【陰の勝者は柯文哲、実は敗者は賴清德】
まず、昨日の選挙についての富士子の結論を言っちゃいますね。
「まあ、こんなもん」😑。
頼氏:558万票、得票率40.1%
侯氏:467萬票、得票率33.5%
柯氏:369萬票、得票率26.5%
みんなご存知の通り、選挙の勝者は頼氏。
一方で、昨日ネットでとある人は頼氏の勝利を「完全勝利」と称したが、残念ながら、それはその人の完全なる思い込みである。
頼氏は、本当の意味では勝っていない。
彼自身が一番よーく知っている。
例えば、
・得票率を見るとわかるが、
①事前のおおかたの予想通り 4割しか票を獲得していない。つまり、投票した有権者10人中 6人は彼に反対。
②頼氏が一番強いはずの台南ですら、事前予測の7割を大きく下回り、得票率は50.9%だった。
③得票総数や得票率は、前回蔡英文の817万票/得票率57.13%と比べると大きく落ち込んでいるのもわかる。
④頼氏は、2000年の陳水扁氏の497万票/得票率39.3%以来の、台湾史上二人目の得票率が半分を超えていない総統になった。
・国民党は立法院の第一党に戻った。
国民党52、民進党51、民衆党8、無所属2。
国民党は14議席増え、民進党は10議席減少。2016年から続いていた、民進党が通したい法案は難なく通せるような状況ではなくなった。中国語でいうと「朝小野大」
一方の3位、柯文哲を見てみよう。
彼は3位だったんだけど、実は間違いなく今回選挙の勝者なんです。
まず、今回選挙の結果によって彼の得た、またはこれから得るお金を見てみよう。
①柯文哲個人:得票数に応じて各候補への補助金が出る。柯氏は1.1億元❗
②政黨補助金:これから4年ごとに1.5億元がもらえる❗
③政治献金 :企業や支持者等からのお金、…合計いくらになるのかしら❓
今回彼は、大金を手にしただけでなく、台湾の第三政党としての確固たる地位を得た。
民進党の蔡英文とはグッドフレンド(注:蔡英文が柯文哲に恩がある)だし、さらなる躍進は既にお墨付き!?
では、最後に、侯友宜を見てみよう。
侯について、正直あまり書くことはないんだよね。
彼は元警政署長としての強さはあるが、台湾の有権者が求めたがるパフォーマンス力がない。
選挙期間中、彼一人だけが特に認められて賞賛される時は少なかった。終盤、趙少康を副総統候補に入れたことによって国民党の選挙対応力は強くなったが、尽力していたのはまだまだ一部の人たちだけで、党全体としての強さが足りなかった。今のところ民進党ほどの組織力がないと見える。
以下、箇条書き(順番は特にない)で今回の選挙についてのポイントをリストアップします。
★いわゆる棄保(自分の支持を勝てそうな候補に変えること)はほとんどなかった。
★本当に6割の人は政権交代を希望していた。
★国民党と民衆党が協力・統合したら、余裕で勝っていた。
★国民党は前回と比べ団結したが、まだ弱い。
★柯文哲のネット応援団はめちゃめちゃ強い。
★国民党の戦犯は朱立倫。(今日にでも辞任では?!)
★「蔡英文ガール」と広く市民に目され、柯文哲の側近である黃珊珊(前 台北副市長。柯文哲の選挙総幹事)は、蔡英文からの刺客としての任務を全うしたかのように見える。
★政権交代できなかった戦犯は柯文哲だ、との巷間の見方あり。
★柯文哲の「俺は侯友宜より強い」は嘘、ハッタリだった。
★投票日前夜の集会を、凱道(総統府前の通り)にすることは大変重要!
蔡英文政権の8年間は、たくさんの負の遺産を残すことになった。
5月の総統就任以降、頼氏が真っ先に直面しなきゃいけないのはエネルギー問題と経済問題。
エネルギー不足がいつまでたっても解決しないと、結局企業は海外に出て行く。若者の低賃金を解決しないと、世界最低の出生率は解決できない、等々。
前述の通り、有権者(投票者)の10人中6人は彼に反対している。
陳水扁政権の時みたいに徐々にレームダック化してしまうのか?
台湾の政治に詳しい(自身も元立法委員)の郭正亮氏は既に、頼氏は4年の任期しか務まらない、と断言している。(早っ)https://www.chinatimes.com/realtimenews/20240113004325-260407
頼氏にとって、全く平坦ではなく、イバラの道であると言える。
最後、富士子としての個人的な感想を述べたい。
見てて、正直悲しいんだよね。。。
台湾は未だに「悲情城市」(悲しい気持ちに満ちた街)だと思う。
台湾の場合、選挙は、結局権力を握っている政治家側が用意した娯楽にすぎない。
台湾人が台湾共和国を建国する日は、まだまだ、まだまだやってこない。
理由は2つ。
・1つは、台湾人は本当に忘れっぽい、流されやすい、騙されやすい。
一方、一旦美味しいものを手にした政治家は、簡単に美味しいものを手放さない。
・もう1つの理由は致命傷なんだけど、でもおそらく台湾人はいつまでたってもできそうにないこと。
「団結」。
今回、6割の人たちが政権交代を希望していたのに、その力を一つにできない。
残念ながら、これが何百年も植民されてきた台湾人。
では最後に。
「不◯」はあったのか?
2つの映像をつけます。
(多分このような映像はこれからも出てくるでしょう)
あったかどうかの判断は、この文章を読んでいるあなたに委ねます。
ダンボール製の投票箱の中の「底板」が実は底板でなく仕切り板で、その下から票がわんさか出てきた。撮影に気づいて開票をしていたスタッフが大慌てで制した。(0:18〜)
票を見た人が「柯文哲」(注:1番)と言ったのに対して、白板に一票マークを書いたのは2番の賴清德のところでは?
上の2つの映像があっても、台湾の中選会は問題にしないし、選挙の結果が覆されることもない、とここで断言できる。
これからの4年間、次の選挙で国民党が勝ちたいなら、また台湾の有能な人達が選ばれたいなら、まず選挙を担う組織である中選会(中央選挙委員会)のトップを、現在の元民進党員から無党派の人に変える(=元の状態に戻す)ことからだと思う。
この人事は、国民党や有識者の抗議にも関わらず立法院過半数だった民進党によって強硬されたものだったが、今回国民党は立法院の第一党に戻ったので、台湾の有識者たちとの抗議は抗議だけでは終わらず有効なものとできるでしょう。この件でも民衆党がキャスティングボートを握ることになるだろうが、普通に考えれば柯文哲陣営にとって悪い話ではないはずである。
台湾はいまだに本物の民主国家にはなっていない。
敢えて言えば、民主国家への移行途上の国家、とか、民主国家の概念が政権側に都合よく使われているだけの国家、だと思う。
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