生活の崩れてく音がする。
DieAter2 PANDEMONIUMは摂食障害のドキュメンタリー映画です。
が、詳しい内容にはそれほど触れてこなかったので、今回はそれについてお話します。
2と名乗る通り、DieAterには前作があります。
前作のテーマは「摂食障害とは何か?」という内容で、主に症状に関する当事者の向き合い方をインタビューを通じて描きました。
また"いかにして摂食障害が理解されてきたのか"というヒストリーも描かれています。※演出が激しいのも当事者の持つ情動をイメージしたためです。抑えたVerもあります。
さて今作は、前作で出来なかったことをテーマにしました。それが"生活"です。
摂食障害を抱えて生活を営むということはどういうことなのだろう?
前作では中学3年生の出演者がいました(SAWA)。その子も恐らくすぐに寛解することなく生きていきます。
というより、ほとんどの当事者は"今この瞬間も死を喰らいながら生きています"。その姿はまさしくDie eater(DieAter)
そんな当事者の方々が不安に思うことはなんだろう?
進学すること。
友達と過ごすこと。
家族と過ごすこと。
働くこと。
恋をすること。
結婚すること。
出産すること。
働くこと。
歳を重ねていくこと。
つまり生活。
そういったことを具体的に聞いたのが今作になります。
また、より当事者の声を丁寧に届けるために、インタビュアーである私の声は意図的に殆ど削りました。独白のような作品です。
作品の詳細
作品の流れとしては大きくわけて、4人の当事者の話と、それぞれのテーマに合わせた数名の語りが続きます。
チャプターで分けるならば以下の通りです。
・CHIE(1)
・症状について
・CHIE(2)
・孤独について
・CHIE(3)
・YUUKA(1)
・依存について
・YUUKA(2)
・医療について
・YUUKA(3)
・TAMA(1)
・家族について
・TAMA(2)
・閲覧注意映像
・TAMA(3)
・KOBITO(1)
・治療について
・KOBITO(2)
・仕事について
・KOBITO(3)
・ラスト
このような流れで進んでいく"118分"です。
また、集中してみるのも大変でしょうから、それぞれのテーマ部分には「タイムバー」の演出が施されて進行が分かるようになっていたり、演出を除くすべてのシーンがモノクロであったり(※刺激を控えるため)、全台詞に字幕(バリアフリー書体)を施していたりといった手も加えられています。
ある程度、リズムを生まなければ単調になるため、各所にBGMが流れますが、作品の雰囲気に大きく貢献しているものだと感じています。
閲覧注意?
予告などではしばしば出て来ますが、チューブ使用して嘔吐するという話があります。
始め聞いたときは私も「そういうのがあるんだなあ」と思ったものですが、これについてはあまり語られておらず、作中でも出て来ますが、研究が十分ではない分野だと思います。
いかんせ情報提供者も少ないでしょうから。嘔吐についても、それほど理解が進んでいるわけではなく、どのようなリスクがあり、どうしていくのが適正か?などが具体的に示されているケースはあまり見かけません。
例えば、日本摂食障害協会作成のガイドラインにおいても、嘔吐による歯などへの影響は"エビデンスが不十分である"と書かれていました。
チューブの使用映像に関しては、実は過去作でも取り上げています。
ただ実際にいま当事者の中で起きていることは、もう少し進んでおり、今作では"濯ぎ"と呼ばれている行為を撮影しました。恐らく世界初の映像だとは思います。
医療者でもあまり知らない、あるいは知っていても見たことのない方が多いのではないでしょうか。
本編での映像には演出がかなり加えられているので、それほどはっきりとは映していませんが、それでも様々な観点から閲覧に関して注意を促すべき部分と判断し、そのように明記しています。
全ての当事者が行っているわけではないのですが、これが現実ですよ、という私…いえ、私たちからのメッセージです。
誰に届けばいいのか
映画を作るうえで本来重要になるいわゆる視聴ターゲットですが、今作においては、比較的それは曖昧です。私自身、あまり分かっていないという方が正確かもしれません。
ただ言えることは、最初の説明の通り、当事者の方に"情報提供"したかったというのは1つ大きいです。また、医療との関わり方についても、忌憚なく述べて頂いたので、医療者にとっても参考にはなると思います。
ご家族や友人、支援者の方々にも、届けばいいなと思っています。そういう理由もあって、あまり説明はいれず、またナレーションもない、独白の映画です。
しかし一方で出来上がって、改めて自分で観て思ったのは、この映画は決して特異な話ではなく、ありふれた生活や、すぐそばにいる隣人の話です。
ある日突然、あなたが、あなたの家族が、関係者になるかもしれない世界です。
だからこそ、出来るだけ多くの方に見てほしいという曖昧な回答になってしまいます。
マーケティングとしてはあまり有効ではありませんが…(笑)
最後に
この場を借りて改めて申し上げます。
本映画に出演することを快く決めてくださったすべての出演者へ、またその勇気溢れる態度に、深くお礼を申し上げます。
本当にありがとうございました。
また関わってくださる方々も、いつも感謝しております。実務は一人で行っていますが、たくさんの人達に支えられて今日ここまで来ました。
是非12月7日に、劇場まで足を運んでやってください。
藤本純矢
最後に新作予告です。では。
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