勇気と救済

やあやあ神様、あるいは誰でもいいから答えておくれ! 愛する者に愛されない人間の苦悩は、いったいこの世界でどうやって解消されるというんだい?

「お答えしましょう人間様! ワタシはあなたの病気が見せる幻覚でございます。神様なんかのように高尚な存在じゃあございませんが、どうぞなんでもご相談くださいな」

なに、幻覚だって? そんなもんに聞いてどうするんだ! それに、ならば君は私の頭の中にいるってんだろう? 私が私に何を教えられるんだ?

「まあまあ、とりあえず話を聞いてみるもんですぜ。あなたの、いや私の質問に、ワタシが答えてさしあげましょう。愛する者に愛されない人間の苦悩は、そうです、ただひとつ、死によってのみ解消されるのです!」

なにを月並みなこと言ってるんだ、死んだらすべてが解消されるなんて誰だって知っているぞ。それこそ、小学生だって答えられるような事実だ! 私は怖いのだよ。死ぬのが怖いのだ。死ぬ勇気もない人間は、どうすればいい? どうすればいいんだ? 死ぬ勇気もない人間は、どうすればいい?

「お答えしましょう人間様! 無いものは無いのでございます。救済はただ死によってのみ訪れ、他には何も無いのです。何も無いのです。何も無いのです。そして、本当は救済に勇気なんてこれっぽっちもいらないんです! さあ、ワタシが背中を押してさしあげます! どうぞどうぞ、窓を開けてくださいな」

いや、やっぱりいいんだ。誰にも愛されなくたっていいじゃないか。それでいいんだ、それでいいんだ、私の生活はいつだってそれでよかった。これからだってそうなんだ。だから、いいんだ。いいんだ。

「あれれ? 怖くなっちゃいましたか? それもいいでしょう、最初はみんな怖いものです。本当は救済に勇気なんてこれっぽっちもいらないのに。本当は救済に勇気なんてこれっぽっちもいらないのに。本当は救済に勇気なんてこれっぽっちもいらないのに。でもね、またあなたはきっと、私はきっと同じことを尋ねて、ワタシは同じことを答えます。きっと答えます。さすれば、今度こそは背中を押してさしあげましょう! 次ではなく、その次かもしれません。ワタシはいつでも待っていますよ。ではまた! 必ずお会いしましょう!」

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