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ショートショート

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5秒で結末を迎える140字小説〜中編小説まで「ふふっ」「おおっ」「なるほど」「そう来たか」と思える作品をまとめています!
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2024年8月の記事一覧

『台風と彼』#ショートショート

「運休だって」 「え」 出発2時間前に夜行バスが運休。 安全のため天候不良で運休になるのは分かるがギリギリ過ぎる気も。 「翌朝新幹線で行くにも」 「運休だよね」 「そう」 「動いてるバスないかな」 「台風で厳しいかと」 「ちょっと行ってくる」 「どこに?」 「台風、消してくる」 彼と共に台風が消えた。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 【あとがき】ノロノロ台風、なくなれー! 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 366日140字の物

『目が覚めたら』#ショートショート

「ここはどこだ」 目が覚めると見知らぬところにいた。 薄暗い部屋。 目の前には複数の大きなモニターが並べられている。 まるで悪党のボスでも座っていそうなゴツめの黒い椅子に座っていた。 「目が覚めたようだね」 モニターが光り覆面の男が現れた。 「ゲームマスターの後継者がいなくて君に頼む」 マジか。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 【あとがき】目が覚めたらデスゲームのゲームマスター 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 366日140字の物語

『来ちゃう』#ショートショート

「わ!やばい!」 「ん?」 「急がなきゃ!」 「どうしたの?」 「来ちゃうんだよ!」 「何が?」 「もう8月末だからさ!」 「うん。何が来ちゃうの?」 「秋だよ!秋が来ちゃうんだよ!」 「そんなことか」 「2024年の秋は一度きりだよ?」 「そうだけど」 「月見!焼き芋!モンブラン!紅葉だ!」 飽きない、秋。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 【あとがき】秋が来る! 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 366日140字の物語 (

『お別れした』#ショートショート

「約5年の付き合いだったけれどお別れした」 「結構長かったね。お別れは辛いよね。また新しい出会いがあって彼氏が出来るはずだよ」 「彼氏とは別れてないよ?」 「んん?」 「そもそも男性とは付き合ってない」 「そしたら女性かな?」 「それも違う。漫画を書き続けてたけどやめた」 「そっちか」 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 【あとがき】熱が冷めて 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 366日140字の物語 (140字の物語366作、詰め込みまし

『在宅勤務の代わりに』#ショートショート

「在宅勤務の仕事を探しています」 転職エージェントをしているとよく聞く。 「旦那は在宅勤務が難しい仕事で。子どもたちを保育園に送り迎えは私なんです。出勤しちゃうと1日中バタバタで」 在宅OKの仕事は少ない。 「働かずに済むよう旦那さんにもっと稼いでもらいましょう」 願うは育児に優しい世界。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 【あとがき】共働かずに済む世界 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 366日140字の物語 (140字の物語366作、詰め

『ネタバレする人』#ショートショート

「意中の人から電話がかかってくるんだけど」 かかってきた。 「遠回しにデートに誘われて」 「突然ごめんね。来週末、近くに行く予定があって。あんまり友だちがいなくて。せっかくならと思って」 遠回しに誘われ始めている。 「結局お誘いを断って付き合うことになるんだよね」 人生のネタバレは怖い。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 【あとがき】未来が分かるのは、どこか寂しいかも 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 366日140字の物語 (140字の物

『転ぶなら前に』#ショートショート

「転んだっていい。転んでこそ学べることがある。転ぶなら前に」 経済学の先生はよく格言らしきものを話す。 的を射たコメントでなぜか悔しい。 「私は若い頃、同じ人に15回告白した」 転びすぎ。 「15回告白した結果」 今の妻オチか。 「警察沙汰になって2度と話せなくなった」 前に転んで笑い話にしおった。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 【あとがき】起き上がれ、前に行け 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 366日140字の物語 (140字の

『星になる日』#ショートショート

「星になる準備はできたかい?」 20歳を迎える日。選ばれし者は儀式を執り行われる。 「はい。大丈夫です」 「では、ゴブレットを手に取り飲むのじゃ」 「はい」 「いけるかの?」 「緊張します。どんな味がするのですか」 「最初は苦みを感じるじゃろう」 「いきます」 丸くなるな、星になれ。サッポロビール。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 【あとがき】ビールを飲み始めただけのお話 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 366日140字の物語 (

『ノリハリ』#ショートショート

「ノリの悪いパリピって、海苔のない海苔弁みたいな感じだよね」 比較対象として正しいのかを考えたら負けなやつだ。 「ノリの悪いパリピは、盛り上がるときに全力で盛り上がる系だと思うんだよね」 2人の会話が興味深い。 「メリハリか!」 「そう!」 共鳴する2人。勢いそのまま渋谷駅に降りていった。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 【あとがき】海苔のある、海苔弁。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 366日140字の物語 (140字の物語366作、

『定休日』#ショートショート

「美容室は月曜休み、不動産は水曜休みが多いから、間を取って火曜休みにしようか」 間を取る意味が全く分からないけれど社長は絶対だ。 「火曜定休にすると困る人もいそうですが定休日にしますか」 「よし。決まりだ。そうしよう」 こうして、街で唯一のタクシー会社が火曜定休に。 ノリで、乗れない火曜。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 【あとがき】常識を、破る。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 366日140字の物語 (140字の物語366作、詰め込み

『秋が欲しい』#ショートショート

「秋が欲しい」 人生で贈ってきた誕生日プレゼントを思い返しても一番難しいお願い。 「秋って、季節の?」 「そう。春夏秋冬の秋。夏のほうが良かった?」 夏だったら贈りやすいなんて話じゃない。 「いや、どっちも変わらなくて」 「じゃあ秋を頂戴」 「分かった。秋を贈ろう」 そして秋がなくなった。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 【あとがき】春夏冬へ。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 366日140字の物語 (140字の物語366作、詰め込

『エンジョイ商法』#ショートショート

「やられた?」 「やられた。気づいたときにはすでに遅かった」 「例のエンジョイ商法か」 「巧妙な手口だよ」 巷ではエンジョイ商法が流行っている。 イベントに参加すると理由もなくめちゃめちゃ褒められるらしい。 日常では満たされない自己肯定感が満たされまくる。 楽しくてまた参加したくなるのだ。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 【あとがき】悪いことは何もないのに、悪いことしているようエンジョイ商法。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 366日

『憧れのタワマン』#ショートショート

「タワマンに憧れて」 「お金持ちの象徴的な」 「タワマン住んでるって言えたらカッコいいなと」 「わかる。とってもわかる」 「理想はあるんだけど現実はなかなか厳しい」 「お金を稼がなきゃいけないからね」 「それもあるんだけど」 「タワマン住むならパートナーが欲しいとか?」 「高所恐怖症なんだ」 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 【あとがき】高所恐怖症、克服するか、諦めるか。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 366日140字の物語 (14

『ととのう』#ショートショート

ととのう。 部屋は散らかり放題。 LINEは溜まりまくり。 職場の人間関係はぐちゃぐちゃ。 仕事のタスクは渋滞。 やりたいことはあるけれど、やらなければならないことに押しつぶされる日々。 ととのうとは正反対の暮らし。 「みだれる、だね」 同僚の一言が的確。 サウナから出るのが怖くて、熱波師に転職した。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 【あとがき】ととのいました。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 366日140字の物語 (140字の