【備蓄編】これからの台風のために

 私は零細農家ではあるが、過去の気候データは一応チェックしている。2000年代から異常気象と呼ばれるような、統計的に「ハネた」データが目立つようになり、2010年代に入ってから、もはや異常とは言い切れないほど、最高記録、最低記録の更新が日常茶飯事になってきた。あくまで素人の見立てではあるが、2020年代以降、この傾向はさらに顕著になるだろうと思う。

 室戸台風、伊勢湾台風以上の台風は「必ずうちにも来る」と考えておいて損はない。わたしは関西在住であるが、平成30年台風第21号で家の屋根が吹き飛んだ。この21号や、千葉に被害をもたらした令和元年台風第15号、そして今回の令和元年台風台19号ハビキス(すばやい)。これは首都圏を直撃する見込みだ。関東や東北とて猛烈な台風と無縁ではない。平成3年台風第19号(りんご台風)という先例もある。

 今回は「一週間のライフラインの停止」を想定して、最低限の備蓄をリストアップしてみる。あくまで、田舎に一人暮らしをしているわたしの一例に過ぎず、参考程度にとどめて頂ければ幸いである。お住いの地域や家族構成によって更に必要なものが生じるだろう。備蓄について一言付け足しておくならば、「備えておいて損はない」ということだ。今備えておけば、来月、あるいは来年、再来年の準備がぐっと楽になる。乾電池や食料品の期限を確認する程度の準備で済むからだ。平時に買い回れば台風直前の買い物ラッシュを避けることもできる。

 起こりうる最悪のことは起きる。
 トーストを落とすと、バターを塗った面が下になる。

①食料品:一週間分
 常温で保存でき、そののまま食べられる、あるいはカセットコンロで調理できるもの。調理に大量の水を使用しないで済むもの。「一週間食べ続けてうんざりしないか?」と考えつつ缶詰などを多種用意するといい。乾パンばかりでは気が萎える。辛ラーメンが10食分あってもつらい。被災して打ちのめされているのに飯がマズイという状況は極力避けたい。炭水化物に偏りがちになるため、肉類の缶詰や高野豆腐があるといい。チョコレートなど嗜好品も買っておく。心の余裕に繋がる。
 忘れがちだが、生鮮食品がなく、ビタミンが不足するため、マルチビタミンや、アリナミン錠剤(第三類医薬品)があるとなお良い。普段服用している薬があれば残りを確認しておこう。

②飲料水14リットル
 飲料水は一人一日2リットルは必要だ。復旧作業などで肉体労働をする場合は一日4リットル程度見込んでおくとよい。水があれば一ヶ月は死にはしない。買って帰るのが大変ならネットでドンと買うといい。カフェインを含むお茶は水分補給には向かない。スポーツドリンクは糖分が濃すぎてかえって喉が渇く。保存中に劣化しにくいミネラルウォーターが良い。残暑による熱中症が心配なら、粉末タイプのスポーツドリンクを買っておこう。経口補水液は水と砂糖と塩があれば自作できる。

③光源:懐中電灯、ランタン
 明かりと言えば懐中電灯を用意しがちだが、暗闇の中で過ごす場合には、ランタンタイプの周囲を照らしてくれる電灯があるとよい。懐中電灯の光をペットボトルに当てて乱反射させ、ランタン代わりにする手もある。キャンドルは火災の恐れがあるので避けたい。アウトドアメーカーの高価なランタンでなくとも、ホームセンターや密林で適当に安いLEDランタンを見繕えば良い。ただし、電池には注意が必要だ。ものによっては単1、単2といった大型電池が必要になる。しかも必要なときに限って電池が切れたり、単1電池がなかなか手に入らない、なんてこともある。充電タイプは無論、事前の充電が必要である。

④電池、電源
 電池は必要な種類を多めに。使用電力からどれくらい保つのか計算しておく必要がある。また、長時間保存しておくと劣化するために、定期点検や買い替えが必要になる。エネループなどニッケル水素電池のセットと、単一や単2への変換用スペーサーを買っておけば、使い捨て電池を無駄にする心配はなくなる。何本必要になるか、ストックできる電力の計算はお忘れなく。
 田舎ならば発電機+携行缶ガソリン20Lコンボやハイブリッドカー(V2H対応車両)+パワーコンディショナーの外部電力供給コンボという強力な手段が使える。シガーソケット電源は手軽で地味に便利だ。
 スマホはライフラインだ。モバイルバッテリーだけでは充電回数が心もとない。乾電池式モバイルバッテリーがあれば融通が効く。あるいは、天気頼みになるがソーラーパネル付きのモバイルバッテリーがある。普段使いにも結構便利である。ただ、いざというときに対応するUSBやLightningケーブルがない、というようなうっかりミスにはご注意。


⑤カセットコンロ、カセットガス
 電気がなければ加熱はカセットコンロに頼ることになる。問題はガスボンベ一本でどれほどの時間保つのかという点である。コンロの機種やボンベの種類によって違いがあるので、一度、ボンベ一本がなくなるまで使ってみて欲しい。安いボンベだとあっさり無くなってしまう。
 わたしは一時期、キャンプ場もどきでバンガロー生活をしていたことがある。日々の調理はカセットコンロ。東邦金属工業のガスボンベが主力だった。冬季はガスが気化しにくく火力が出ないことがあるが、台風の季節は大丈夫だろう。

⑥その他:ブルーシート、ポリ袋、土嚢、ダクトテーブなど
 屋根の破損や、雨漏りの応急措置にブルーシートは必須であるが、台風通過後のホームセンターには恐らく在庫がないだろう。業者も個人も殺到する光景が容易に想像できる。一戸建てのお宅の場合は、事前に屋根のサイズを測って応急処置用にブルーシートを購入しておくことをおすすめする。安い薄手のブルーシートは水が透過してしまったり、すぐ破れてしまったりする。ケチらずに厚手を買おう。
 ポリ袋には様々な使い方がある。厚手の90Lか100Lのポリ袋を買い置くとよい。下水道が逆流した際、トイレやバスに簡易水嚢を設置して下水を防ぐ。下水の逆流は悲惨である。水嚢としての用途の他、雨漏りの際に応急処理として敷く、家財に被せる等々、ダンボールと合わせて水桶にするなど、昨年はお世話になった。


 土嚢の正しい使用法をご存知だろうか。なんとなく積むのと、きちんと積むのでは堅牢性が段違いである。誤った方法で斜面に積んでいる画像を見ると背筋が寒くなる。

神戸新聞社 土のうの作り方、使い方
https://www.youtube.com/watch?v=0n2hzkVZ1W4

 アメリカ人はダクトテープで無人島生活をする。ダクトテープは水漏れの補修から核爆弾のシェルの補修まで何にでも使える。ダクトテープで財布を作るし、ボートも作る。テープ100%のボートだ。
 要は超強力なガムテープである。柔軟に、あらゆるシーンで活躍する。ひと巻きあるだけで心強い。しかし日本で販売されている「多用途テープ」は耐候性に劣り、屋根の修繕に使うと真夏では熱で溶けてしまうことがあるので注意が必要だ。
 ダクトテープは粘着力が強い。窓に貼るには養生テープを買おう。

 そのほか、各々のケースに応じて必要な備蓄は異なるだろう。一軒家をDIYで応急補修をするにしても、台風通過後はホームセンターの資材の在庫が枯渇しており八方塞がりの状態に陥ることもある。ベニヤなりなんなり、修繕をシュミレーションして資材を事前に買っておこう。

 最後に、シャベルは偉大だ……。金象印のオールスティール製が良い。木製柄の方が若干高いが、木は折れる。中途半端な多機能シャベルより、金象印の洗練されたオールスティールがはるかにつよい……( ˘ω˘ )

以上。

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