都市と木造と森〜「風除-sekka-」in 廣田神社の社会的意義(須藤大)

このプロジェクトでは、建築制限の厳しい防火地域内で木造風除室をつくります。八甲田山水系の恵みで育った青森県産材の原木調達から製材して建築物をつくり、発生する端材すべてを共木(トモギ)として一貫管理し、全て活用します。

「都市で木造木造風除室を建てる意味」

都市の建築はあらゆる制限が掛けられます。
多くの建築物は、都市計画区域内に指定された地域に建てられ、地域地区により高度な制限が掛けられています。その中でも防火地域や準防火地域の木造化が非常に厳しいです。
これまで厳しかった法律も少しずつ緩和され、都市の木造化は実現可能となりました。
海外のみならず、日本の札幌・東京・大阪・福岡などでも大規模木造化が進みはじめています。

都市の建築における法的な制限


「森の恵みで育つ原木をすべてを使いきり森に感謝する」

昨今、脱炭素化社会において木利用の注目度は向上していますが、製材の木取りにロスが発生していることをご存知でしょうか。

例えば柱梁材は強度が必要なため原木丸太の中央部(芯材)を主に木取り、その周りは二次構造材・造作材などに使用されますが、一つの建築物で原木丸太をすべて利用している建築物は現代ではほとんどありません。

そのため、建築材料として製材工場へ出荷された原木丸太であっても、場合によっては60%から70%が木質ボード原料用やバイオマス燃料用など、建築用と比較すると付加価値が低い用途へと流れていきます。また、木質ボードやバイオマス燃料は木材加工の最終系であり、それ以降は再使用(リユース)が難しいものです。

今回のプロジェクトで共木(トモギ)として活用することは、原木端材を木質ボードやバイオマス燃料に移行する前に利用する価値(リソース)を見出すという意義があります。この利用によって、20~40年の伐期齢まで時間軸を調整できます。


日本建築は古来からその風習があり、木の循環が図られていた文化です。

しかし、社会の高度化、文明技術の発達で手間のかかる木材はコストカットされ、結果として森林を管理する林業の衰退が加速しました。

日本の森は、天然林と人工林が約6:4の割合で分布されており、その中の人工林は、建築材料として利用するという意味で私たちの生活を守る役割があります。

人工林を伐採した後に木を植えて、循環利用することで、二酸化炭素の貯蔵と排出抑制を図り、脱炭素化社会の実現にも寄与できます。


「雪国青森では、より木を使う意味がある」

寒冷地で育つ原木のヤング係数(強度)は、温暖地に比較すると高いです。そして、木は熱伝導率が低くい、外の厳しい寒さから居住空間を保温する必要がある雪国には最適な材料資源といえます。

雪国地方都市の木造化が図られれば、生活を守るための森が循環され、地域県産材を活用した循環型社会となります。

このように、木材をあますことなく使うことを目指す本プロジェクトには、さまざまな社会的な意義もあることを今回はお伝えいたしました。

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