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「ねじの秘密」 六角穴付ボルトのリセスの面取り

六角穴付ボルトの「六角穴面取り」に違いがあることをご存じでしたか? どんな違いがあるのか、なぜ違いが生じるのかお話しさせていただきます。


六角穴面取りの「有り」と「無し」

「ねじの秘密」は、ファスナートラブルを避けるために役立つ(細かすぎるかもしれない(笑))ポイントをお伝えするのも目標です。設計者の皆様、また、購買担当者の皆様の日々の業務に、「ねじの秘密」がお役に立てることを願っています。今回のテーマは六角穴付ボルトの“六角穴の面取り”です。

何の変更もしていないはずなのに、現場から突然、六角穴付ボルト(キャップボルト)への不満が増えたことはありませんか? 逆に、「扱いやすくなった」という声が聞こえてきたことがありますか?

それはもしかすると、キャップボルトの六角穴の「面取り」が変わったことが原因かもしれません。

六角穴の面取りの違いなんて、皆さんほとんど気にしたことがないかと思います。でも実は、市販されているキャップボルト類の六角穴には、「面取り有り」と「面取り無し」の品があります。そして、面取り「有り」の品の方が「無し」の品よりも多く流通しています。

六角穴面取り有り
六角面取り無し

「面取り有り」は六角レンチを入れやすいという利点が有ります。しかしながら回すときは遊びとなり、特に低頭や極低頭などで六角穴が浅いと空回りしやすくなります。工具をリセスの奥まで確実に差し込み慎重に回さなければなりません。そして空回りさせてしまうと、ファスナーだけでなく工具も早く傷みます。

一方、「面取り無し」は工具の入れにくさが弱点です。でも、回すときは工具の掛りが良いので空回りしにくく、しっかり締め付けることができるという利点があります。

どちらにも有利な点と不利な点があり、「より優れているのはこちら」とは明言できません。ただ、現場の方たちは手に馴染んだ物が変化すると、その使い勝手の違いに戸惑われることになります。

違いが時に現場を混乱させることのある六角穴付ボルト類のリセスの面取りの「有り」と「無し」。それでも流通段階では《面取りの違い》によって区別することはされません。

なぜ面取り「有り」と「無し」のキャップボルトが区別されずに流通しているのでしょうか?

リセスの面取りの違いがなぜ存在する?

その理由はキャップ類の「規格」にあります。面取りについて規格では「六角穴の面取りをしてもよい」となっています。つまり、キャップボルトメーカーが面取りの「有り」「無し」を自由に決めることができます。さらに六角穴面取り有りの製品でも、メーカーにより六角穴面取り具合の違いが生じます。

リセス面取りの違いは有っても、キャップボルト類として規格通りに製造されれば全く問題のない適格品です。使い勝手に違いはあるものの、市場においては同一の規格によって製造された品ですから、ほとんどの場合に区別されずに流通します。

冒頭で述べた組み付け時に「何か違う」と感じることは、“気のせい”ではなく、面取りの「有り」「無し」やその「形状」が関係しているのかも。一度お手元のキャップボルト類のリセスをチェックしてみてはいかがですか。

面取り「有り」・「無し」は指定できる?

では面取り「有り」「無し」のどちらか一方を納品するように仕様を指定して依頼することはどうなのでしょうか?

「有り」を指定することは可能かもしれません。面取り有りを製作しているねじメーカーが分かれば、メーカー指定をすることで望みの物を入手できると思います。

他方「無し」を指定することはかなり難しいと思います。このコラムを準備している時点の話しとして、前述したように「面取り無し」の流通量は限られています。このコラムがメーカー様の目にとまり、 “面取り無し”の六角穴付ボルト類製造の優先順位を上げていただくと、ご希望通りに皆さんのお手元に届くようになるかもしれません。

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