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Ingressと観光の親和性だとか


この二つはとても相性が良いと思う。
特にツアーなどで企画するというわけではなく、個人や小グループでふらりとどこかに行くというような、そんな観光のスタイルには最適なのではないかと思う。

リアル課金が必要なネットゲームとしてのIngress

Ingressというゲームは非常に面白さを説明しづらい。
すべての概念が他のゲームと異なるし、明確な目的があるわけではなく、プレイヤーの所属する勢力や居住地の環境によって、何をすべきかが変わってくる。
しかも恐ろしいことに、ネットを通じて行う、いわゆる「ネットゲーム」のカテゴリーに入るかもしれないものにも関わらず「課金」という救済手段が用意されていない。

多くのネットゲームは運営側の収益として、参加者から参加費用や救済手段(先行する参加者とのバランスを取るためとでもいうのだろうか?)として、費用の負担によってアイテムやキャラクターを得ることが出来るケースが多々あるが、そういった手段が全くないのがIngressの特徴ともいえる。
逆に、通称「リアル課金」と言われる行為が存在する。
それは、例えば交通機関を使った移動や、自転車やレンタカーを都合して目的地までの移動を効率化するなどで、実際にお金を使うことを意味する。
これらはゲームのルールの外側にある行為(想定こそされていただろうが、運営側もそこまで大きなものになるとは思っていなかっただろう)なので、参加者個人の責任と経済力によって左右されるものだが、これも一つのIngressやARGの醍醐味なのではないかと、個人的には思えるのだ。

実際の移動が伴うIngress


※これは名古屋駅の表側の様子。
 ここは状況が刻々と変化する激しい戦場。
 プレイヤーはこのマップに表示されている場所に実際に移動して
 ゲームを進めている。


ゲームにハマりすぎて、すさまじい歩行距離を歩くプレイヤーまで出現してしまうためにダイエットゲームと揶揄されることもあるわけで、普段はデスクワークばかりで運動とは縁がない僕でさえ、時間に余裕があれば毎日でも10kmメートルくらい歩けそうなモチベーションを与えてくれる力が、このIngressにはある。
単にゲームに興じるだけではなく、その移動で目にする街の風景の良さや、ポータルを通じて知ることのなかったオブジェやこじんまりとした社、普段は気にすることのないような噴水の良さを、改めて認識することも少なくない。
これはトレッキングで歩き疲れた時に、ふと目にする風景や空の青さを妙に美しく感じてしまうのにも通じるかもしれないが、スマートフォンの画面越しに見える、まるで星空のようで曖昧な情報と、画面から目を上げた時に広がる風景とのギャップは、時として参加者の内面に何かを語りかけるようにも思える。
スマートフォンのスキャナーやパソコンのIntelmap(上の画像のようなマップを見ることが出来る)で探した情報を頼りに、普段の行動範囲の外側へ誘われて、初めて見える風景はゲームで得られるスパイスとしては、なかなかのものではないだろうか。
特にこの時期は夜の移動が多くなるだろうから、市街地でのプレイはネオンの灯りが意外にきれいなものだと感じることもあるだろう。
そんな経験が出来るのも、Ingressだからなのかもしれない。

体験を促すツールとしてのIngress

今年の五月、東北でIngressを使ったこんなイベントが有った。
震災で被災した地域の、元の姿をIngressの中に再現しようとしたこの試みは、単純に復興だけを目指すのではなく、その中に楽しみを見出すことに成功していると思う。
既に更地になってしまった場所にあるポータルには、過去にあった様々な建築物の写真が記録されており、参加者は現在の被災地を巡りながら、過去の風景を知るという、とても面白い試みがなされていた。

このイベントについて、インタビューの中で制作者のハンケ氏は、こんなコメントをしている。

「Ingress」は、街中にある美しいもの、新しいものを見つける、さらには地域にあるコミュニティにも出会えるということが、大きな目的の1つです。石巻は大きな災害に見舞われましたが、その一方で新たな芽吹きもたくさん見つけられる、ということで今回訪問した次第です。”(ボールドは僕によるもの)

ボールドの部分に注目してもらいたいのですが、Ingressというツールを通じて、場所を知り、実際に移動し、そしてその場所の風景や目の前のものを見、その場所を「体験」する。
かつてはGoogleマップやストリートビューによって、その場に行かなくてもその場所を知ることが出来るようになって、とても自分の視野が広がったように感じたが、そこには経験が伴わなかった。
経験が伴わないこと、更にいうと「知識は増えるが経験に繋がっていないため、実感が伴わない」ことこそが、ネットのもたらす欠陥みたいなものだと個人的には思うが、それを補うツールの一つがIngressだと思う。
Ingressは観光のキッカケには十分なるだろうし、観光との親和性はかなり高いと思うわけだ。
ぜひとも攻略のために、週末旅行を楽しんでいただければと思う。

ただ、ご注意いただきたいことがある。
それはIngressにハマりすぎるあまり、歩きスマフォがデフォルトになってしまいがちなのだ。
これは交通事故などの、しなくてもいい経験をしてしまう可能性が十分にあるので、やめたほうがいいだろう。
また、自転車でのスマフォ操作もやめた方がいい。
ハックするときは、交通のじゃまにならない所に自転車を止めてからにしていただきたい。

もし、あなたが、何かの間違いで、僕のような酔狂な人間のしていることに興味を持っていただいて、サポートをしていただけるのでしたら、本当にありがたいです。 この先、捕鯨に関する様々な話に首を突っ込んでいく予定です。 よろしくお願いいたします!