それでも生活はほんとうに続いていくんだ、ほんとうに。いままで長いこと見てきただろう。来るかもしれないいつかにおびえているのは怖いことがたくさんあったからだ。そういう悪いこととそれに少し似たことや似ていないことで次こそ見えないライフゲージがきっとゼロになってしまうだろうから。そしたら人が死ぬところを見せてあげよう。きっと見せてあげよう。揺らいだ言葉がまた嘘の顔を覗かせ由来を隠して僕のうしろをついてくる。カウンセラーだって誰かに言われたなそういえば、だから引き出したくない言葉をしっかりと引き出してしまう。境界は丁寧に真似た仮定を破壊すると元気になるんだってどこかで聞いたよ、良く言えば殉教者で欲を言えば英雄だ。ほんとうの境界はどっちかな、線のかたちはリスカ痕で決まるわけじゃない。続く生活にもう数えていない十字架を切ったのは僕の言葉じゃなかった、僕じゃない、僕じゃない、僕じゃない、最初にその言葉を出したのは僕じゃないんだって思い出してもらえるかな全部わかっているのかもしれないけれども。嘘も冗談も全部拾うんだもし嘘だってわかってたとしても無視して拾うよ、矛盾したふたつだって同じ腕で抱えて走り抜けるさ。慣れていたはずなんだあの頃の太宰気取りのダサい二十二歳の僕は先のことなんて考えずに地獄行きの列車に乗れた。いまは残された吸殻に火をつけて四本全部吸ってみることくらいしかできないけど全面鏡貼りの部屋でこの十年に見られてきた僕と誰も見たことのない僕を見ることができた。煙草なんて吸わないのによく知った味だった。ああ、もうこの姿は見せたっけ。あと見せていない姿はいくつあるだろう。僕は何人分になれるだろうか。どれだけ正しい日々を引き伸ばせるだろうか。恨まないためには少しでも隙間を作るわけにはいかない。恨むことは大嫌いだ、慣れすぎてうまくなっているだけで慣れたくなんかないに決まってる。言葉だけじゃ教えきれないかもしれないけれどそのひとつは卒業式で隣にいたのを見たはずだ。いたのは隣だけじゃないかもしれない、これから歩く道を見渡せばもっといろいろなところにいるかもしれない。かもしれない、かもしれないのは全部嘘かもしれない。僕が孤独で絵も運んでいなかったら僕を見つけられていただろうか。いや、そんなことはどうでもいいじゃないか。ピンクのねずみが三匹入っていた話の続きをしてあげよう。ずっとこのままを続けられれば大丈夫だ。ずっとこのままを続けられれば大丈夫だ。ずっとこのままを続けられれば大丈夫だ。時は流れるままに。

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