ライトノベル

ライトノベルはかなしいから好きだ
少年と少女の恋は
どうしていつもかなしいのだろう
未来にむかって閉じられていく
物語の行間に 薄氷に似たさみしさが
宿るのはなぜだろう

かれらは手に手をとって
ハッピーエンドへ駆けていく
お喋りのあいまに 少女は微笑んで
モノクロームの挿絵から 
遠い世界の風が吹く

紙の上の少年は 
紙の上の少女に恋をする
詩語が絶えずうつり変わるように
美しさの基準はかわるけれど
惹かれ合うふたりの人間がいれば
物語はひとつの運命を
生きはじめる

「たとえここが虚構の世界でも、この幸せは本物で、
 自分は確かに今、ここにいる」

フェアリーテイルを読むように
時をめくっていく
何度くり返したかわからない
幸福を置きざりに
ライトノベルは
今日もつづいている

※括弧内の言葉は、平坂読『ラノベ部2』(MF文庫J)からの引用です。

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