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アレルギーとの関連で知られるヒスタミン、間質性膀胱炎の膀胱痛・尿意切迫感・頻尿への影響は

間質性膀胱炎では、慢性炎症に伴う組織の線維化によって膀胱が萎縮してしまうことがあります。膀胱痛・尿意切迫感・頻尿といった症状が起こるのは、そのためです。間質性膀胱炎の原因のすべてはいまだ解明されていませんが、このnoteでは病因や発芽そば発酵エキスのメカニズムを探るべく、ヒスタミンという炎症誘発物質の関与について記された論文をピックアップしてきました。これまでの情報を一度、整理したいと思います。

発芽そば発酵エキスの作用機序を探る

学術顧問の望月です。10月2日に公開した記事では、私のこれまでの歩みをまとめました。不二バイオファームに来て1年ですが、地元・静岡でいまも仕事ができているのは幸せなことです。さて、今回のエントリーでは、最近フォーカスしてきた「ヒスタミン」という炎症誘発物質と間質性膀胱炎の関係性を整理していきたいと思います。

間質性膀胱炎になると、慢性的な炎症に伴う組織の線維化によって膀胱の硬化や萎縮が起こります。膀胱痛・尿意切迫感・頻尿といった間質性膀胱炎の症状を和らげるには、炎症を鎮めること、尿を蓄えられるように膀胱組織の弾力を維持することが大切です。

以前、不二バイオファームで製造している発芽そば発酵エキスのヒト試験の概要をご紹介しました。発芽そば発酵エキスの摂取によって、間質性膀胱炎の患者さんの半数以上に症状の改善が認められたというものです(静岡県立大学・中村病院・かげやま医院と実施した試験では改善率8割)。ただ、臨床試験が先行している状況で、作用機序はいまのところ特定できずにいます。食品研究の難しいところです。

ヒスタミン放出やヒアルロン酸の分解とヒアルロニダーゼ

間質性膀胱炎に関連する文献を調べることで、メカニズム解明のヒントを探れないか──。その中で私たちがあらためて注目したのが、ヒスタミンの存在でした。ヒスタミンは、「炎症」「ヒアルロン酸」という2つキーワードに関連しているのです。

間質性膀胱炎の症状には、肥満細胞から放出されたヒスタミンが関与しているという報告があります。炎症誘発物質として知られるヒスタミンの放出には、ヒアルロニダーゼが関与しています。ヒアルロニダーゼはヒアルロン酸を分解する酵素で、炎症反応の過程で活性化します。放出されたヒスタミンが受容体に結合すると、組織に炎症が生じます。膀胱におけるヒスタミンの影響も、例外ではありません。

間質性膀胱炎の治療では、ヒスタミンとヒスタミン受容体の結合を防ぐ薬が処方されます。また、慢性炎症に伴って進展する線維化によって弾力性を失った膀胱の保護・修復のために、ヒアルロン酸の膀胱腔内・壁内注入療法が行われることもあります。

私たちは、ヒアルロニダーゼ阻害にも注目しています。膀胱のヒアルロン酸の分解を止めることができれば、膀胱内に浸潤する肥満細胞からのヒスタミン放出が抑制される可能性があり、ヒアルロン酸の膀胱腔内・壁内注入療法の効果アップ(持続時間の延長)も期待されます。ヒアルロニダーゼ阻害の効果がある食品も報告されていますので、ふだんの食事に取り入れるのもいいでしょう。

まだまだわからないことが少なくありませんが、食事などで病状を改善できることがわかれば、患者さんの救いになるはずです。新たな情報が見つかったときには、あらためてご紹介させていただこうと思っています。


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