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「タタール人の砂漠」 ディーノ・ブッツァーティ

脇功 訳  イタリア叢書  松籟社

現在は岩波文庫で出版されている。再読したい作品の一つ。

ブッツァティー「タタール人の砂漠」。なんかよくわからないが、その砦に残っている人達は、何かを待っているみたい。でも何を?それがタタール人達の襲撃だったら、彼らにとって最悪の事態のはず。でも、それを待ってる。なんで。
カフカも同じくらい不条理ですが、こっちは積極的に不条理。カフカの主人公の行動の方が、まだ理解しやすい。
ってな本。

あと、友人が40歳を頂点に人生は折り返してくる、とか、力説していたが、同じようなことが第6章に書いてあった。小説には実際の年齢については書いてないのだが。
(2007 12/23)

「タタール人の砂漠」では、北の山脈にある峠に、舞台の砦がある設定になっている。イタリアの北って(おおまかに言って)ドイツじゃない?タタール?
よく考えてみれば、ハンニバルの昔から、ゲルマン民族大移動、神聖ローマ帝国…と、イタリア半島への侵入は(シチリア辺りは抜かして(また別として)?)北から。特にアルプス近くに生まれたブッツァティーにとっては自明なことだったのかも。
そういえばカフカに「万里の長城」という短編あった。あと、時間を一つの鍵にしているところ、事件的なものは何も起こらず、居心地よいのか皆隔絶状態から離れられなくなる、というのはマンの「魔の山」だなあ。
(2007 12/24)

「タタール人の砂漠」読了報告
何かとカフカに比較されてしまいがちなブッツァティー。この作品はそれより「魔の山」との比較を考えさせられる。マンの作品は大戦が終わった直後に大戦前を振り返った、一方、ブッツァティーの作品はもう一つの大戦直前に大戦後の世界をかいま見た、と、そういう図式が成り立つのかなあ、と。マンはこの作品読んでいるのか。
(2007 12/26)

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