LWE:インド2・3

2では、ビオンの幼い頃の逸話がいくつか。やはりアーヤー、妹、父親と母親、そしてアーフ・アーファー。それに加えて、仲良しの給仕係、さらに言えば討ち取られた虎、そのつがいのメス虎が登場する。
そう見ると、さまざまなカップルがいる。カップルと言えば母子か夫婦を代表とするのが一般的な印象だが、二人一組としては、同胞、師弟、同僚という関係もある。ではアーヤーは、給仕係の仕事仲間か? もう少し指導的なようだが、その賢明さはだいぶ怪しくなっている。アーフ・アーファーは、超然としていて女性とつがいそうにない。地上では男たちの哄笑に紛れ、ビオンの夢の中ではジャッカルの姿となる。ビオンにとって恐ろしいのは、父親の急変である。実際にはビオンはアーフ・アーファーを、ヴォルデモールのように目にしたことがないはずだが。

妹とビオンは、対照的なコンビをなしている。強気と弱気、外向と内気、巧みと不器用。1では親のつもりになったビオンに殴られていたが、妹はへこたれていない。大胆不敵にも、アーフ・アーファーを挑発すらする。正確に言うと、おそらく妹はアーフしか知らず、アーフ・アーファーを怖れる理由がないのだろう。ビオンは空想的なようでいて、四角四面に文字通りの意味の囚われているが、妹は自在である。妹がアーヤーからdickie birdと言われて狂ったように笑ったのは、dickを連想したからか? それならそれで年齢相応だ。
これほど親しくした妹とも、ビオンはインドを離れると、ほとんど関わりがなくなる。

3の電気機関車を巡る行き違いについては、多くの人が書いているので特に触れない。給仕係が塗ったギーGheeは、精製バターclarified butterの一種とのこと。日本語のウィキペディアの画像を見ると、液状のものとペースト状のものがあって2種類あるかのようだが、英語版では、前者は作り立て、後者は室温次第、同じものだ。冷蔵庫に入れるとギーもカチカチになるのかどうかは分からない。虎が木の周りをグルグル回ってバターになる話は、1899年にイギリスで出版されている。そこではGhiと綴られている。

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