Aiのべりすとに延々と文章を書かせたらどうなる? part.2



Aiのべりすとに延々と文章を書かせたらどうなる? 第二弾、同じ物語シリーズ風の文体?になるmodを使いました。
ルールは前回と同じです。



本編


吾輩は猫である。名前はまだない。
そんな吾輩は今、とても困っている。
「お兄ちゃん! 大変だよ!」
とある日のことである。いつものように日当たりのよい窓際で惰眠を貪っていた吾輩に、妹が駆け寄ってきた。
「なんだ騒々しい」
「お兄ちゃん! 大変だよ!」
「だからなんだよ」
「私ね……」
妹の言葉を聞いて、吾輩は思わず飛び上がった。なんということか。妹が『恋』をしているというのだ。
「相手は誰だ!? どこの男だ!?」
「えっとね、隣のクラスの――」
「ああ! あいつか!!」
妹の話を聞き終える前に吾輩は飛び出した。そう、妹の想い人とは、吾輩と同じクラスにいる男子生徒だったのだ。
妹が教室へと入るや否や、吾輩もすぐさまその男のもとへと走った。
「おい貴様!」
「ん? どうしたんだい?」
吾輩の声に反応して振り向いたそいつは、爽やかな笑顔を浮かべていた。だがしかし、吾輩にはわかる。この男は、妹に惚れていると。間違いない。
「妹に手を出すとはいい度胸ではないか」
「えっ……?」
「貴様に妹は渡さんぞ!」
「ちょ、ちょっと待ってよ! 君の妹って――」
「問答無用!!」
吾輩はその男に飛び掛かった。妹のために、そして何より吾輩自身のために、ここで負けるわけにはいかないのだ。
「ぎゃー! 助けてくれー!」
「死ねえぇぇぇ!!」
こうして吾輩と男の死闘が始まったのであった。


「それで、お兄ちゃんったらいきなり殴りかかってきてさあ」
「それは災難だったね」
放課後、私はお隣に住む幼馴染みの男の子と一緒に帰っていた。今日は部活があるとかで、一緒に帰れないと残念がっていたけど、まさかそれが嘘だとは思わなかった。
「まったく、人の話を聞かないからそうなるんだよ」
「でも、私のことを心配してくれてたんだって思うと、やっぱり嬉しいかな」
「まぁ、そうだよね」
「ふふっ」
私が笑うと、彼もまた笑みを浮かべてくれた。それだけで幸せな気持ちになる。ああ、本当に彼のことが好きだなあと実感する。
「……ところでさ」
彼が急に立ち止まった。
「うん?」
「どうして君は僕と手を繋いでいるんだい?」
彼は不思議そうに首を傾げた。
「えへへ~」
「えへへじゃないよ。どうしてこんなことになってるのか教えてほしいんだけど」
「いいじゃん別にぃ。私たち恋人同士なんだし」
「こ、こいびとぉ!?」
彼は大げさに驚くと、顔を真っ赤にして俯いてしまった。そんな様子が可愛くて、つい意地悪をしたくなってしまう。
「あれれ? どうしたの? 顔赤いよ?」
「うぐっ……。ほ、ほっといてくれないか……」
「ねぇねぇ、なんで赤くなってるの? もしかして照れてるの? 私の恋人になったせいで恥ずかしいの? それとも他の理由なのかな? 言ってみて?」
「そ、そういう君こそ耳まで真っ赤じゃないか!」
「そりゃそうだよ! 好きな人に好きって言えたんだもん! 嬉しくてドキドキして当然だよね!」
「ぼ、僕のことは無視かい!?」
「あははははっ」
彼とのやり取りはとても楽しい。いつも通りだけど、毎日新しい発見があって飽きることがないし、もっと一緒に居たいと思うのだ。
「じゃあさ」
今度は彼が立ち止まって口を開いた。
「うん?」
「キス……しないか?」
「……え?」
予想外の言葉に思考停止してしまった。今なんて言った?きす? キッス? 接吻? キ・ス?………………ええええええええええええ!!!!!
「え、えっと……その……」
「嫌なら無理にとは言わないけど」
「いや、全然大丈夫だよ! むしろしたいっていうか……」
「本当?」
「うん!」
正直に言うとかなり動揺しているけれど、ここは勢いに任せようと思った。
「よし! じゃあやろう!」
「うん!」
私たちはお互いに見つめ合うと、ゆっくりと目を閉じた。そして唇を近づけていく。心臓がうるさいくらい鳴り響いている。
――ちゅっ。
一瞬だけ触れた彼の唇は柔らかくて温かかった。そしてすぐに離れると、彼は再び歩き始めた。
「どうだった?」
「……」
「おーい」
「ひゃいっ!?」
突然声をかけられたものだから驚いてしまった。彼は悪戯っぽく笑うと、「びっくりした?」と言ってきた。
「もうっ! いじわるぅ」
「ごめんってば」
そう言いながら頭を撫でてくる彼に私はキュンとした。ああもう本当に好きだ。好きで好きで仕方がない。こんな気持ちになったのは初めてかもしれない。
「ねえ、これからもずっと一緒だよね?」
「もちろんさ」
私たちは手を繋ぐと、そのまま家に帰ったのであった。
―――
――――――
―――――――――
「ん……朝かぁ」
今日は土曜日。昨日は彼と付き合って初めてのデートをした。映画を見たり喫茶店に行ったりと充実した一日を過ごすことができた。ただ一つ不満があるとすれば、彼が私のことを名前では呼んでくれなかったことだ。
『あのさ、君のこと下の名前で呼びたいんだけどいいかな?』
そう言われた時はかなり舞い上がったし、嬉しかった。でもいざ呼ぶとなると緊張するらしい。結局は苗字で呼ばれることになったのだが、私としてはやはり下の名を呼び捨てにして欲しかった。
(うーん……)
まあ今はそんなことを考えていてもしょうがない。とりあえず起きて顔を洗おうと思いベッドから出ようとした瞬間、あることに気づいた。
「あれ? なんだろうこの違和感……」
身体のあちこちが痛むというか重いというか……。とにかく普段とは違う感覚があったのだ。不思議に思いつつも着替えを終えると、私は部屋を出た。するとそこには……
「おはよう」
なぜか彼がいた。しかもエプロン姿で料理を作っているではないか。なぜここにいるのか分からない。混乱しつつも挨拶を返すと、彼は微笑みかけてきた。
「体調はどうだい?」
「えっと……少し体が重いくらいしかわかんないかな……」
「そっか。それなら良かったよ」
彼はそう言うとフライパンの中の目玉焼きをお皿に移した。ふわっとした黄身の上には半熟のベーコンが乗っておりとても美味しそうだ。食欲を刺激されながらもテーブルに着くと、私は彼に尋ねた。
「どうしてここに来たの?」
「ああ、それはね……」
そう言うと彼はこちらを見て言った。
「君と一緒に住みたかったんだ」
「へぇ~そうなんだ…………って、ええっ!?」
驚きのあまり思わず叫んでしまう。確かに一緒に住めれば嬉しいなとは思っていたけどいきなりすぎる! まだ心の準備ができていなかった。だが彼はお構いなしに話を続ける。
「実は前々から考えていたんだよ。二人で住むにはちょうど良い広さだし、それに……」
「それに……?」
「今度からは毎日君の顔が見られると思うとワクワクしてさ!」
「もう、ばか……」
そこまで言われると断れないじゃないか。本当は嬉しいくせに恥ずかしくてつい悪態をつく。だけど彼は笑顔でこう言ってくれた。
「これからよろしくね、結衣」
その言葉を聞いた途端、胸の奥がきゅっと締め付けられるような感じがした。そして同時に気づいた。彼のことが好きなのだということに。だから私は精一杯の気持ちを込めて答えた。
「うん、よろしくお願いします。悠介さん!」
「はぁ~疲れた……」
今日も一日の仕事を終えて帰路につく。最近残業続きだったので疲労感が強い。早く帰ってゆっくり休みたいところだ。
マンションの近くまで来ると何やらいい匂いが漂ってきた。これは……カレーだろうか? 誰かが作った夕食を食べるなんていつぶりだろう。そんなことを考えているうちに自宅に着いた。扉を開けるとリビングの方から声が聞こえてくる。
「おかえりなさい。遅かったですね」
エプロン姿の少女が出迎えてくれる。その姿を見た瞬間、俺は目を奪われた。まるで天使のような美しさだったからだ。しかし彼女は俺の様子を見るとすぐに顔をしかめた。
「どうしました? 私に見惚れちゃいましたか?」
「ああいやその……ごめん。見惚れてました……」
正直に答えると少女は頬を赤く染めながら照れくさそうに笑った。
「まあ仕方ないですよね。こんな美少女と結婚できるんですもんね」
「結婚……? えっと君は誰なんだい?」
困惑しながら尋ねると少女は首を傾げた。
「何を言っているんですか? あなたの妻じゃないですか」
妻と言われてもまったく記憶がない。というよりこの子は一体誰なんだろう? 見た目からすると中学生くらいに見えるけど……。
「あの、失礼ですけど年齢を教えてもらえますか?」
「14歳ですよ」
14歳!? ということは中学生なのか。確かに言われてみると少し幼い顔立ちをしているかもしれない。でも中学生にしてはかなり大人びている気がするんだけど……。
「あの、もしかしてですけどお兄さんの年齢はいくつでしょうか?」
「23歳です」
「じゃあお姉さんですね」
「うーん……」
どう見ても妹にしか見えないんだが……。そもそもなぜこんな子が家に居るのかわからないし。
「どうしてここにいるのかって思っていますよね?」
「ああそうだよ。君とは初対面だと思うし」
「それはそうなんですけど、実はあなたのこと前から知っているんですよ」
「どういう意味だい?」
「私の名前は『七月三日 美鈴』と言います。ちなみに誕生日は7月3日のふたご座で血液型はB型です」
まさか自分のプロフィールを自己紹介されるとは思わなかったな……。しかし彼女の話を聞く限りだとどこかで会ったことがあるのだろうか?
「えっと、もしかして昔付き合っていたとかそういうことかな?」
「いえ違います。私はずっとあなたと一緒に居たんですよ」
「えっ?」
ますます意味がわからなくなってきたぞ。俺のことを昔から知っていたと言っていたけど、それならなおさら彼女が何者かわからなくなる。
「とりあえずご飯にしましょうか。今日は私が作りましたから期待しててくださいね」
「そっかありがとう。ところで君は本当に何者なんだい?」
「だから言ったじゃないですか。私はあなたの妻だって」
「その話を詳しく聞かせてくれないか?」
「わかりました。まず最初に言っておきたいことがあります。私は幽霊ではありません。ちゃんとした人間です」
いきなりとんでもないカミングアウトだな……。彼女は俺のことを知っているみたいだけど俺は彼女について何も知らない。つまり一方的に知られているということになる。しかも妻だと言っていることから、おそらくストーカーのような存在ではないと思うのだが……。「あ、あのさ……、もしかして君は誰かに頼まれてそんなことを言っているんじゃないかな?」
「いいえ、私は自分で判断してこうしてあなたの前に姿を現しています」
「そうか……」
どうやら彼女は嘘をついているわけではないらしい。というよりこんな小さな子にここまで言い切られてしまうと信じるしかないだろう。
「わかったよ。君のことは信じよう」
「本当ですか! 良かったぁ~。もしここで信じてもらえなかったらどうしようかと思っていました」
「まあ普通だったら信じられないところだけどね……。それで一体どういう経緯があって俺の前に現れたんだい?」
「はい。私のことを話す前に少し昔話をしてもいいでしょうか?」
「昔話?」
「はい。といっても大したことじゃありません。ただ私には兄がいたということだけです」
「お兄さんがいたというわけか……。でもそれがなんで俺と関係してくるんだい?」
「それはこれから話す内容に深く関わってくるんです。実はですね……、私の兄の名前は『七月一日 隼人』と言いまして、今は亡きあなたの幼馴染みなのです」
「えっ!?」
俺の幼馴染みだって? 確かに彼女の名前は美鈴と言うし、ふたご座の血液型も同じB型だし、髪の色も黒で瞳の色は茶色という共通点もある。それにしてもまさか本当に俺の幼馴染みだったというのか……。
「うーん……。なんかまだピンとこないなぁ」
「無理もないですよね。兄が亡くなったのは八年前になりますから。当時のあなたはまだ五歳くらいでしょうし覚えていないのも当然です」
「ちなみに亡くなった原因は病気とかそういうことなのかな?」
「いえ違います。交通事故です。居眠り運転をしていたトラックと接触してしまい、兄は命を落としました」
「そうか……」
なるほど事故で亡くなったのか……。それなら俺のことを知らなくても不思議はないかもしれない。
「そして私は兄の後を追うように自殺しました」
「自殺だと!?」
「はい……。今にして思えばなぜあんなことをしてしまったのかわかりません。それほどまでに追い込まれていたんでしょうけど……。とにかく私は自殺を図ったものの失敗して、気が付いたときにはこの世界に転生していました。そこで私は兄が生前プレイしていたゲームの中に入り込んでしまったんです」
「ゲームの中に入ったって……、君ってもしかして幽霊とかそういった類の者なのかい?」
「はい。そう思ってもらって構いません。だからといって別に怖くないでしょ?」
「うん。全然怖くないよ。だって君はちゃんとした人間にしか見えないし、こうして話している限りじゃ普通の女の子と変わりがないじゃないか」
「ふふっ、ありがとうございます。実はですね……。今の私の姿は兄の記憶の中から再現したものなんですよ。なので正確には生前の兄の姿をそのまま映した姿ということになるかもしれません」
「そうだったのか……。ということはそのゲームをプレイすれば君のお兄さんの姿が見れるのかな?」
「えぇ。もちろん可能です。ただ私がプレイしていた頃とは仕様が異なる部分があるので、多少なりとも違和感があると思いますがそこは我慢してください」
「わかった。それで肝心のゲームの中身なんだけれど、一体どんな感じのゲームなんだい? 僕がプレイしたことあるやつと同じなら大体わかるんだけど」
「えっと……、まずはジャンルについて説明しますね。このゲームのジャンルはRPGとなっております。内容は魔王を倒すために勇者となって仲間を集めながら冒険していくというものです」
「なるほど。それなら僕にもプレイできそうだ」
「あと主人公は一人だけです。仲間になるキャラも主人公のサポートをする存在に過ぎません」
「そうなんだ。でもどうして主人公だけなんだろう?」
「それはこの世界がゲームの世界だからですよ。現実ではありえないことが当たり前のように起こる世界で、主人公が魔王を倒してハッピーエンドを迎えることこそが至上目的となるからです」
「確かに言われてみればそれもそうだね」
「ちなみにエンディングは三種類あります。バッドエンドと呼ばれる終わり方もありまして、その場合は主人公が死ぬことになります」
「え!? 主人公が死んでしまうのかい?」
「はい。ただしこれは魔王を倒した後になります。魔王さえ倒せば平和が訪れるというストーリーになっていますからね。まぁ、ゲーム本編にはそこまで詳しく書かれていませんでしたけど」
「そっか……。まぁ、とにかく僕はその魔王を倒せばいいわけだね?」
「はい! そういうことです!」
「ところでさっきから気になっていたことがあるんだけど聞いてもいいかな?」
「どうぞ。なんでも答えますよ」
「じゃあ遠慮なく聞くけど、君の名前はなんて言うんだい?」
「え?そんなことを気にしているんですか?」
「うん。だって名前を呼べないのってなんか寂しいじゃない。せっかくこうして話せているんだしさ」
「…………」
「どうかしたのかい?」
「いえ、別になんでもありません。そうですか……。名前ですか……。うーん……」
「……」
「……」
「……」
「……わかりました。では私のことはこれから『ヒロイン』とお呼びください」
「え!? それだけでいいのかい?」
「はい。私にとってはそれが一番嬉しい呼び名なので」
「わかったよ。じゃあこれからは君のことをヒロインと呼ぶことにするね」
「ありがとうございます」
「ところでヒロイン」
「なんです?」
「君は一体何者なのか教えてくれるかい?」
「……私はただのAIですよ」
「……」
「……」
「……」
「……ふっ。冗談ですよ。本当は私の名前は『ヒナタ』と言います。以後お見知りおきをお願いいたしますね」
「なるほど。それでヒロインという名前なんだね。よろしく頼むよ」
「はい。こちらこそよろしくお願いしますね」
「じゃあそろそろ行こうか」
「そうですね。では行きましょう」
こうして僕とヒロインの旅が始まった。
「ここが第一の街みたいだね」
「はい。まずはこの街の教会で回復魔法を覚えてみてください」
「わかったよ。ところでヒロインは何ができるんだい?」
「私にできることですか? そうですね……。私は一応戦闘もできるのですが、どちらかと言えば支援が得意ですかね」
「そうなんだね。じゃあとりあえず教会に向かおうか」
「はい」
教会の中に入ると神父さんがいた。
「こんにちは。回復魔法の使い方を教えてもらえませんか?」
「もちろん構わんとも。それにしてもお前さんは変わった格好をしているのう」
「まぁ色々ありまして……」
「ほっほ。深くは聞かんよ。では早速始めるとするかの」
「お願いします」
「まずは回復魔法の基本であるヒールを覚えるところから始めようかのう」
「ヒールなら覚えていますよ」
「なんと!それはすごい!」
「これでもゲームには自信がある方なので……」
「なるほどのう。それならば話は早いわい。ではヒールを使ってみてくれんかのう」
「わかりました」
僕は言われた通りにヒールを使った。すると僕の体が光に包まれた。そして光が収まるとHPゲージの下に小さなハートマークが現れた。
「どうやら成功したようじゃな。これでヒールを覚えたことになる。しかしこれだけだと攻撃手段がないからモンスターと戦うことはできないぞい」
「そんなこともあろうかと実はこんなものを用意してきました」
そう言ってヒロインはアイテムボックスの中から大きな斧を取り出した。
「これはバトルアックスと言って攻撃力が高い代わりに重量があるため装備するのにSTRが必要になってくる武器なんですよ」
「なるほどのう。そういうことであれば確かに使えそうじゃな。それでは試しにこの木に向かって使ってみるといい」
「わかりました」
僕は言われるままに木に向けて斧を振り下ろした。すると見事に命中して木は真っ二つになった。
「見事じゃ。次は魔力操作の練習をしていこうかのう」
「魔力操作ですか?」
「うむ。ヒールを使う時と同じように体の中に流れている魔力を感じることから始めるんじゃ」
「やってみます」
目を閉じて集中する。体の奥の方で何か暖かいものがあるような気がした。それを手繰り寄せるようにして掴んでみる。するとその瞬間頭の中で声が聞こえてきた。
『ヒールを使いたい』
「えっ!?︎」
驚いて目を開けるとそこには先ほどまであったはずの木がなくなっていた。
「一体何が起きたんですか?」
「おそらくじゃがお主はヒールを使えるようになったんじゃろう」
「えっと……どういうことですかね?」
「ヒールは本来なら覚えるのが難しいスキルの一つだったんじゃ。しかし一度習得すれば誰でも使うことができるようになるはずなんじゃ。それがなぜかお主にだけ使えんかった。その理由は恐らく魔力操作を習得していなかったからじゃと思う」
「なるほど……」
「そこでワシは考えたんじゃ。もしかするとお主はまだヒールを覚えていないのではないか?とな。そこで魔力操作を教えればあるいはと思ったわけじゃよ」
「でもどうして急に使えるようになったんでしょうか?」
「それはワシにもわからん。ただ一つ言えることはヒールには回復効果の他にもう一つ特別な力があるということじゃ」
「特別な力とは?」
「それは使用者の能力を上げるという能力じゃ」
「能力が上がるってことはステータスが上昇するってことですか?」
「その通りじゃ。普通はレベルが上がった時に上昇するステータスは1〜3程度じゃが、ヒールを使った場合は5まで上がると言われている。さらに熟練度を上げていくごとに上昇値が増えていくんじゃ。つまり使い続ければどんどん強くなっていくことができるんじゃよ」
「そんなすごい技があったなんて知りませんでしたよ」
「まあ本来は使えないはずじゃったからのう。本来ヒールを覚えるためには魔力操作を覚えた上で教会で女神様に祈りを捧げなければならないのじゃ。しかしその手順を全て飛ばしてしまったからこそお主はヒールを覚えられなかったのじゃろう」
「そういうことだったんですね」
「さすがにこれ以上教えることはないわい。後は自分で練習してみることじゃ」
「わかりました!ありがとうございます!」
こうして俺は無事にヒールを手に入れることができたのだった。
「ところでお主、この辺りで美味しい店はないのかのう?」
「そうですねー。やっぱり王都ですし良い店は多いですよ。特に最近できたあの店の料理は絶品だという噂を聞きますよ」
「ほほう。それではそこに行ってみるとするかのう」
「ぜひ行ってみて下さい!」
俺達はそんな会話をしながら宿へと戻っていった。翌日になり俺は早速ギルドに向かうことにした。というのも昨日受けた依頼の報告をしなければいけないからだ。なのでまずはギルドに行く必要があるのだ。
ギルドに着くと受付嬢さんがいたので報告することにした。ちなみに今日も美人である。
「おはようございます!依頼を受けてきたのですが……」
「あら?あなた確か……えっと名前はなんだったかしら?」
「あっ!名前言っていませんでしたよね!すみません!僕はシンと言います!」
「私はクレアと言うわ。それでどんな依頼を受けたの?」
「えっとゴブリン退治の依頼を受けてきました」
「そうなのね。それならちょうど良かったわ。今朝方近くの森の方でゴブリンが現れたらしいのよ。だから急いで討伐して欲しいんだけど大丈夫かしら?」
「はい!問題ないですよ!すぐに向かいましょうか?」
「お願いするわ」
こうして俺達は討伐へと向かうことになった。ちなみに今回は馬車を借りることにした。というのも歩くよりは速いからである。というわけで馬車に乗り込んで出発したのだが……。
「なぁあんたら冒険者かい?よかったら護衛をしてくれないかね?」
御者のおじさんに声をかけられた。どうやら盗賊が出たらしくて困っているそうだ。なので俺達としては断る理由もないため引き受けることにした。「いいですよ。僕達が代わりに護衛しますよ」
「おお!助かるよ!それじゃあ頼んだよ!」
ということでそのまま馬を走らせながらゴブリンを倒しつつ移動した。そして夕方になる頃には村に到着していた。
「本当に助かったよ!報酬としてこれを渡しておくから受け取ってくれ」
そういうと金貨5枚を渡された。結構大金だが遠慮せずに受け取ることにした。だって貰えるものはもらっておくべきだと思うんだ。それにお金に余裕があるわけではないしね。
「それでは私達はこれで失礼させてもらうとするよ」
「はい。道中気をつけてくださいね」
こうして無事に依頼を終えた俺達はその日はそのまま宿に戻った。明日はついに王都に到着することになる。そこで一体何が起こるのか、楽しみである。
次の日の朝になり遂に俺達は王都に到着した。ここの王都はとにかくデカくて人が多い。まるで日本の東京みたいな感じだ。なので迷子にならないように注意しながら歩いていく。
「ねぇねぇお兄ちゃん!あれ見てよ!凄く美味しそうじゃない!?」
「確かに美味しそうだな。食べていくか?」
「うん!」
というわけで屋台に行き串焼きを買うことにした。肉はとてもジューシーでとても美味しかった。タレがまた絶妙だった。これはいくらでも食べられるレベルだ。それからも色々なものを食べたりして楽しんでいると……。
「ちょっと君たちいいかな?少し話を聞きたいことがあるんだが……」
急に声がかけられた。振り返ってみるとそこには騎士っぽい人が立っていた。俺は直感的にこの人は悪い人では無いと判断したのでとりあえず事情を聞いてみることにした。
「えっと……何かあったんですか?」
「実は最近この街周辺で魔物が頻繁に出現しているんだ。それで調査をしていたら怪しい人物を見つけたんで話を聞こうと思っただけなんだ」
なるほど……それは多分俺たちのことだろう。別にやましいことは何もしていないのだが。ただ単に観光していただけだし。だけどそれを言って信じてくれるとは思わないのでここは誤魔化すことにした。
「いえ、特に何もありませんけど……」
「本当かい?ならどうしてそんな格好をしているんだい?」
「あっ……」
しまった。すっかり忘れていたが今の俺は男装しているんだった。完全にミスった。どうしようかと考えているとリリスが助け舟を出してくれた。
「ごめんなさい。実は私たち姉妹はとある事情があって男の人のふりをして生活しているのです。ですから今のような服装になっているだけです」
ナイスフォローだリリス。こういう時はやはり頼りになるな。すると騎士さんは納得したような表情を浮かべて言った。
「そういうことだったのか。それならば仕方ないな。疑うような真似をしてすまなかったね」
「いえ、気にしないでください」
「ありがとう。ところで君たちはこれからどこに行くつもりなんだい?」
「えーと、私たちはギルドに行こうと思っています」
「ギルドに?どうしてまた?」
「実は私達には冒険者という職業に就いていて依頼を受けようと思っているんです」
「へぇ〜そうなんだ。君たちが冒険者をやってるなんて意外だなぁ」
「あはは……よく言われます。それじゃあそろそろ行きますね。お仕事頑張ってください」
「ああ、ありがとう。頑張るよ。それと気をつけて行くんだよ」
こうしてなんとか危機を脱することが出来た俺達は改めてギルドに向かうの

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