言える結果でした。また、若手・中堅を中心に実力者を獲得し、1年でのJ1復帰を目指すという決意が感じられます。
 FWはセンタータイプに小川が入り、層が厚くなりました。また、サイドは充実した補強となりました。MFは長谷川・ハイネル・山谷、DFは中村・イサカ・亀川・和田と、FWも山下はサイド寄りですね。競争も期待できるフレッシュなメンバーが一気に加入。30代は和田とハイネルだけで、将来性も十分です。
 一方、本職のボランチ・CB加入が新人か若手だけで、手薄なままなのが気になります。ハイネルのコンバートもあるかもしれません。和田のボランチ起用が当たれば、十分に成立する中盤ですが、長丁場を考えると不安です。夏の移籍市場を想定しているのでしょうか。
 最後に加入となった山谷・西山の2人は、昨季それぞれJ3・JFLでプレーしていた若い選手。化けてくれると嬉しいですね。
 
【その他】
 新シーズンの大きな問題として外国人枠があります。J1の5人に対して、J2は4人。GKブローダーセンとDFガブリエウは現状動かせないと思うので、攻撃陣のクレーベ・サウロ・フェリペ・ハイネルの4人で2枠を争うことになります。試合数も多く、日程が過酷なJ2なので多すぎることはないにしても、このマネジメントは難しいですね。昨季終盤は7人も外国籍選手が在籍していたのに、5枠が埋まらないこともありました。もったいないので、フル稼働してほしいです。

【個人的期待のスタメン】
・・・・・クレーベ・・サウロ・・・・
・長谷川・・・・・・・・・・・齋藤・
・・・・・手塚・・・・田部井・・・・
・和田・・・・・・・・・・・・中村・
・・・・ガブリエウ・・高橋・・・・・
・・・・・・ブローダーセン・・・・・
 出場時間1・2位の瀬古と松尾が移籍して、読みにくいですね。まぁ、監督がどんなシステムを採用するかでガラッと変わるのがサッカーですけどね。

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