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ドイツの職人育成制度ー修業真っ只中のドイツの眼鏡士が解説

こんにちは、ベルリンにいる眼鏡士のユータローです。

ドイツと聞くと、産業、工業が強いというイメージと結びつけて考えられる人が多いのではないでしょうか。実際ドイツの産業は車をはじめに、世界的に強いです。これにはちゃんとした社会制度的な背骨があります。

ドイツには社会全体で手工業従事者を育てる制度があるのです。

Duale Ausbildung-ドゥアレアウスビルドゥング

この育成制度のことをAusbildung(アウスビルドゥング)と言います。Bildungは教育を意味しますが、Ausはそれを「鍛え上げる」のようなニュアンスにします(間違っているかもしれませんが)。

Ausbildungの中にも一つの職業を3年、ないし4年かけて、現場と学校で習得するDuale Ausbildungと、2−3年学校にだけ行くschulische Ausbildungがあります。後者は手作業が少ない職業に多いです。

現場と学校、実践と理論

私が今やっているのはDuale Ausbildungで、眼鏡屋(Augenoptiker)の現場に週に3.5日入り、残りの1.5日は学校で理論を学びます。3年間続きます。ちなみにタイトルに眼鏡士と書いちゃってますがそれは文字数と印象の都合で、私は正しくは眼鏡屋の見習いの3年目です。

これにより、一人前の眼鏡士として必要な経験と知識を3年で習得でします。現場ではフレーム選び、レンズのコンサルティングなど販売に関することや、メガネの修理、フィッティング、レンズの切削など職人的な手仕事も学びます。現場の教育方針は、法律で必要器具が揃っているかなどは決められていますが、店舗ごとに任せられています。

学校では光学理論、素材理論、フィッティング理論などここでは書ききれない量のものを学びます。社会科目もあります。保険年金制度、訓練生としての法的権利、憲法、市場原理、収入から税金や保険料を引いて手取りを計算する、などのちのサバイバルに非常に役立つ幅広い知識を学べます。

ドイツには眼鏡士を含め、多種多様な職業がこの制度で支えられています。パン職人、靴職人、自転車職人、デザイナー、技術図面作画者、などはもちろん、煙突清掃人、船の幌職人、床のタイル敷き職人、手術器具職人など、そんなところにも職人がいるのかと思うほどたくさんあります。

手堅い職探し、ある程度補償された収入レベル

Ausbildungの最終試験で、実践と理論の試験を合格した人は国家資格が与えられ、Geselle(ゲゼル)として名乗ることができます。

この資格さえあれば、ドイツ国内はもちろん、ヨーロッパ各国でも信用の置ける働き手と認識され、職探しに困ることは少ないです。また、各州(もしくは市)によってある職業のゲゼルが得る最低収入が決まっているので、最低限の生活はできるようになります。しかし職業にもよりますが、ガッポガッポ稼ぐのはまだホワイトカラーです。

中卒から始められる、社会の偏見が少ない

ドイツでは、職人としてキャリアを始めることはごく普通の選択肢として広く深く受け入れられており、偏見が少ないです(大卒の方が尊ばれている印象は大卒者から受けますが)。中卒の人はしっかり学校で上記の社会科目で生き残るための知識を得て、手に職をつけ、生活することができます。

マイスターの道が開く

ゲゼレになれば、マイスター(Meister)としての訓練を受ける道が開けます。ゲゼレになってからすぐマイスター学校に通えるか、ゲゼレになってから数年経験を積んでないと入学申請できないのかは職種によって違います。

眼鏡屋はゲゼレになってからすぐ通え、フルタイムで通うのであれば一年で資格が取れ、働きながら通うのであれば数年かかります。

マイスターの資格を得ることができれば、自分の店舗を開くことができます。ゲゼレになってすぐ自分の店舗、ビジネスを始めることができる職種もありますが、伝統的にはマイスターの資格は必須でした。最近では資格がいらなかった職業(オルガン職人、インテリアデコレーターなど)にも必須にするなど、マイスター回帰の傾向があります。

日本から政府援助でAusbildungできるらしい

スポンサーされているわけではありませんが、日独エキスパートサービスというところがドイツのAusbildungできるところを紹介しているらしいです。私は使ったことありませんが、やってみたいけど不安なとき相談するといいんじゃないでしょうか。

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