【15分文学】テーマ:シェアすること


私がラザニアを頼み、かなこがボンゴレスッパゲッティを頼む。「美味しそう、ひと口ちょーだい」。そう言ってかなこは私のラザニアにフォークをのばし、ひと口に入りきるギリギリの大きさをすくって口に運ぶ。「美味しい! けど熱いよ、気をつけて」。そうしてかなこは自分のボンゴレに取り掛かる。私はフーフーしながらラザニアを食べはじめる。各々自分の皿と真剣に向き合って10分、かなこがようやくボンゴレをくれた。「残り食べていいよ!」

かなことは高校2年生からの仲、いわゆる親友だ。ティーンの女の子によくあるように、なんでもシェアしてきた。好きな音楽、好みの男の子、可愛いキャラクター。だけひとつだけ他の女の子とはちがう気をつけることがある。彼女はどんなに仲が深い友人であっても、他人が口をつけたものは食べない。
 
 そんなかなことスノボに出掛けた帰り、高速道路で大きな事故があり足止めをくらった。やむをえず私とかなこは近くの民宿に宿泊した。通された部屋は6畳ほど、そしてお風呂は部屋ごとに時間が決められている大浴場のみだ。かなこは明らかに不機嫌になっている、どうやら人とお風呂に入るのもかなり嫌らしい。「日本人はみんなで温泉とか行くもんじゃん、裸を見せたってどうってことないよ」そんな励ましにもならない言葉をかけながら、嫌がるかなこと大きなお風呂に入った。なんだ、かなこは一転、私たちしかいない大浴場で泳ぎ始め、私に水しぶきをあてて攻撃してくる。

 お風呂から上がって部屋で夕食をとった。スノボとお風呂で腹ペコだ。私がトンカツを頬張っているその食べかけのピースをかなこが奪い取った。