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物語から現実へ【さなのばくたん。 -王国からの招待状-Powered by mouse】

イベントを見終わって、何より"良く生きたいな"と思った
誰かや何かに勝ちたいとか見返してやりたいとか成功したいとかバズりたいとか偉くなりたいとかよりもずっと

丁寧なインターネット生活

https://twitter.com/sana_natori bioより

私が例年3月に開催されている名取さなさんのお誕生日イベント「さなのばくたん。」を最初に見たのは初回の2021年、「さなのばくたん。-ていねいなお誕生日会- Powered by mouse」だった

当時私自身がリアルイベントの開催を検討していた中で、「勉強がてら実際にどなたかVTuberの方のリアルイベントの様子を見てみたいな」と思っていたタイミングで丁度「さなのばくたん。」のことを知ったのもあり、当時まだ一度も名取さんの配信も動画も見たことがなかったのに思い切って配信チケットを買ってみたのだった

実際にイベントを見た時はまず最初に
えっ…!?トークの時間…長くない!?これってライブじゃないんだっけ…!?
と面食らったことを鮮明に覚えている
パソコンメーカーmouseの協力を得つつ、高い技術力を誇るTRIBALCON.も制作に深く関わっている体制をバックボーンに、無所属個人のバーチャルYouTuberとしては異例といっても過言ではないクオリティの高いステージと3Dの姿と最高の楽曲、そしてチネチッタという舞台を用意し、何より本人の良い声良いお歌良いパフォーマンスが揃いつつ

なぜか目の前で繰り広げられているのは

MCタイムと言うにはあまりにも永遠の時間すぎる、配信コメントと現地のお客さんをいじり倒す名取さんの姿…

最初の方はそうなる背景がまったく理解できずひたすら「???」と半ば茫然とイベントを見ていたが、イベントが進むにつれ、徐々になんとなく名取さんがやりたいことがわかってきた気がした
「ああ、これはおそらく、普段ご自身がYouTubeでやっているライブ配信の延長線上にあるものとしてこのイベントをやろうとしているんだ…」
たしかに、歌手としての自意識がある人がリアルイベントで音楽ライブをやるのは、俳優としての自意識がある人がリアルイベントで演劇をやるのは自然なことだろう、だったらバーチャルYouTuberとしての自意識がある名取さんがリアルイベントでも"配信"をやろうとするのはなるほど、すごく筋が通っている気がしてきた
そして配信で見てるお客さんと現地のお客さんをどちらも平等に扱いたいという気持ちも見えてきた
そんな普段の配信での「名取とせんせえ」の関係性を踏まえて行われた初回ばくたん。イベントから入った私は、逆にその「普段の配信」がどんなものなのかを知りたくなった
それで、2018年デビューからの6年分の配信アーカイブと動画を全部見てみることにした

(その途中経過の感想などはこのへんで聞ける↓)

時系列順に見ることにこだわりすぎたがゆえ、全てのイベントやグッズ告知について、私がそれを知る頃には終わっていた
ただ2023年のばくたん。だけは終演後にタイムラインでまわってきた感想を見て「あ、これは時系列順を無視してでも今見ておくべきだな」と思ってアーカイブで見た
見ておいてよかった

2023年の「さなのばくたん。 -ハロー・マイ・バースデイ-」の内容がどんなものだったかの詳細についてはこの記事では割愛するが、イベントの内容は2018年当初から名取さんが配信や動画やイベントで張り続けていた伏線についての回収でもあり、それと同時に名取さんのファンであるせんせえ達がその伏線から感じていた漠然とした不安に対しての、前向きな答えを打ち出すようなものだった

名取さんは「VTuberという世界の外にもっと出てみたい」というようなことを、たしかどこかのタイミングでおっしゃていた
2023年それを特に体現していたのが、那須どうぶつ王国とのコラボやTVCMだったと思う

それらも含め、YouTubeでの活動以外にも様々なイベントやコラボ、メディア出演を経た2024年のばくたん。

一方私の方も2023年11月頃、ついに2年半以上の時をかけアーカイブ視聴の時系列が現在に追いついた
満を持して、そして初めてばくたん。の現地チケットを予約購入した

あまりにも長すぎる前置きでごめんだけどもうちょっとだけ聞いて欲しい

名取さんのイベント会場である映画館チネチッタは、ラ チッタッデッラという商業施設に入っていて、その一部の飲食店&タワレコとも名取さんは例年コラボしている
どれも内容素晴らしいのだけれど、この記事ではエロイーズカフェ2階で行われている特別展示「SANA NO BAKUTAN. MUSEUM」にだけ少し触れておきたい

そこには名取さん側の依頼によって制作された公式ファンアートイラストやパネルにフィギュア、イラスト、過去のイベント映像やグッズ、写真などなど、小規模な展示ながら「名取さな」を目一杯体験できる空間が広がっていた

今年は等身大名取さなフィギュアのお披露目もあり話題だった

SANA NO BAKUTAN. MUSEUMが、名取さな公式サイドで作り上げるでっかいラブの空間だとするなら、せんせえサイドで作り上げるでっかいラブの空間は、さなのばくたん。イベント当日のチネチッタロビーにあった

ぜんぜん撮り切れなかったお花たち。実際はまだまだたくさんある

「スタフラ文化が好きだ」という名取さんのために全国各地のせんせえ達が個人であるいはグループで、それぞれ思い思いにデザインしたスタフラや楽屋花etc色とりどりのお花がチネチッタのロビー中を埋め尽くしていた
花の大小問わずその一つ一つに「作りたい」「伝えたい」の気持ちが詰まっていることがよくわかるお花ばかりで、それらで作り上げられるロビーの空間は、儀礼や自己顕示的なものをあまりにも大きく越えて「でっかいラブ」としか形容できないものになっていた

そんなロビーを通り抜けて座席へ

知ってはいたけど会場はほんとに映画館!!オールシッティングスタイル

ほとんど定刻にイベントは始まった
新型コロナウイルスの影響で初開催から昨年まではずっとお客さんの声出し禁止公演だった「さなのばくたん。」は今年は初めての声出し解禁ということで、冒頭では名取さんから声出しOKの案内があったりエッビーナースデイの声出し練習パートがあったりした

その声出し練習の時、現地会場にいるお客さん達の声や反応にあまりにも即座に名取さんが応答するから、ここが映画館だということも今チネチッタ内のたくさんのスクリーンに同じ名取さんが映っているということも一瞬忘れて、「今私たちの目の前にいるスクリーンの名取さんは本物の名取さんなんじゃないか?」という気がしてしまった
場所が映画館なのも相まって、嘘と本当が、虚構と現実が、リアルとバーチャルが見る見るうちに混濁していくのを感じた
それは今までネット越しに「さなのばくたん。」を視聴していたのとは全く違う感覚だった

そのまま声出しが楽しい名取さんオリ曲が3連続で続いて多幸感がすごく、ほとんど夢見心地の状態のまま、スクリーン上では物語が進んでゆく…
その物語の中で名取さんの新曲お披露目があったり、新衣装のお披露目があったり(超可愛い!!)

せんせえ達と名取さんで一緒に謎を解いたり、いろいろなことがどんどん起こっていった
その中で何気にすごかったのが、リアル会場のお客さん達+ネット視聴のお客さんに一斉にアンケートを取って、そのアンケート結果がステージ上に反映されるギミック…

現地参加の人はスマホで回答

配信を担当されているZ-aNさんのお力添えによって実現しているものらしい…
すご!?

そして事件が無事解決して本編は終了、アンコールではさまざまなうれしいおしらせがあった後、最後の曲は「さなのおうた。」

これがもう本当に最高でした
サビの「すきだよ、せんせえ」に客席から、そして自分自身の心からも自然発生的に湧き上がる「オレモー」のコールが、すごくよかった…
普段の配信では、けして「好きだよ」とか、そういう甘い言葉をせんせえ達にささやかない名取さんが、「さなのおうた。」でだけは「すきだよ、せんせえ」と言う言葉を歌詞として、音楽として発する
さなのばくたん。がはじまって以来はじめて声出し可となったこの公演でようやくせんせえ達はそう歌う名取さんに対して「おれも~!!」と直接伝えられるようになったのである
名取さん同様せんせえ達もまた名取さんに配信のコメント欄ですきだよとか可愛いとかそんな言葉を普段は使わない
でもこの歌でだけはそういうコール&レスポンスができる、やっと今年できるようになったという事実にちょっと胸が一杯になった

そしてアンコールの時間もいよいよ終わりゆくイベントを眼前にして邪な私が思ってしまったのは

もちろんばくたん。は良いイベントだし名取さんのルーツや志向性を考えてもすごく筋が通っているのはよくわかる
でもでもでもでも!
それはそれとして、やっぱ名取さんのオリ曲、もっと生で聴きたい!!!!歌って踊る名取さんをもっと長い時間、見たい!!
お願い!!!!!オルスタワンマンライブ、やってくれ~~~!!!!

と心の中で叫んでいる内に、名取さんはスクリーンからいなくなり、今度こそイベントは終演した…
と思ったその時
突然スクリーンに映像が流れはじめた

不穏な内容じゃ…ないよね!?とドキドキしながら見ていると、それはさな歩きのような映像で、どうやら名取さんは六本木にいるようだ

何か建物を見つめる名取さん
その建物は

EX THEATER ROPPONGI!?!?!?!

おもわず「えっ!?!?!?」と声をあげた次の瞬間スクリーンに映し出されたのは


うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

速攻で願い、叶っちゃった…

(この時スクリーンに流れた映像は名取さんのYouTubeチャンネルにもUPされているのでぜひ)

この映像が流れた後、ほんとに今度こそイベントは終演した


今回のイベントを経て
紡いできた"名取さなの物語"を否定せず内包したまま、現実へ
ということを改めて感じた
昨年で言えば那須どうぶつ王国とのコラボが象徴的だし
今回のイベントで言えば映画館のチネチッタからEX THEATER ROPPONGIでの音楽ライブへ、ということだったり

名取さんはいつも、せんせえ達に目標を課さない
目標で人を繋ぎ止めようとしないし、自身の行動の根拠として示さない
今回でいえば、「初めてチネチッタ全館貸し切ったからぜひ現地に来てほしい」ということは言っても、「チケットを全部売り切りたい」とは言わなかった
「金盾目指す」とも「武道館に立ちたい」みたいなこともこれまで一度も言ったことがなかったと思う
代わりに名取さんは今自身が何をしたいのかや、何を好きなのかについていつも教えてくれた
そうとは直接言わなかったとしても「もしあなたも興味を持ってくれたなら、一緒に参加して欲しい」という気持ちをいつもそこから感じていた
そしてそれを義務じゃなくて素直に「良い」「楽しい」と思ってくれるせんせえ達がたくさんいたからこそ、今日の名取さんの活動へと繋がっていく

それってかなり奇跡みたいなバランスだと思う
巨万の富や地位、名声があってもなくても、様々な事情で「自分の好きを大事にする」「自分のやりたいと思えることをやる」を叶えられない環境にいる人達は本当にたくさんいるし、そうじゃなくても(ファンも含めた)周りの人達がやって欲しいことと本人のやりたいことが一致するかどうかって、"運"としか言いようがないところも大きい

でもそれでも、名取さんを見ていると
自分もやりたいことをやってみたい、自分の好きを形にしてみたい
そういう気持ちに駆られるのはきっと私だけじゃない
3月7日にタイムラインが思い思いの名取さんへのお祝いファンアートで溢れるのも、チネチッタのロビーにオリジナルなお花達が溢れるのもその証左だ

せっかく生まれて来て、今も生きているのだから
永遠のように感じられる楽しい時間は、でもいつかは必ず終わってしまう
名取さんは自身の死後やお墓の話をよく配信でする
何度お誕生日を繰り返しても17歳のままバーチャルサナトリウムで生き続ける名取さんも、いつかはたぶん死んでしまうらしい
ならせめて今は、もっとちょっとでも楽しく、一緒に

それ以上に大切なことなんかたぶんないから
 
良く生きたいよねインターネットがあるこの生活を
丁寧に