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僕と鯨食

おことわり
このテキストは、「鯨を食べる」ことについて、僕なりに考えたり、食べてきたものの写真などを交えてなにか色々説明的なことを書いていますので、そういったことに関して嫌悪感をお持ちの方は、この先はご覧にならないで下さい。当方は一切責任持ちません。


いつ鯨を食べ始めたのか?
僕の世代だと、給食にくじら料理が出るのはごくごくふつうのコトだったようですが、実は僕は、給食での思い出がひとつもありません。
むしろ、自分の父親が晩酌でトリスウイスキーの薄い水割りを飲みながらつまんでいた尾羽や鯨ベーコンを横からつまみ食いしていたのが、一番古い記憶です。ところが僕が中学生の頃になると、食卓から鯨ベーコンや尾羽は姿を消しました。
南極海の捕鯨が衰退していくにつれて、スーパーでも鯨肉関連食品の姿を見ることもなくなりました。

それから、およそ15年ほど時間が経って、僕が雑誌(といっても地方の風俗雑誌なんですが)の編集に携わっていた頃に、鯨ベーコンと偶然再会しました。
もう完全に鯨を食べていたことなど忘れていた僕は、この時鯨ベーコンを食べて感動するわけです。
「なんじゃ、この旨い食い物は!!!!」
それ以降、居酒屋で見かけるたびに鯨ベーコンを注文し、その味の差に疑問を持ち、ネットで(当時は楽天でも鯨肉加工食品を買えました)いろいろ注文していくうちに、今では捕鯨地の知り合いのお店で注文したり、現地の居酒屋などで食べたりするようになったという次第です。

どうして鯨を食べたいのか?
旨いから。
基本はそれだけなのですが、その土地で食べるものを通じて、その土地のことを少しでも理解したいという気持ちも強いです。
震災以降、漁村に注目するようになり、震災後の津波で大きな被害を被った鮎川(含む石巻)や、同じ年に大きな水害があった南紀の、鯨食文化を個人的に支えるために、以前より頻繁に鯨を食べるようになりました。

どんな部分を、どんな風に鯨を食べてきたか?
■赤身
鯨は不味いなんて言いますが、基本的に最近はきちんと冷凍されていますので、解凍の仕方さえ、間違わなければ美味しく食べられます。
……といっても、簡単で、食べる半日から一日前に、冷凍庫からチルドルームに入れ替えるだけで、かなりドリップ(鯨肉に含まれていた血液や水分など)も少なく美味しいお刺身が食べられます。
この刺身はミンククジラの赤身です。


こちらはゴンドウクジラの干物です。
太地町ではゴンド干しって言いますね。
ゴンドウクジラが捕れると、各家庭で赤身の肉を塩漬けにして干物にします。
フライパンで炙って、マヨネーズなどをつけて食べますが、なれるとそのまま食べても美味しいです。
まあ、若干クセがある食べ物です。


こちらは、ゴンドウクジラの肉を使った鯨丼です。
味噌汁付きで980円(だったと思う)。

■舌(さえずり)
あんまり見かけないんですが、鯨の舌の部分です。
サエズリって言いますね。
畝須も本皮とも違った食感で、脂身の甘さが楽しめます。

■皮
皮(本皮)というと鯨の場合は赤身の肉と一緒に紅白で盛って、一緒に食べるときのを想像しますが、個人的にはコロ(おでんのタネ。鯨の皮を油であげたもの)が好きですね。
下の写真は、本気の朝市で食べたもの。
独特の食感が美味しかったです。

■畝須(ウネス)
畝須は、基本、ベーコンで食べることがあると思います。
ベーコンも、普通のと白がありまして、外側を赤くしておめでたい感じにしたのが通常のベーコン、赤くしないのが白ベーコンなんて言ったりします。
一枚目が畝須の冷凍したやつを解凍したもの、二枚目が浦安の泉銀さんで買った特製白ベーコン、その下が〆谷商店さんのベーコン

■筋
筋肉の筋や腱の部分ですね。
これは調理(おそらくボイルでしょうね)されたものがパック詰めされて売ってます。
ポン酢などをかけて、生姜やネギなどの薬味をのせて食べます。
上のがイワシクジラ、下のがゴンドウクジラのものです。
大きさが違うので、見かけも変わってきますね。

■ホネハギ
ホネハギは、鯨を解体し終わった後の骨についた肉を、骨ごとゆでて剥がしたものです。
筋やホネハギ、ウデモノ(内蔵)は比較的安価で手に入りますが、売っている場所が少ないのがネックですね。

■尾羽と内蔵
尾羽は尾びれのこと、内臓はホルモンだと思えばいいでしょう。
胸鰭はテッパといいます。
食感ですが、尾羽は若干生臭いですが、独特のフルフルした食感が楽しめます。酢味噌で食べるのがよくある食べ方ですが、炒めても美味しいと思います(実際、下の2つのパックは炒めものになりました)。

■鹿の子
顎の付け根あたりのお肉ですね。
尾の身ほどではありませんが、珍重される部位です。

■ハラミ
下の写真は、ゴンドウクジラのハラミです。
上品な脂のノリ具合が絶品で、臭みは全くありませんでした。
ゴンドウクジラが不味いなんていう人は、これを食べたら印象が変わると思います。

■尾の身
鯨で一番高価な部分で、名前の通り尾の肉です。
とても美味しいのですが、脂のノリが良すぎて、僕には合わない感じです。
特上のトロのような食感が味わえます。

■その他
下の2つは、イルカ料理です。
一つ目は刺し身(というかルイベ?)、その下がボイルしたものにおろしポン酢をかけたものです。
しっかりと下処理がされているので臭みもなく、とても美味しかったです。
ハクジラの類は、脂身の旨さが癖になりますね。


下は、木の家石巻水産の鯨カレー。
……絶品です。


こちらは鯨肉入りのソーセージと、ウデモノの胡麻和え。
ソーセージは、あんまり鯨って感じはしませんでしたね。

で、最後は、おそらく一番ポピュラーで、一番手に入りやすい鯨の缶詰。
大和煮と焼肉が多いと思います。

鯨を食べることをどう思うか?
特になんとも思いません。食べたければ食べればいいし、食べたくなければ食べなくていいと思います。
僕は食べたい、そう思うだけです。
美味しいですし、牛肉や豚肉よりも体には良さそうですからね。
僕は「鯨もイルカも見てよし、食べてよしだ」というエゴ丸出しな人間ですが、これからも食べて、見て、そうやって関わっていきたいなと思っています。
そして、様々な現場の人の言葉を聞いて、機会があればそれを誰かに伝えたいと、そんなふうに思っています。


以上、大したことは書いていませんが、食べて考えたことを少し書きました。
あんまりグダグダ書くのも面倒くさいし、読む方も面倒だと思いますので、写真だけ見て、こんなものもあるのかなーと思っていただければ幸いです。

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