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「危機パトちゃん」はSNS上に現れた令和の霊獣「件(くだん)」である

変災を予言し、その回避対策を教えてくれる人の言葉を話すパグ犬がYouTubeで大躍進

図版は「天変地異と世紀末日本人の災害観・終末観」古河歴史博物館刊より接写

瑞獣 白鐸図(旅行用心集 1870刊)
危機パトちゃんにそっくりな予言獣

「危機パトロール研究所」というYouTubeチャンネルが秀逸である。皇室問題の危機を軽妙に解説するのは人の顔?みたいなパグ犬のキャラクター。そして決まり文句は「それでは皆さんご一緒に。地下室お疲れ様でした。ありがとうございました。バイバーイ」で結ぶ。

依って件(くだん)の如し

件とは江戸後期頃より散見される牛の体に人の顔を持ち、人の言葉を操る妖怪の一種である。にんべんに牛と書いて「件(くだん)」はこの世に起こる変災を予言し、その対策を教える。
件は嘘をつけない正直者であるゆえ"證文(しょうもん)の終にも如件(くだんのごとし)と書(かく)も此由縁也(このゆえんなり)"と書かれる(ウィキペディア参照)。
冒頭に紹介した白鐸(はくたく)図は件(くだん)とは少し違うが同様の霊獣である。
白鐸(白沢)は中国では象の鼻、犀の目、牛の尾、虎の足の姿で人の言葉を操る霊獣であるが日本に伝わると人面牛のようになり件とごっちゃになってしまったようである。

中国明代の百科事典『三才図会』によると、東望山(江蘇省徐州市銅山区)に白沢という獣が住んでいた。白沢は人間の言葉を操り、そのときの為政者が有徳であれば姿をみせたと言う。そのような生態から、白沢は麒麟や鳳凰などと同類の瑞獣とみなされる。

ウィキペディアより引用

このような霊獣は災難除けや疫病退散等の護符として広まった。アマビエ様も同様に広まったようだ。

現代のSNSと遜色ない江戸庶民の情報発信力

江戸後期は浅間山の噴火による天明の大飢饉やその後も次々と天災に見舞われ百姓一揆が各地で起こるなど財政危機に陥りました。また、黒船来航で外国船の開港がされると新しい疫病(コレラ)が流行したり、攘夷派によるクーデターである安政の大獄が起こるなど幕末の混乱をきわめた時代である。刻々と変化する社会情勢はかわら版や浮世絵や書物、歌舞伎などの様々芸能で人々に報じられていった。

安政大地震の被災状況を伝えた瓦版

日本語の言葉遊びや見立てを駆使して社会を風刺

日本は古来より自分の気持ちを直接表現せず何か別のものに例えて歌に託す文化がある。
幕府への批判など都合悪い言葉も謎かけや見立てなど遊び心満載ですり抜けた。江戸時代の識字率は6割を超え、このような絵入りの印刷物なら文字を読める人に解説してもらえば誰でも理解できる。SNSが発達した現代も過激な発言でBANされないように様々な言葉遊びでかわしている。混沌としたの時代を切り抜け明るい未来を作るために私達もどんどん鯰絵を発信するべきだった思う。

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