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平成26年度 大阪府職員採用試験 行政法 指定ゴミ袋

問 題


甲市は、ごみの減量化を推進するため、甲市が指定する有料のごみ収集袋(以下 「本件指定袋」という。)の使用を住民に義務付け、本件指定袋を使用していない ごみは収集しないという方針を定め、この収集方式を平成25年7月から実施する ことにした。甲市は、さらに、指定ごみ収集袋の規格等に関する要綱(以下「本件 要綱」という。)を定め、本件指定袋につき、犬猫防除やごみ腐敗防止等の効果が あるとされる忌避剤を含有すること等の規格要件を設けた。甲市は、本件指定袋に よる収集を開始するに先立ち、本件指定袋の製造技術を有する会社であるXに、本 件要綱に基づいて本件指定袋の製造承認を与えるとともに、約500万枚の在庫準 備及び販売協力店舗への納入を要請した。なお、本件指定袋の製造原価は1枚あた り約10円であった。
甲市が、平成25年4月から、甲市内のモデル地区において、Xが製造した本件 指定袋を無償で配布し、本件指定袋による収集を試験的に実施したところ、忌避剤 の臭気が強くアレルギー発症の原因になりかねないという不満や、過去に購入した ごみ袋が無駄になるため本件指定袋以外のごみ袋も使用させてほしいという要望が 多数寄せられた。また、同年7月が近づくにつれて、マスコミ等から、1社独占の ため本件指定袋の販売価格が不当に高額になっているという批判がされるように なった。
そこで、甲市は、同年7月以降も、暫定的に本件指定袋以外のごみ袋の使用を認 めることにし、さらに、同年11月に、本件要綱を改正して忌避剤の含有等の規格 要件を緩和するとともに、他社の参入を認めることにした。その結果、住民は忌避 剤を含有しない安価なごみ袋を使用するようになり、Xが甲市の要請を受けて製造 した約500万枚の本件指定袋はほとんどが売れ残ってしまった。
Xは、甲市の政策変更によって、以下の(1)及び(2)の損害が生じたとして、 甲市に損害賠償を求める訴えを提起した。
(1)売れ残った本件指定袋の製造等に要した費用
(2)甲市が本件要綱を改正せず、Xが製造した本件指定袋のみによる収集を行っ ていれば、Xが得られたであろう利益 Xの請求が認められるか否かについて論じなさい。

関連条文

国家賠償法
1条:公権力の行使に基づく損害の賠償責任、求償権
2条:公の営造物の設置管理の瑕疵に基づく損害の賠償責任、求償権
民法
709条(3編 債権 5章 不法行為):不法行為による損害賠償請求
憲法
92条(8章 地方自治):地方自治の基本原則
地方自治法
1条(1編 総則):この法律の目的

一言で何の問題か

1 施策変更に伴う損害賠償責任
2 逸失利益

つまづき・見落としポイント

確定的な損害と逸失利益に対する採用ロジックの場合分け

答案の筋

1 
請求可:施策の変更と当該費用との間に因果関係が認められ、要件も満たし、やむを得ない客観的事情もないため、当事者間の信頼関係を不当に破壊するものとして違法
2 
請求不可:甲市が本件要綱を改正しなかった場合、Xが得られた利益を求める訴えについては、基本的には認められない。なぜなら、甲市の原則的な施策変更の自由と、将来にわたる確定的な利益を予期できないという法的原則が存在するからである。しかし、甲市がXに対して一定期間独占製造を約束した場合など、特別な事情がある場合は例外的に認められる可能性がある。

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