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旧司法試験 民法 昭和46年度 第1問


問 題

 甲の病気による入院療養が長期に及んだため、甲の妻乙は、甲の医療費調達の目的で、甲から預かっていた実印を無断で使用して、乙を代理人とする旨の甲名義の委任状を作り、甲を代理して甲所有の土地を丙に売却し、丙は更にこれを丁に売却した。乙に右土地売却の権限がなかったことについて、丙は善意・無過失であったが、丁は悪意であった。退院後これを知った甲は、丁に対し、土地の返還や登記の抹消を請求することができるか。

関連条文

民法
1条2項(第1編 総則 第1章 通則):信義則(禁反言)
109条(第1編 総則 第5章 法律行為 第3節 代理):
 代理権授与の表示による表見代理等
110条(第1編 総則 第5章 法律行為 第3節 代理):権限外の行為の表見代理
113条(第1編 総則 第5章 法律行為 第3節 代理):無権代理
117条(第1編 総則 第5章 法律行為 第3節 代理):無権代理人の責任
761条(第4編 親族 第2章 婚姻 第2節 夫婦財産制):
 日常の家事に関する債務の連帯責任
762条(第4編 親族 第2章 婚姻 第2節 夫婦財産制):
 夫婦間における財産の帰属

一言で何の問題か

日常家事権と表見代理、悪意の転得者

答案の筋

土地の売却は日常家事権の範囲内とは言えず無権代理となると思えるも、正当な理由があれば表見代理として認められる。また、法律関係の早期確定の要請から、いわゆるわら人形の介在を行使するなどの背信的悪意者でない限り、悪意の転得者であっても有効に権利を承継取得する。

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