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「君たちはどう生きるか」みた

・忘れないうちに感想をだらだら書く

・めちゃめちゃネタバレ含むので、まだ観てない人はブラウザバックすることをおすすめします


・総合評価☆4.8といった感じだ

・巷では賛否両論らしい。否(ぴ)の意見としては「よくわからなくてつまらなかった」という人が多いみたい。

・たしかに、全体的な流れをつかむのが難しい作品だと思う。「その時点でどんなことが起こっているのか」はまあわかるけども、「あれ、これって今何がしたいんだっけ?」と思ってしまう瞬間が何回かあった。

・そういった意味で、夢の中の出来事みたいだ、という印象を受けた。状況が目まぐるしく変わって、道理なんてものはあるような顔をして実際は存在しなくて、それでも目覚めた(席を立った)ときには直感に訴えかけてくるカタルシスがあって…みたいな。

・例えば、門を開けてしまったとき、謎の儀式(おまじない?)をしてから立ち去る場面。なぜあの儀式が必要なのか?儀式をしないとどうなってしまうのか?なぜ後ろを振り返ってはいけないのか?など、分からないことだらけだが、作中では特に説明がない。

・それは、制作側が受けてのリテラシーや想像力をある程度信頼、期待している証左だ。と同時に、作品とは本来そうあるべきなのかも、と思う。ある程度解釈が解放されていない作品は、どうしても息苦しくなって、観る(読む)のを諦めてしまう。

・例えば、「鬼滅の刃」なんかはキャラクターの心内描写が説明的・記述的すぎて辟易してしまった。いくら青少年向けとはいえ、あそこまでする必要があるのか。

・とはいえ、漫画と映画というコンテンツ提供の形に差がある以上、仕方がないことなのだろう。漫画やアニメは「つまらない」と思ってしまえばそこで追うのを止めてしまえばいい。特に、アニメは金を払ってわざわざ視聴していることは少ない。その時点で視聴を止めてしまったとて、視聴者へのダメージは限りなくゼロに近い。せいぜい、時間を数分無駄にしてしまった後悔が残るだけだ。そういう意味で、漫画やアニメはとにかく「受け手が置いていかれない、飽きない」ことを最重要視して構成を練っているのかもしれない。

・一方、映画は先払いシステムだ。つまり、鑑賞者は1500円かそこらの金を人質に取られている。座席に座って映画と対峙し向き合うことを半ば強制されてしまっているわけだ。そのため、多少説明が不十分で不親切な場面があったとて、それを受け入れる準備ができている。システムから生じる映画の不親切さは、意識されずとも暗黙の了解として大衆に共有されているのかも。


・向こう側の世界(というか箱庭?)で動物がたくさん出てきてよかった。彼らは人語を介して話していたけれど、もし完全にヒトの姿をしていたら、あの雰囲気の世界は生まれなかっただろうな。

・動物といっても、哺乳類があまり出てこなかったのも印象的だった。むしろ鳥類がメインで登場してたけど、それも演出としてかなり面白かった。

・なんか、鳥って不気味じゃないですか?哺乳類と違ってイマイチ何考えてるか分からないし、何も考えていないようにも見える。特に鳥の目が怖い。オマケみたいに申し訳程度にくっついていて、奥が濁っているあの感じ。

・怖さや不気味さを演出するのに肉食獣を起用するのはかなりの常套だ。赤ずきんでも、七ひきの子ヤギでも、三匹の子豚でも、オオカミは悪役だ。しかし、その役に鳥を当てはめるという発想が見事だ。

・「みんな口には出さないけれど、実は生活のどこかで感じている不気味さ」が好きな僕にはかなり刺さる設定だった。

・あの世界で跋扈して王国を作っているのがインコ、というのもよかった。もしあれがサギやカラス、スズメだったら成立しなかったように思える。

・インコと言えば、ヒトの言葉をマネしてしゃべる鳥の一種だ。世間的には賢い鳥とされている節もあるが、あれはただの真似っこなのでそこにインコの思考は介在していない。飼い主がどこかから帰ってきたことを理解したうえで「オカエリ」と発話しているインコは、たぶんいない。そこで、インコが王国の「民衆」であるという設定が映える。

・つまり、彼らは「ただ隣の人が言った言葉を繰り返しているだけで、そこに深い思慮はない、文字通り烏合の衆である」という示唆なのだ。この辺の舞台装置の作り方がかなり上手だと思った。

・考えすぎか。


・冒頭、タイトルが出てくる直前のセリフ「母は火事で死んだ。そのあと、僕と父は東京を出た」(かなりうろ覚えだ)で泣いてしまった。こんな美しい日本語の文あるかよ。

・川端康成「雪国」の冒頭一文を彷彿とさせるね。

・この一文は多くを語ると台無しにしてしまいそうなのでこれ以上は何も書かない。


・戦時中の日本×ファンタジー、という設定はジブリにしてはかなり新鮮だったな。

・「耳をすませば」は現代だったし、「ラピュタ」や「ハウル」なんかは異国の「中世」的なる時代設定だったし。戦時中の話を描いた作品だと「風立ちぬ」とか「火垂るの墓」あたりだろうけど、どうにも火薬臭くてしみったれた話になりがちな印象だった。

・正直、冒頭で軍服を着た男性が出てきたときに「設定は戦時中か…タイトルもあんなだし、説教臭いストーリーなのかな」と肩を落としたのだが、フタを開けてみれば全然そんなことなかった。むしろ「戦争の痛ましいあるあるエピソード」みたいなのはばっさりカットされてたし、それでよかったと思う 


・漁師の桐子(漢字あってるのか?)さん、いいよね…

・サバサバした男勝りなお姉さん、ジブリ作品では結構出てくるよね。千と千尋とか、ラピュタとか、魔女宅とか。ナウシカのクシャナもそうかな

・インターネット上ではロリコンだペドだと叩かれる(はやされる)宮崎駿だけど、あーゆーのも趣味なのかな。

・「男は恋人に母親の像を投射し、自分の母親になってほしいと思っている」という何ともキモい言説をよく聞くが、その理論で言えばサバサバお姉さんは「母親」としての女性像を投影したキャラクターなのかもしれない。



・インコの衛兵たち、ぽてぽてしていてかなりかわいかった。ぬいぐるみほしい。

・けれども、そういったウケを狙っている魂胆が透けて見える気がして、ちょっとげんなりしてしまった。キャラクターデザインの担当者が「このキャラデザはバズるぞ!みんな、二次創作絵描いてハッシュタグ付けてTwitterに投稿してくれよな…ムフフ…」と思っていたらかなりイヤだな

・上映中考えてたことをバーッと書いたけど、こういうのってどうしてもメタ的な感想ばかりになってしまうな。よくない癖だ。そもそも一次的な感想って何なんだ?という気もするけど

・表題「君たちはどう生きるか」についてなど、まだまだ考えたいことはいくらでもあるので、上映が終わる前にもう一度くらい観に行こうと思っている。ついでに本家『君たちはどう生きるか』も読んでおこうかしら


・エンドロール中はぼんやり考え事をしていたせいで米津の歌を一秒も聴けなかった。多分いい曲だと思います。


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