僕のこと。

僕はゲイだ。ずっと。
女の子になりたいわけじゃない。
男が好きなだけ。

これだけのことを言うだけなのに、何年も何年もかかった。口にするのが難しかった。だけど、口にするとびっくりするほどあっけなくて、スッキリした。

小学校の頃はピュアなもので、同じクラスの子が気になるけれど、それが恋とは分からなくて、クラスで人気の女の子が好きだと嘘をついた。

中学でもクラスメイトを好きになり、高校では男の人と初めてキスをした。このまま、地元にいれないと思った。何がいけないかはわからなかった。ただ、遠くへ行こうと思った。遠くに遠くに。

大学で初めて彼氏ができた。嬉しかったけど、その人を好きだったかは怪しい。嫌われたくなくて、なんでも言うことを聞いた。酷いこともされた。でもなんとも思わなかった。男を好きでも大丈夫なんだと、それだけで幸せだった。

学校の友達がいて、週末は彼氏といて。ただ、その二つの世界は相入れなかった。当たり前だ。違う世界を行ったりきたり。たくさん嘘をついた。もちろんたくさん笑った。でも、たくさん泣いたりもした。

そんな僕に友達ができた。ゲイの友達だ。不思議だった。20代半ばまで、僕にはゲイの友達という感覚がなかった。その頃はアプリも活発じゃなかったし、僕は飲み屋に行く勇気もなくて、出会いはほぼネットのみ。お互いに友達という出会いを経験したことがなかった。

ランチしたり、旅行にいったり、買い物したり、男の愚痴を言ったり。普通のことを普通にできる友達ができるのに、そこまでかかってしまった。なんてことないのに。

ずっとずっとアウトプットする場所を求めていたんだと思う。喜怒哀楽を押し殺して生きるのが癖になったから、本音を口に出すまでには時間がかかるけど、アウトプット場所があるのは、すごく大切なことだなと思う。

別に特別悲観的なわけでもない。そりゃあ被害妄想にかられて、悲劇のヒロインを演じてみたりもしたけど、全然悲劇ではなかった。こうしたらよかったなと後悔することも、もちろんあるけれど、それはみんなそうでしょう。

みんな、嬉しい時は嬉しいし、悲しい時は悲しい。どれがどれよりどのくらい辛いかなんて、考える方がバカげてる。

そこらへんのOLと同じように、彼氏できなーい、って嘆いたり、あの人かっこいい、って色めきだったり。普通のことを普通にやっているだけ。

生きる意味なんて特にないと思ってた。ただ、生きてる。それ以上でもそれ以外でもない。生きている意味を人生につけたがるけど、そんなものないと思ってた。いや、今でも思ってる。

でも、僕がここにいたよ、ってなんとなく誰かに知っておいて欲しいなと最近はよく思う。僕のことを知ってほしいとか、理解してほしいとかではなく。僕はここにいる。それだけ。幸せに、ここで暮らしてるよ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?