2023.05.04 『花月の旅の演奏会』 - プログラムノート
はじめまして、満月カルテットです。
私たちは東京を中心に活動している、音楽と身体表現による4人組です。今年で活動3年目になります。
私たちは主に即興で舞台を作り上げるのですが、みんなで即興をするにあたり、しばしばテーマを設定します。それはクジラやペチカのような具体的な物事から、冬銀河といった抽象的なイメージ、あるいは絵画や文学作品を取り上げることもあります。
普段はプログラムノートに取り組むテーマの説明や、選んだ背景などを書いているのですが、本公演は画家の若林哲博さんとの共演にあたり、若林さんの描かれる世界とのインタラクションにフォーカスするため、テーマをあえて設けないことにしました。
そのため、今回のプログラムノートには、若林さんとの共演に至るまでの経緯について書いてみようと思います。
満月カルテットの活動をはじめるきっかけとなったのは「満月の夜の三部作」という映像作品です。
撮影時にはまだ満月カルテットという名前はなく、一夜限りの企画のために集まった4人でしたが、その後活動を継続することになり、撮影日がたまたま満月の夜だったので自然とこのグループ名を名乗るようになりました。
そして「満月の夜の三部」を元にイメージビジュアルを描いていただいたのが、若林哲博さんでした。満月、月の精、鳥、蝶、そして遠くから見ている森の精霊。そんな様子を深い緑を基調に描いていただいています。
「満月の夜の三部作」は「朝の光」「よく晴れた昼に」「明月の夜」という、朝・昼・夜をテーマとした3つのパフォーマンスに分かれています。児玉龍太郎さんと関瑠惟さんにより、素晴らしい映像に収めていただきました。よろしければご覧いただけると嬉しいです。
朝の光
よく晴れた昼に
明月の夜
若林さんとの共演は長らくの念願でしたが、いよいよ金沢公演で実現できることを感慨深く思います。
ところで、なぜ「満月の夜の三部作」がライブではなく映像作品なのかというと、この撮影が行われたのは2020年の夏なのです。COVID‑19の感染状況は拡大を続け収束の先行きが見えず、ライブも次々と中止が決まり…そんな状況下でも何かできることはないかと、堀坂さんの呼びかけのもと集まりました。
満月カルテットの東京都外の公演は、去年秋の松本以来2度目なのですが、こうして自由に活動の場を広げることができるようになったのは、それが可能になる状況の変化も大いに関係しています。
つまり、本公演は「満月の夜の三部作」という活動の原点から、COVID‑19という未曾有の状況と共にあったこの3年間のことを振り返り、そして新たな活動へと向けて第一歩を踏み出すきっかけにしようと決意しているものであります。
ところで、本公演のために若林さんのイメージビジュアルを元にしたレターセットを作りました。会場でお買い求めいただけるので、ぜひ手に取っていただけると嬉しいです。
最後になりますが、本公演のために足をお運びいただいた皆さまに、深く感謝申し上げます。
若林哲博
画家/Artist
石川県金沢市在住。金沢美術工芸大学卒業後、パッケージデザイン、映像制作の仕事を経て、2014年より金沢の豊かな自然環境のなかで本格的に創作活動を始める。
イタリアの出版社 atmosphere libriより芥川龍之介の短編をベースにした絵本発売。アパレルブランド ADIEU TRISTESSE LOISIR 2019-20 秋冬アイテム コラボレーション。ホホホ座金沢 焼菓子 “ボスケット” パッケージに絵を提供。その他、書籍の装画、広告などに作品を提供。
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