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『暴露 スノーデンが私に託したファイル』グレン・グリーンウォルド著、田口俊樹・濱野大道・武藤陽生訳、新潮社

正直に告白すると、NSAの盗聴問題やスノーデン氏に関する第一報が飛び込んできた頃、私はこの方(スノーデン氏)にあまり良い印象を持たなかった。

香港に潜伏してのリークという状況もあり、他国の工作にひっかかったのではないかと邪推したし(この本を読んだ今でも、完全に疑いが晴れたわけではないのだけど)、組織に属していながら、その組織の存在意義を覆すような大暴露を行ったことについて、若干いや~な気分もした。

これが、海上自衛隊のいじめについて内部告発した三佐のような事件なら、「すばらしい決断」と頭が下がるのだが。。。

だって、NSAが盗聴してることぐらい、みんな薄々知ってたでしょ? 日本の三沢にだってNSAのいわゆる「象の檻」があることくらい、Wikipediaを見ればしっかり書いてたでしょ? いまさら何の騒ぎよ?

しかし、この『暴露』を読んで、スノーデン氏に対する私の悪感情はかなり薄れた、と言わなければならない。NSAがやっていたことが、予想以上にひどすぎたのね。しかも、予想のかなり斜め上のひどさ。これはしょうがない、むしろ今まで誰も外に暴露しようとしなかったのが衝撃的。

……と感じてしまったほど、暴露の内容があざとい。まとめて読むと実に興味深い。SNS各社や、IT関連大手の各社の名前がNSAの協力者としてうんざりするほど上がっているが、その中には「さもありなん」「どうせそうだろうと思っていた」という名前から、「まさか」と感じる意外な名前まで、幅広く取り上げられているのだ。

著者とスノーデン氏のやりとりなど、半分くらいはまるでスパイ小説のような緊張の連続だった。向こうのジャーナリスト、根性あるなあと感じた一冊でもありました。

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