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摂食障害とは何か?➁

前回の記事はこちら

前置き、興味ない人は飛ばしてOK

さて、今回は症状の程度と併発についてを記していきます。この部分が、摂食障害をより複雑化させている一つの理由だったりします。

これって非常に難しいことなのです。一つの名称で括ってはいるものの、その症状には相当な違いがあり、個人の体質、環境、状況、遺伝、など多くの要因があり、同じには括れないのですが…

病理として研究したり、効果の高い治療を実施するうえで、やたらに名前を増やしていくことが必ずしもいい結果に繋がるとは限りません(その方がいい場合もあるでしょう)。

これは摂食障害に限らず、多くの疾患において同じことが言えます。ガン、にもいろいろあるように。当時情報も研究も少なかった時代に、ガンはかなり一くくりにされていた印象があります。※あくまでメディアではですし、個人の感想です。

そうすると、違いをどう考えて行くかは、多くの疾患について言えることだとは思うんですけどね…。

メディアの影響が強く、また間違った認識がある(気がしている)ので、引き続き摂食障害についての情報発信をしていきます。

摂食障害の程度について

摂食障害は、多くの臨床経験から、程度について分けて治療にあたるのが望ましいという見解があります。が、軽度だから楽だ、軽度だから治りやすい、ということではないです。

どの段階にいるかで治療方法や注意すべき点が異なるもの、と考えるとよいでしょう(これはかなり古い時代から言われていることです)。※こうしてある指標を用いて予測し、適切に治療していくことを見立てとも言います。

一方で大事なのは、あくまでもこれは知識であって、主観的に行うものではないでしょう(要は自分で決めるものではなくそれは医療の為すことです)。

非当事者としては、このような複雑性を持っている疾患だと知ることが、当事者にとっても我々にとっても、意味のあることだとわたしは考えています(たとえ周りにいなくてもですよ、いつ罹患するかは誰にも予想できませんから)。

今回はいくつかの分類について紹介します。

症状の程度

■軽症摂食障害■

元来の精神病理は比較的軽いが、社会風潮からダイエットを始めてエスカレートして止まらなくなったり、不食が過食になり持続するもの

いわゆる初期段階にあたるものです。が、ダイエットがエスカレートしたり、ダイエットがやめられない、いわゆる依存に近くなる状況には、決して軽くはない背景が存在していることもあります(※一方で取り組むきっかけそのものは些細だったりはする)。病院での治療には至らず、自然と治ることもあります。
本人の自覚が最も少ない状態はこちらの症状と言えるため、特に周囲も気が付かない、気づいても対応が遅れる、あるいは誤った対応から中核化するケースはあると思います。

■中核的摂食障害■

やせ願望が強く、脅迫的に摂食障害であり続けようとする。現実回避のための手段であり、治療することに強い葛藤を伴う

摂食障害の患者に多くを占めるのはこのタイプと言われます。確かにいろんな話を聞いていて多いのは、"治す意志はあるけど治すのが怖い"という声や、"心の支えになっているところもある"という声です。いわゆる自尊心のためや、アイデンティティとしての摂食障害と言われるのでしょうが、こちらの症状においても様々な背景があります(個人的にはこの説明にあまりしっくり来ていませんがそれはまたいずれ)。

また拒食症ならこのタイプ、過食症ならこのタイプ、ということでも無いように感じます。その精神状態のあり方がどこにあるかが重要かなと。※一般的には拒食症が入口のように言われがちですがその限りではありませんから。

■境界性パーソナリティ障害的摂食障害■

問題の中心が摂食障害そのものではなく、心理面・行動面の著しく不安定かつ衝動的な側面であるケース。境界性パーソナリティの症状として摂食障害が現れるケース。

説明の通り、境界性パーソナリティ障害が起因して起こるタイプです。これは非常に難解になってしまうのですが…(説明が)

大多数の人とは違う反応や行動をすることで本人が苦しんでいたり、周りが困っているケースに診断される精神疾患です。認知(ものの捉え方や考え方)や感情、衝動コントロール、対人関係といった広い範囲のパーソナリティ機能の偏りから障害(問題)が生じるものです。注意したいのは、「性格が悪いこと」を意味するものではないということです。

その人の認知や感情などは、当然ながら皆異なるのですが、これらがうまく環境に適応できなかった結果、生活や健康の状態が低下してしまう状態、ということですね。

環境によっては、個性の強さとして扱われているケースもありますし、個性の強さを疾患として考えてしまうケースもあるため、鑑別はとても素人に出来るものではないでしょう。また発達障害とは別の疾患です。この辺の専門性になってくると、専門家でも超難解です(どういう日本語)。

ちなみに上記の分類は、瀧井正人医師の【摂食障害という生き方】にて紹介されているもので、医療者であれば必ず知っていること、というものではないです。

こちら以外にも、症状から分類を見立てて治療を行う研究はいくつかありますが、こちらが分かりやすかったのと、わたし自身も映画を通じて、このような分類型があるという肌感覚があるので紹介しました。

■食事というコミュニケーション■

難しいなあと思う所は、軽度の摂食障害からスタートしていても、食事を介して他者との交流をはかる場面は多くありますから、それがゆえにパーソナリティ障害とまではいかずとも、人間関係に大きな悩みを抱えることはあるでしょう。

健常者でも、ちょっとした食事制限をやってみればわかります。例えばアレルギー対応を体験してみる、というだけでも、それがどれだけ交流を難しくするか。同じように食事を摂れる人ばかりではありません。

摂食障害に関していえば、そうした他者との交流をはかるうえでの問題もありつつ、抑えきれない食欲が罪悪感に変わったりする訳ですから、アレルギーのようにショック症状を起こすことはないにしても、日々生活するだけでも常に精神的負荷が掛かってくることになります。

また繰り返しになりますが、食事だけがその精神に負担をかけるわけではなく、体型や、体重や、自身の考え方など、あらゆる要素が負荷となり、それがまた食欲に結びついてしまうという、相当厳しい症状に見舞われることもあるのです。

■コラム…心の働き■

さて摂食障害を学んでいくうえで、避けて通れないのは"心の働き"を考えるということでした。

というのも、心とは世の中の変化と共に変わっていく、フィードバックシステムを採用しているからです。いや何言ってんの?と思うかもしれませんが笑、すごく分かりやすく説明します。

例えば以下のような悩みがあるとしましょう。

・仲の良かった友達にTwitterで実は悪口を書かれていた…
・共通の友人がわたしの知らないところでLINEグループを作っていた…
・いつまでたってもメッセが既読にならない…既読無視…
・インスタグラムで友人がキラキラしすぎてて本当にしんどい…

こうした悩みは、人によっては生活に支障が出るほどきつかったりします。一日中この悩みが離れずにいる人もいてもおかしくありません(そんなこと気にしなきゃいいじゃん!と思える人はラッキー!

これ自体それほど大きな悩みでなくても、また繰り返したらどうしよう、とか、同じようなことが起きないかな、とか不安が高まると、実際の行動に抑制が起きたり、気持ちが強くなりすぎて身体に不調が出たり、といったこともあるでしょう。

これらは心の働きと言えます。

しかしこの悩みは、どれも"SNS"がある、とか"スマホ"がある、という前提条件が必要です。昔はなかった悩みです。時代と共に生まれた悩みですね。

もちろん、これらが無いころも別の悩みや葛藤があったわけだし、人からどう思われるか、という感情でみればどんな時代にもあったといえるでしょう。

が、しかしこれらがいきなり世界中から消えるわけでもないし、我々の記憶から吹き飛んでしまうこともありませんね。

それどころか、さらに新しいシステムや、コミュニケーションツールが生まれれば、それを扱っていくうちに生まれる人との関わりで、新しい悩みは形成されるわけです。

人は心の動きを使って、システムやツールをよりよく使おうと考えますし、他者と交流をしようともします。それらを、経験し、記憶し、またさらに新しい心の働きを生んでいくわけです。

心の働きは単なる喜怒哀楽!ではなく、よりよく生きるために、どういう行動につなげていくか、だれと繋がるべきか、という要素にも深く関わっているんですよね。

心があることで苦しいのだが!どこがよりよく生きてんだ!!と思われる方もいると思います。これまた心の難しいところで、たしかにどういう訳か、心の働きを駆使したことによって生きづらくなる方もいます。

これがなぜそうなってしまうのかは、わたしは特に答えも考えも、持てていないのが現状です。なんでなんだろう。

多分答えがある問題ではないでしょうし、こうした素朴な疑問は誰にでもあるでしょうが、どこかで折り合いを付けられるのかな。どうですか??

わたしは今もって折り合いが付けられず、今も心の働きについて追いかけているわけです。

その他の分類

こちらは、野間俊一医師の【摂食障害治療の難しさ】という論文にて紹介されている分類です。先ほど紹介した分類に近い部分があります。

■反応・葛藤型■

摂食障害の症状以外には主だった問題が少ない。心理的ストレスに対する反応としてのもの、あるいは背景に心理的葛藤を伴う。

■固執型■

こだわりが強く、脅迫的な生活パターンがある。達成感や優越感のために、症状が深刻化していくケースが多い。

■衝動型■

衝動性が高く、摂食障害以外に自己破壊的行為があり、パーソナリティ障害も伴うため、それらの行為が習慣化しやすい。

もう少し詳しくあるのですが、割愛します。またこれらはやはり行き来する性質を伴っているように感じますし、なんというか、いずれの要素も持っていて、どこかのバランスに傾いている感じ、かな?個人的な感想としては。

ややこしくなりましたがシンプルにまとめると

3つの分類が一般的ということです。前回は8つの具体的な症状を紹介しましたが、今回はさらにそれを3つの類に分ける考え方でした。これ以外にもいくつかの分け方がありますので、また紹介していきたいと思います。

し、コラムにも書いたように、心の働きがある故、いずれの分類にも属さない人もいるでしょうし、必ずしもどこかに分けるというものでもなく、当事者自身がどのような状態であるかを視ることが最も重要にはなるのですが…。

それを繰り返し行ったうえで(たくさんの研究熱心な先生方が)、ある程度の傾向として導かれたのが、こうした分類だと思ってください。物事を理解するには、とにかく分けて分けて細かくして具体的にしていかないと、わからないんですよね。

それでも共通に扱うために(でなければ情報を細分化することができない)、同じ言葉それすなわち"摂食障害"と説明はされるのですが。

ここに違和感を覚えるか否かも、また一つの心の働きと言えるのではないでしょうか。

↓一人ひとりちがうという出演者の様子をこちらに↓

↓100人分の思いがありますよね↓



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