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摂食障害とは何か?①
さて、わたしは摂食障害についての映画を作った人です。ええ"DieAter"という映画です。が、映画の中ではいまいちどういう病気なのかという説明が無いんですよね。あるんだけど、少し視点が特殊です。
まずもってどういう病気なの?という部分をもう少し丁寧に説明していかないとな、と思い立ち、こちらの記事を書くことにしました。
どんな病気なのか?
言葉だけ聞くと"摂食"に"障害"がある病気なんだなあ~というのは、わかるかとは思います。
摂食とは?
有機栄養生物(従属栄養生物。→従属栄養)が生きるために食物(餌資源)を体内に取り入れること。
こちらに問題が生じてしまうのが摂食障害です。つまり"食べること"が障害になります。衣食住、と言われる生きるうえで重要な要素のうちの一つに問題が起きるわけですから、基本的に生きるのが困難です。
イメージ調査では…
過去にイメージ調査を行ったことがありますが、やはりイメージ的に"拒食症"のイメージが強く、食べられなくてガリガリにやせ細ってしまう病気と思われがちです。
実際、テレビやネットなどでそういう様子を見たことがある人も少なくないのでは?また、街で見かけたことがある、知り合いにいたことがある、という人も、もしかしたらいるかもしれません。
しかし"拒食症"は"摂食障害"のうちの一つであって、また、ガリガリになってしまうことがすなわち拒食症ではありません。どちらかというと、身体症状の一つとして"極度の痩身"という状態が、あることはある、くらいの位置づけです。
でなければ、痩身の人がすべて拒食症になってしまうし、また痩身でなければ拒食症でない、ということにもなります。つまり、それは症状ではなく、あくまで状態ということになります。※そういう状態になりやすいのは事実でしょう。
ではどのような病態なのだろう
さて、ここではまず一般的な分類を紹介します。これはアメリカの精神障害の診断と統計マニュアルであるDSMに基づいたものであり、あくまでも目安です。
■神経性無食欲症 Anorexia nervosa■
制限型:食物を口にすることを重度に制限する。
いわゆる拒食症のイメージに強く残るのは、この症状であることがしばしばでしょう。長期化すると極度の痩身になることはありますが、初期段階では誰もが痩身とは限りません。
し、皆が必ず極度の痩身に至るとは限りません。診断において重要なのは、その精神的状態や思考などが重要視されます。身体状態も基準にはなりますが、その重要性は変わりつつあります。
排出型: 過食後に自己誘発性嘔吐や下剤などで代償行為を行う。
食事をしない、という制限型もありますが、排出型のように大量に食べるものの、吐き出したり、下剤を乱用したりすることで代償行為を行うケースもあります。
代償行為そのものが、慢性化してしまうこともあり、精神的な依存のような状態になります。また、それそのもが身体へ負担であることがしばしばで、緩やかな自傷行為ともいわれます。
■神経性大食症 Bulimia nervosa■
排出型: 不適切な代償行為を定期的に行うタイプ。
こちらはいわゆる過食症と言われる方です。神経性無食欲症の排出型とどう違うのか、というのは難しいところになりますが、神経性大食症の場合は、体重へのこだわりが少なかったり、通常の食事がとれる中で、過食行為も伴い、かつ排出があるという状態を指します。※細かい診断基準はあります。
非排出型: 排出以外の代償行為(絶食、過度の運動等)のみを行うタイプ
こちらは代償行為が排出ではない場合です。非嘔吐過食、と表現されることがありますが、代償行為を伴うことが判断基準の一つです。
拒食、過食、と言うと相反する表現のように聞こえますが、病気のステージが異なるだけの同一疾患と考えられています。また拒食症のあと必ず過食症になる、という話をしばしば見かけますが、必ずしもその限りではありません。順調に回復することもありますし、曖昧だったり、悪化したりと、予後も様々です。絶対はないです。
■コラム…体重との関わり■
ここまでで4つの病態です。
また、体重はそれほど重要ではない、というのは考え方の話であって、我々医療従事者でない立場の人が見るときは、体重を評定にするべきではな無いでしょう。
また医療従事者のガイドラインにも体重に関わりなくだれでも罹患する可能性がある、という一文があります。
ところが、ここは重要なのですが、そうはいっても治療上は指標の一つになります。なぜなら客観的に評価できる基準がないと、治療の有効性を判断したり、適正治療を施すタイミングなどを判断できません。
摂食障害は、一人一人に合った治療方法を構築していくのが大切な病気ですが…現代医療は出来るだけ多くの人を救うために、結果と指標を積み上げていくものですから、こうした基準が必要になるわけです。
※非常に難しいですが、例えば激やせ状態の神経性無食欲症の方などは、身体面優先の治療を施します(命をつなぎとめるために)。
おおよそ、そうした治療は本人の心の状態に寄り添えないケースが多いです。こうした問題を解消していくには、いったい何が出来るのやろ(頭を抱えます…)
→ふじもとの思いつく限りの代案としては、医療従事者と治療者の中間に入れる組織や団体が必要なんだろうなあ。臨床心理士で専門チーム作ってやるとかかな。でも資金どこから出すの?って感じだ。多分保険制度から捻出できない。その辺は、ちょっとわからん。
ちなみにですが、当事者の中には、表出行動が情動系に支配されることがあり、ほとんど会話にならない(症状です)、攻撃的になる(症状です)、反抗的になる(症状です)、集団から外れようとする(症状です)、などが見られることも少なくないです。
症状なので、本人も望んでいるわけでは無かったりします。自覚もあったりなかったり、大抵はありません。※この辺はすっごい長くなるのよね、脳の勉強とかそういう分野だから…前頭葉がどうとか扁桃体がどうとか…うん
そして難しいのは、この情動に対して人は、情動で答えてしまいます。いや、簡単な話、いきなり犬に吠えられたら反射で答えてしまうように、情動的に言葉をぶつけられたら、情動的な言葉で返してしまうのですよ。
例…
★「無理、食べたくない、無理!」
☆「まあそんなこと言わなずに食べて…」
★「無理!!無理なものは無理!!無理!!」(情動炸裂)
☆「でも食べないとあなたのためにならな…」
★「無理!!無理無理!!無理!!無理!!!!」(情動炸裂)
☆「…うっせー!!!!!!!このやろう!!!!!!」(情動応答)
みたいな(極端ですがあり得ると思います)。これが慢性的になると、もう関係性の構築って難しいのよね。だから第三者介入が必要になります(ほんとに)。
さて…これはよく言われるのですが、体重が戻れば回復、という病気ではありません。低体重でなくなり、身体の状態が健康になったら回復、というものではありません。
心の病気です。
それに、身体の不調や食行動の異常が、伴うことがある、のです。食行動の異常さえも現れないこともあります。
変わった症状
■特定不能の摂食障害 Eating disorder not otherwise specified■
吐き障害
過食症、拒食症、との違いが非常に難しいのですが(実例も少ないようで研究不十分)、過食症や拒食症にまで分類されないけれど(※どちらも一定の診断基準があるので)、食事を排出するという行為が常習化している方を指すようです(下剤乱用やチューイング等も対象になります)。
食後の罪悪感や、体重へのこだわりなど、共通点はあります。考え方としては、ここから症状が重くなるもの、と考えるのが良いでしょう。日本ではどのくらいいるのか全く謎ですが、アメリカではダイエットの一環で食事を嘔吐する行為が多くみられるそうです。
むちゃ食い障害(過食性障害)
過食をするが不適切な代償行為は行わない。摂食後に自己嫌悪、罪悪感、抑うつなどを呈する、という症状です。何気にこの症状は多いと思います。
ダイエットの一環として、過度な食事制限をし、その結果「食べ過ぎてしまった…」という話はそれほど珍しくないです(結構聞きます)。もちろんダイエットに関係なく、ストレスからくる過食もあるでしょう。
その回数が多い、コントロール不能なほど食べてしまう、それに罪悪感を伴う、など、診断基準はありますが。立派な摂食障害ですね。
睡眠関連摂食障害
こちらは睡眠中に食事を摂ってしまうという障害です。いわゆる夢遊病のような症状で、自覚がないこともしばしばあります。※また関連症状に、自覚症状がありつつ、夜間に目が覚めて過食をしてしまう症状もあります。
あまり聞いたことはないのですが、朝起きたら身に覚えのない食事のあとがある、という話はちらほら聞きます。覚せい状態でなければ、全く覚えていないというのは驚異的です。
選択的摂食障害
ある特定の食品しか食べられないという障害です。超偏食、といえばイメージしやすいかもしれません。
摂食障害では、許可食といって決まったものしか食べられない症状がありますが、それはおおむね高カロリーなものや、太るイメージが強い肉などが食べられなくなることがしばしばですが、選択的摂食障害ではそういう基準とは関係なく、特定のもの以外は食物にさえ感じない、心理的(認知的)症状を要します。あまり日本では聞き覚えがない症状です(子供にはいるような気がしますが…)
合計8つの症状
どうでしょう?単に摂食障害といっても、これだけの病理があります。し、これはあくまでもDSMによる診断です。
イギリスではまた別の診断基準があったり、厚生労働省は小児摂食障害に対して14の分類を設けていたり、かなり難解な病気でもあります。
それになんというか、こんなこと言うのもなんですが、あくまでも教科書的というか、もっと複雑な病気であると、わたしは感じています。
ここに複雑性をもたらすのは、その発症要因であったり、さらに合併を伴うことが多く、それが精神病の場合もあれば、発達障害のような遺伝的要素であることもあるし、身体的な合併症もあります。
次回以降はこのあたりを紹介していきたいと思います。
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