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旧司法試験 民法 平成7年度 第1問


問題

 飲食店経営者のAは、不要になった業務用冷蔵庫を、知人のBに頼んで廃棄してもらうことにした。Aが、店の裏の空き地にその冷蔵庫を出しておいたところ、近所の住人Cも、不要になった冷蔵庫を廃棄したいと思い、勝手にAの冷蔵庫のそばに自分の冷蔵庫を捨てた。Bは、トラックで空き地に乗り付け、そこに置いてあった2つの冷蔵庫を回収して、Dの所有する山林に不法に投棄した。これを発見したDは、付近が近所の子供達の遊び場になっているため、2つの冷蔵庫に各5万円の費用を費やして危険防止に必要な措置を講ずるとともに、A、Cをつきとめた。なお、Bの所在は、不明である。
この場合に、DがA、Cに対してどのような請求ができるかについて、A、Cからの反論を考慮して論ぜよ。

関連条文

民法
398条(第2編 物権 第10章 抵当権 第3節 抵当権の消滅):
 抵当権の目的である地上権等の放棄
538条(第3編 債権 第2章 契約 第1節 総則):第三者の権利の確定
697条(第3編 債権 第3章 事務管理):事務管理
702条(第3編 債権 第3章 事務管理):管理者による費用の償還請求等
709条(第3編 債権 第5章 不法行為):不法行為による損害賠償
715条(第3編 債権 第5章 不法行為):使用者等の責任

一言で何の問題か

物権的請求と債権的事務管理

答案の筋

信義則上、他人の権利を侵害する場合にまで所有権の放棄を主張することはできない。また、不可抗力により侵害状態が生じたにもかかわらず、費用を相手方負担(行為請求権)とさせるのは酷であり、例外的に物権者自らが除去することを相手方に認容させて、費用も物権者自らの負担となるべきである(認容請求権)。さらに、自己の所有物が他人に危険を及ぼす恐れのある場合に、それに危険防止措置を施すことは、当然所有者であれば行うべき事務にあたり、Dによる事務管理請求は認められる。

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