橋上の少女へ

ぼくは少女と出会って何を話すかについて考えている
少女はぼくの書く、物語のなかに存在する

「やあ」、だろうか
「名前は?」、だろうか
「こんにちは」、だろうか
「何してるの?」、だろうか

少女を見つめて立ち止まる ぼくは
十六歳の少年になっている
風が吹いて地平線をかき乱す
目に見えない光が 空から真っ直ぐ降りてくる

「何してるの?」、でもなく
「こんにちは」、でもなく
「名前は?」、でもなく
「ねえ」、でもなく

階段を駆け上がるように、ぼくは言葉を登っていく
少女の立つ橋の上に、自らを押し上げるために

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