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旧司法試験 民事訴訟法 平成21年度 第2問


問 題

Xは、Yとの間で動産の売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結したとして、Yに対し債務の履行を求めたが、Yは、本件売買契約はYの代理人と称するZがYに無断で締結したものだと主張し、Xの請求に応じようとしない。
そこで、Xは、YとZを共同被告とする訴えを提起し、Yに対しては本件売買契約の当事者としての債務の履行を求め、Zに対しては無権代理人としての債務の履行を求めた(両負けの回避)
第1回口頭弁論期日において、Xは、同時審判の申出をし、Yに対しては本件売買契約当時のZの代理権の存在を主張し、Zに対してはZの代理権の不存在を主張した。Yは、Zの代理権の存在を争う旨の主張をし、証拠の申出をしたが、Zは、答弁書を提出しないまま第1回口頭弁論期日に欠席した。
1 裁判所は、第1回口頭弁論期日においてZについて弁論を分離してX勝訴の判決をすることができるか。
2 裁判所は弁論を分離しなかったが、Zはその後の期日もすべて欠席した。証拠調べの結果、裁判所は、本件売買契約当時、Zは代理権を有していたとの心証を得た。この場合、裁判所はどのような判決をすべきか。
3 2とは逆に、裁判所は、本件売買契約当時、Zは代理権を有していなかったとの心証を得たため、XのYに対する請求を棄却し、Zに対する請求を認容する判決をした。この第1審判決に対してXがYを被控訴人として控訴した場合、控訴裁判所は、YとZを共同被控訴人として判決をすることができるか。

関連条文

民訴法
39条(1編 総則 3章 当事者 2節 共同訴訟):共同訴訟人の地位
40条2項(1編 総則 3章 当事者 2節 共同訴訟):必要的共同訴訟
41条1/3項(1編 総則 3章 当事者 2節 共同訴訟):
 同時審判の申出がある共同訴訟
159条1/3項(2編 第一審の訴訟手続 3章 口頭弁論及びその準備 1節 口頭弁論):
 自白の擬制
民法
99条1項(1編 総則 5章 法律行為 3節 代理):代理行為の要件及び効果
117条1項(1編 総則 5章 法律行為 3節 代理):無権代理人の責任

一言で何の問題か

1 同時審判の申出における「法律上併存し得ない場合」
2 擬制自白(159Ⅲ)に伴う法的に択一関係にある請求の両勝ち
3 「法律上併存し得ない」請求における両勝ちを求める控訴の被控訴人

つまづき、見落としポイント

同時審判申出訴訟は、あくまで通常共同訴訟(39:適用、40:適用外)

答案の筋

1 同時審判申出訴訟は、原告が両負けすることを防ぐための制度であり、「法律上併存し得ない場合」とは、法的に択一関係にある場合をいう。ここで、Zの代理権存在は、Yへの債務の履行請求における請求原因事実である一方、Zへの無権代理人の責任に基づく請求を障害する事実となり、実体法上非両立の関係にある。よって「法律上併存し得ない場合」にあたり、裁判所は弁論を分離してX勝訴の判決をすることができない。
2 Zは口頭弁論期日に一度も出席しておらず、Xの主張する請求原因事実に擬制自白が成立し、同時審判申出訴訟は弁論と裁判の分離が禁じられるのみであり、通常共同訴訟である点は変わらないため、共同訴訟人独立の原則が妥当する。また、合一確定の要請もない。よって、XのY、Zに対する両請求について認容判決をすべきである。
3 同時審判申出訴訟は通常共同訴訟にすぎず、Xの上訴の効力はZに影響を及ぼさない。このため、Zについて確定遮断効・移審効は生じないため、YとZを共同被控訴人として判決をすることはできない。

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