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Szymanowski シマノフスキに近づいてみたら…

私がピアノを演奏する事から、シマノフスキのピアノ曲についての割合が多くなりますが、他の楽器のかた(特に声楽)にも、足しになりましたらと思います。
昔から、シマノフスキとパデレフスキ(ポーランドの作曲家)は大事なレパートリーで、音楽家はじめポーランド語の先生方の教えのお陰で充実した時期が、CD「愛の歌 CHANT D'AMOUR」(全てピアノ曲)として残せて幸いでした。
CHANT D'AMOUR「愛の歌」(クラシック・ピアノソロ) - メルカリShops (mercari-shops.com)

コンサートでの解説や講座をさせて頂いた一方、解釈や演奏がし易くなる何かを探しているものの、行動出来ずに時は過ぎて行きました。廃版も含め、作品解説や演奏のアドバイスを載せてある楽譜がありますので、私の解釈や主張は最低限に抑え、譜読みや演奏を楽にするための一役にしたい気持ちです。自分に合う版を探す時点で譜読みは始まっている意識で、これからキー(筆)を進めていきます。
シマノフスキは、音楽だけではおさまらずに小説や評論など執筆、教育の場でも、活躍は多岐にわたります。

♩ 教育者としての顔 
―ポーランド人作曲家の講義を拝聴した時のメモから―
シマノフスキは、当時は環境が整っていないポーランドよりパリで勉強するように、前途有望な若者に勧め、シマノフスキはワルシャワ音楽院の院長に就任。残した作品に加え、教育の功績からもポーランド現代音楽の父と言われるほどです。
当時は複雑な事情やしがらみで教育改革はスムーズに行かず、シマノフスキ作品の方もポーランドより国外で高く評価されました。
それでもシマノフスキは、ポーランドの音楽教育の基盤を立て直し、
後に(直接シマノフスキに師事しなくとも)、ルトスワフスキ、ペンデレツキ、キラーなどの大作曲家が育ちます。

♩ 文学者としてのシマノフスキと作品の時代区分
シマノフスキ作品は作曲スタイルが変わるごとに、
♪ 後期ロマン派の手法の前期
♪ 独特な響きの印象派スタイルの中期
♪ ポーランド民謡の模倣とは一線を画した民族的な手法の後期 
と三つの時期に区分されます。
その区分に加え、シマノフスキが何を表現したかを考えると、文学者でもある彼に衝動や感動を与えた言葉(詩)が重要になります。シマノフスキが若い時は、後期ロマン派の影響を受けた作風だけでなく、シマノフスキは文学者でもある事に目を向けてみます。

4つの練習曲 op.4 より第3番は、パデレフスキが「この若さで" 第9 "を作曲してしまうとは、何と不幸なことか!」と絶賛し愛奏したエピソードに加え、
シマノフスキが惹かれた文学のムウォダポルスカ(若きポーランド)の世界観が表現されている事も、見過ごせません。
個人的には、ムウォダポルスカの言葉が音楽作品になったような、この時期の作品
・・・ピアノ曲だけでなく、ヴァイオリン・ソナタ op.9やカスプロヴィチの詩による3つの断章 op.5が、今でも好きです。

シマノフスキが愛した文学作品をポーランド語で読むのは、かなりのハードルがあり、そこで、歌曲はじめテクスト付きの作品(オペラや交響曲第三番)の出番です。

歌詞が付いていない声楽曲以外の作品を演奏する場合でも、
シマノフスキが傾倒していた詩人に日本語で近づくためには、素晴らしい翻訳が頼りになります。
シマノフスキが受けたであろう衝撃や感動をイメージしやすい翻訳…
演奏する上で助けられた私の感想ですが、
関口時正先生、重川真紀先生の翻訳や発表には、感動したり腑に落ちたり、簡単に一言で言い表せないほどです。

☆ポーランド声楽曲選集第5巻『シマノフスキ歌曲選集Ⅰ』(楽譜)
*『シマノフスキ歌曲集 Ⅱ(作品2,31、48)』は、今年(2022年)、ハンナ社から出版されます。
https://www.chopin.co.jp/products/vocal_music/poland_Szymanowski.html?msclkid=93c44048d03f11ec84399124df0c6658

☆2017年度 フォーラム・ポーランド会議《第二共和制ポーランドの藝術的風景》より
重川真紀(しげかわ まき)講演「カロル・シマノフスキの原始主義――シチリアからポトハレへ」
http://www.forumpoland.org/ps-prgrm17.htm

☆ポーランド歌曲選集(CD)
演奏者:エヴァ・ポドレシュ、エヴァ・ポブウォツカ
作曲:フレデリック・ショパン、カロル・シマノフスキ、スタニスワフ・モニューシュコ、ヴィトルト・ルトスワフスキ
発売日:2001年07月25日
https://tower.jp/artist/discography/1331169?recondition=True&genre=2&subgenre=10&sort=ZtoA&msclkid=2fceeb18d04011ec88ef5d21f2333de4

導入
初めて弾くシマノフスキ作品は何が?と聞かれた時は、
前奏曲 op.1、練習曲 op.4やop.33 を勧めておりました。
室内楽曲ではop.40のパガニーニカプリスがバイオリニストにはお馴染みですし、他の作曲家がアレンジした作品と聴き比べると、シマノフスキの魅力(特に響き)が分かり易いと思います。

楽譜
私が初めてシマノフスキを弾いた時に頼りにしていた春秋社版のシマノフスキ全集は廃番と聞きましたが、オンラインで入手出来て一安心です。
解説や校定を日本語で読めるのが有難く、ネットが普及していない時代には、調べ物や取り寄せに一つにしても、今より膨大な手間と時間がかけられていると察します。充実した内容の楽譜は、私にとってはガイドで手助けでした。

PMW(Polskie Wydawnictowo Muzyczne : ポーランド音楽出版)は、ジェヴィエツキ校訂のシマノフスキ全集を発行。1975年版では以前の誤りを訂正。
シマノフスキは写真を見る限り長身で、手足も大きかったと想像します。
一方、ジェヴィエツキは小さな手だったと聞き、
その事はシマノフスキのサイズより小さい奏者にとって(特に指使い)、ジェヴィエツキ版と春秋社版を両方見て試せるのがベストと、個人的に思えます。
*シマノフスキと親交が深いピアニスト、ズビグニェフ・ジェヴィエツキについて(Wikipedia)↓
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BA%E3%83%93%E3%82%B0%E3%83%8B%E3%82%A7%E3%83%95%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%82%A8%E3%83%84%E3%82%AD

終わりに
シマノフスキのマズルカ(ピアノ曲 op.50)を、あるかたに聴いて頂いた時のアドバイスを、書きとめます。
「シマノフスキのマズルカは特殊でも難しいものではなく、ショパンのマズルカと同じ様にとらえて下さい」
と、優しく言われて力が抜けた感覚は、今でもはっきり覚えています。


♪おまけ♪
今までリサイタルプログラムでオールシマノフスキは若い時に1回だけ、ワルシャワのあるかたのお宅で弾かせて頂き、貴重な経験でした。
その後、他の作曲家を演奏する時でも、楽しんで聴けるように演奏の合間にトークを入れる事が徐々に増えました。
シマノフスキの「マスク op.34」を弾く時に、リストやドビュッシーの有名な曲と並べ、
それらを美しい響きが印象的な表題音楽とひとくくりにして、話して弾いた時の録音をnoteに載せました。
(リスト:小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ S.175 R.17 / ドビュッシー:月の光)

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