悪口を言われたくなかった
人に迷惑をかけてはいけない。
人を頼ってはいけない。
自立しなければならない。
ダメなやつと思われてはならない。
我儘を言ってはいけない。
そう思って、自分では抱えきれないことも
誤魔化しながら、一人で何とかしようとしてきた。
困った時に、誰かを頼ると言う選択肢は初めから排除してきた。
自分でできないのは、自分が未熟だからだと鞭を打ってきた。
何でそこまでするのだろう、と、これが始まった頃の幼少期の記憶を思い出そうとした。
出てきたのは、親族の悪口を言う母。
あの人はだらしない。
あの子は遊び過ぎで不真面目。
別に悪口ばかり言う母ではなかったけど、ポロッとたまに言う言葉が、自分にたくさんの制限をかけるキッカケになっていた。
こういうことをすると母に嫌われるんだ。
母をガッカリさせないように、良い子でいよう。
それが、いつの間にか絶対的なルールとなって私を支配していた。
だけど、思い返せば、悪口を言う=嫌いというわけではなかった。
大切に思って心配だからこそ、悪口のようなことを言っていたこともあった。
そして、もう一つ気がついた。
悪口言うことは、相手を下にすることで自分を上だと思える気持ち良い行為なのだということ。
縁を切りたいほど嫌いでなくても、仲良くしててもたまに悪口を言ってしまうのは、ここに理由があるのかもしれない。
自分に無価値感を感じている時、最も簡単に自分はまだ大丈夫と思えるのが、悪口を言うことなのだから。たとえ心の中だとしても。
悪口を言われる恐怖に怯えて良い子を演じていれば、何も言われない代わりに何もない人になってしまう。
だったら、人にとやかく悪口を言う気持ち良さを与えながら、本当の自分で生きた方が良いのかもしれない。