大分トリニータ戦 感想
前回は、受け入れるべき守備として、撤退時にミッドフィルダーの選手がボールの高さにポジショニングすることによって、ピッチを横断させず、狭く攻めさせる意識改革についての記事を書きました。
※意識改革と記載したのは、記事公開後にコメントをいただき、これは技術的課題ではなく、適応課題であると私は認識したからです。とてもありがたいコメントでした。
※適応課題については下記の本を読んでみてください。
他者と働く―「わかりあえなさ」から始める組織
論
さて、今節の大分トリニータは、ピッチを広く使うボール保持をするチームでした。
それに対して、ベガルタ仙台はいつも通りの守備をしたと思います。
結果としては、ボールがとれない前半40分を過ごし、木山監督は今季最悪の前半と評しました。
※厳密に言えば高い位置でとれたこともありましたが、とれたとき、とれないときの違いは明確でした。
※狙って起こせたものではないというのが私の認識です。
ベガルタ仙台の守備は、センターフォワード、及び、オフェンシブハーフの選手が中盤の底に残る選手を基準点とし、セットします。
基準点から、センターフォワードの選手は主に大分トリニータの右センターバックの位置の選手へ。オフェンシブハーフの選手は大分トリニータの左センターバックへとプレスをかけます。
この際、センターフォワードとオフェンシブハーフの選手が同時にセンターバックにプレッシャーをかけることはありません。
片方がプレッシャーをかけた場合は、もう片方は中盤の底の選手をみる決まりがありました。
つまり、センターバック間のパス交換は許容していた。もしくは、そんなつもりはなくても、パス交換は容易だったといえます。
再開直後のベガルタ仙台は、相手に縦パスを誘わせ、高い位置で、高強度の守備になっていました。
それは、パスコースを誘導できていたから。そして、逃げ場のパスやドリブルコースを遮断されていて、誘導先に構えることができていたからです。
※遮断はあえてされていた、と書きます。
※規準に遮断が含まれていたのなら、遮断を諦めるという選択肢をとらない限り、実行可能なことだからです。
※規準の詳細は下記の本を読んでください。可能であればセミナーの参加がベストです。
枝D ボールも自由も奪い取る術〜守備からみるフットボールの新しい景色
今節の前半40分はこれができていませんでした。
再現性のある崩され方としては、右センターバックへセンターフォワードがプレスをかけます。
このとき、センターフォワード、左サイドハーフは中央へ縦方向のボールを出させる意図を持っています。
しかし、現実としては左センターバックへのパスコースが空いているので、大分トリニータは誘いにのりません。
左センターバックへオフェンシブハーフの選手がプレスをかけたいものの、中盤の底の選手を捨てれないので、プレッシャーをかけられません。
また、かけたとしても今度はセンターフォワードの選手が中盤の底の選手を見てしまうので、右センターバックへのパスコースが空いてしまい、リセットさせられます。
このループでスライドが間に合わない時は縦方向へパスで前進。
あるいは、スライドは完了したものの、左右センターバックへのプレッシャーが甘い場合は、ダイアゴナルなサイドチェンジで、ベガルタ仙台の前線4人を置き去りにされました。
このベガルタ仙台の守備の仕組みは、相手のディフェンスラインがボールを全く蹴れないことを前提に成り立ちます。
しかし、大分トリニータは蹴れるチームでした。
なので守備が成り立たず、一方的なゲームとなりました。
相手の可能性を考えていない。つまりはスカウティング不足の試合でした。
※スカウティングできる状態なのか、できない状態なのかは今回は放置します。
※理由は1ファンには、知ることができないことだからです。試合のみを観ます。
※同様に、怪我人や疲労についても、今回は放置します。
次にジャーメイン選手を交代し、4-1-2-3にした修正をみていきます。
ベガルタ仙台は4-1-2-3にしたことで、センターフォワードの守備の基準点が一列上がり、センターバックを見ることとなります。
中盤の底の選手には、インサイドハーフの選手が対応します。
全体のウェイトが上がったことで、両ウイングの選手は左右に開く、ハルプフェアタイディガーへのパスコースを消す、遮断の役割をしながら、外側からプレスをかけます。
ボールを左右に動かすことができず、時間の余裕がなくなった大分トリニータのディフェンスラインは、ロングフィードの選択肢しか残らなくなります。
時間の余裕がない中で、限られた選択肢の中から選ばれたボールをクリアする難易度はあまり高くありません。
※図だけで考えられる大分トリニータの選択肢には、シャドーストライカーへのグラウンダーの縦パスやハルプフェアタイディガーへのロブパス。縦方向へのコンドゥクシオン等があります。
※一方、選択肢が選べるかどうかは、選手の持っている可能性次第です。大分トリニータの選手は、少なくとも今節は、そういった可能性がありませんでした。
一番大きな修正点は、結果として、横方向へのパスを遮断したことです。
これをチームにとっての課題として修正したのか。もしくは、相手にとって嫌なことだから修正したのか。
それ次第で、今後も「なぜか守備がうまくいく」「なぜか守備がうまくいかない」が続くと思います。
この修正によって、ベガルタ仙台の選手は左右にスライドさせられることが減り、ダイアゴナルなサイドチェンジにも間に合うポジションや、縦パスでウイングバックを捕まえられるポジションがとれるようになりました。
一方的なゲームだった前半40分。
大分トリニータの選手が上手くみえました。
そしてベガルタ仙台の選手が下手にみえました。
修正後のゲーム。
ベガルタ仙台の選手が上手くみえました。
そして大分トリニータの選手が下手にみえました。
それほど大きな修正だったと思います。
願わくば、道の正しさを、勝つことでしか得られない、自信、成長のために、ホーム初勝利をあげたかったものの、結果は試合内容を表さないスコアで終わりました。
苦しむ大分トリニータのロングフィードですら、なぜかピンチになってしまう。
コンディション不良なのか、急造ディフェンスラインだからなのか、単純に守れるだけの個人能力がないのか。
理由は分からないものの時々見せてしまう脆さを弱点と判断され、システムと選手の変更を行う大分トリニータ。
シンプルな2センターフォワードを活かしたロングフィードを起点に、終盤に2失点となりました。
今後、木山監督、そして、チームが、
修正後に見せたアグレッシブなフットボールと、内に秘める脆さを認めながらも、戦いを続け、大きなことを成し遂げるチームとして成長していけるのか。
それとも、弱点を認めず、小さなシステムをいくつも組み込んでいたら、いつの間にか、バグをたくさん抱え、身動きができなくなる、前半40分のようなチームで終わってしまうのか。
運命を分ける一戦に私は感じました。