マガジンのカバー画像

ショートショート

125
ハッシュタグによる分類をご活用ください:ショートショート / 非ショートショート / 指定あり / 指定なし / アチーブメント
運営しているクリエイター

2022年8月の記事一覧

ショートショート|ならば4人の場合は?

 高度10000mの旅客機内で2人の客の男が談議に花を咲かせている。彼ら以外の客は前からずっと迷惑しているがお構いなしだ。片方は背が低く太っておりテニスボールのようで、もう片方は背が高く痩せており針金のよう。彼らは仕事仲間だが、具体的に何に従事しているかは追々明らかになる。  針金に似ている方の男が切り出した。 「なんでこれ食べたん? って食べ物あるよな」 「ほお」 「例えばナマコ」 「ああ、確かにヌメヌメブヨブヨで抵抗あるわな。初めて食べた人はとてつもなく勇敢だったか、あ

ショートショート|引っ込み思案なコメディアン

 父は私が生まれる前、「かわい子ちゃんと出会いたい」「かわい子ちゃんはどこにいるんだ」と常々思っていたそうで、夜な夜な街に繰り出してはナンパに精を出していたらしい。しかしその定義からして美人は少なく、いても宇宙の法則よろしく既に彼氏や旦那がいてガードが固く、いよいよ虚しくなった折、そろそろ落ち着きたいという思いもあって地元の連れである母と結婚したとのことだ。それから数年後、私が産婦人科で産声を上げたその時、助産師さんから「元気な女の子ですよ」と手渡され、私のしわくちゃな顔を見

ショートショート|私は未来で歴史を学んでいる者です

「改めまして、私は未来で歴史を学んでいる者です」と彼女はハキハキと言った。正直ちょっと鼻につく。初めての体験だが、未来を生きる人間に対して劣等感を覚えているのかもしれない。自分より学歴が上の人間に対して心の隅っこで小さくムカつくのに似ている。僕だけ? ……これをバネにして勉強を頑張らなくちゃな。大学の先生とかなれないもんだろうか。そう、妄想するのは合憲。 「良いんですか、僕なんかで?」と僕は諭した。「当たり前ですがこの時代にも歴史学者っていますよ。そういう方々と話す方が有意義