完勝記念日と殺した恋人

「勝ち組」「負け組」というフレーズが流行語に終わらず、すっかり定着したところをみると、世の中は勝ち負けを基準に回っているのだなあと思う。

他人と比べて勝った負けたと一喜一憂することほど虚しいはないと常々思っているので、その手の煽り文句には乗らない私だが、生涯に一度だけ「これは勝った。完全に勝った」と確信したことがある。

当時、私はMという某有名私大生と付き合っていた。外車を乗り回し、高級ブランド品を身につける絵に描いたようなボンボンである。その上、彼はサークルのバンドでボーカルをしており、常に女子から黄色い声援を浴びるような人だったので、私はいつも鼻高々だった。

ある日、ライブの後で彼から女の子を紹介された。バイト先の後輩で高校生だという。私を見るなり、「Mさんとすごくお似合いです」「いつもどんなデートしてるんですか?」「そのカバンかわいい!」などと人懐っこく無邪気に話し掛けてくるとても可愛らしい子だった。しばらく3人で話すと、満足したのか「お邪魔してすみません。またライブ見に来ます」と会釈をして帰っていった。 

それから3か月後、彼に「好きな人ができた」と言われた。あの女子高生である。

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