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メタバースには3つのグループがある——メタバース本だいたい全部読んだ

■3つの考え方

30冊を越えるメタバース本を読み、それぞれの著者に立ち位置がある、ということに気づいたと前回の原稿で書いた。整理するため、それらの立ち位置を大きくグループ分けしてみる。まず、メタバースがどういう経緯をたどって発展していくのかという考え方が2つある。それが「コンテンツ派」と「VR派」。そして、それとはやや違った次元に「お金儲け派」というものがある。

これらのグループには対応するサービスが存在する。それぞれのグループについてもう少し詳しく見てみよう。

●コンテンツ派

コンテンツ派は、ゲームやイベントなどコンテンツファーストで人集めをおこないビジネスとすることを優先するグループ。ユーザー数がすべてである。

コンテンツ派は、ゲームやイベントで仮想空間に人を集めているサービスがメタバースだという考え方。具体的にはフォートナイトなど膨大な数のユーザーを集める人気のゲームタイトルやRobloxを挙げている。より多くの人を集めることが重要な目標であるため、まだ普及の過程にあるVRヘッドセットは必須としていない。ただ、VRヘッドセットが誰でも普段使いするレベルまで普及すれば最終的にそれをも取り込むことを狙っていると推測される。

メタバース、3つのグループ

●VR派

VR派はソーシャルVRファーストで、VRヘッドセットを使った没入感のあるコミュニケーションが最重要だと考えるグループ。

VR派は、VRヘッドセット等を使った没入型コミュニケーションこそがメタバースだとする。マルチデバイスは許容するがVRヘッドセットははずせない。既にある具体例としてVRChatやNeos VR、cluster、Horizon Worlds等が挙げられる。ネットワークを使ったコミュニケーションの近未来的な理想を追っているグループで、夢がある。ただ、実際に利用者の増加が加速するのはVRヘッドセット等のデバイスの技術的な発展をあと何段階か経た後ではないだろうか。clusterはイベントでの利用にも積極的で、コンテンツ派とVR派のハイブリッドとも言えるだろう。

●お金儲け派

お金儲け派=お金儲けファースト。儲かるかどうかがすべて

上記2分類に当てはまらないものとして「メタバースでお金儲け!」と言っている書籍群がKindle本の中にあった。名付けるなら、お金儲けファースト派とでもいおうか。

お金儲けファースト派は、メタバースやっとけば金儲けできるらしいぜ、だからはやくやんないとヤバい、はやくやればやるほど得だ、とか言ってる人たち。実例としてThe SandboxやDecentralandを挙げている。

ただ、ここに属する書籍は、メタバースが今後どうなっていくかということよりお金儲けできそうかどうかという点に主眼を置いたものであった。お金儲けができればメタバースでもなんでも食いつくという精神が根底にあり、それが悪だとは思わないが、メタバースがどうなっていくかについてはそもそもそんなに興味がないのではないかと書籍を読んで感じた。

●番外編(陰謀派)

尚、メタバースは中国の陰謀と書いてある本が一冊あった(深田萌絵『メタバースがGAFA帝国の世界支配を破壊する!』)。どのグループにも当てはまらない独自の世界観であり、そっとしておくのが賢明であろう。

今後勢力図はどうなっていくのか

「コンテンツ派」は既に大規模の集客ができており、ゲームやイベントという即応性が求められる世界で数百万という同時接続ユーザーがサクサクの3DCGの世界で楽しんでいるという実績がある。ビジネスも確立しているので非常に強い。

利用者数に大きな差がある

コンテンツ派とVR派の代表的なサービスで単純に最高同時接続数を比較してみると規模感の違いは明確で、フォートナイトの2020年4月のイベントでの最高同時接続数が1230万人なのに対し、VRChatの2021年12月の最高同時接続数は7万人。175倍である。既に普及しているサービスとこれから普及していくサービスを比較するのは酷だが、それぐらい違うということは認識しておく必要があるだろう。今後を占うにあたりどのくらいのユーザー数を持っているかということは非常に重要だからだ。

VR派は現在、ごっついVRヘッドセットを長時間使用することを厭わない、熱量の高いアーリーアダプターが集まっている。熱量は高いが、実際の規模感はまだ小さい。日本語ユーザーは同接数千程度だと推測される。これは、ゲーム実況などのライブ配信者ひとりの集客数にも及ばない状況だ。VR派も今後参加者を増やしていくだろうが、VRヘッドセットの解像度など性能があがり、軽量化され、安くならないと一般利用者は踏み込みづらい。VR機器の技術的な飛躍が待たれる。

VRヘッドセットに技術的な革命が起きたらコンテンツ派も没入型のVRサービスを投入してくるだろう。そうなると、コンテンツ派とVR派のサービスが正面から競合することとなる。現在のこの利用者数の差で競合したらVR派のサービスはひとたまりもない。それまでにVR派のサービスがどれくらいユーザーを集められるかが勝負となるが、現実的にこの差を埋めるのは非常に困難だろう。

巨大なコンテンツ派サービス

見えてくる将来像は、コンテンツでの集客に成功した超巨大なコンテンツ派サービスがどっしりと存在し、その周辺にセカンドライフくらいの規模感で生き残るVR派のメタバースサービスがいくつか散りばめられた世界である。


(つづく)

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