見出し画像

司法試験予備試験 刑訴法 平成25年度


問 題

次の記述を読んで、後記〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
甲は、傷害罪の共同正犯として、「被告人は、乙と共謀の上、平成25年3月14日午前1時頃、L市M町1丁目2番3号先路上において、Vに対し、頭部を拳で殴打して転倒させた上、コンクリート製縁石にその頭部を多数回打ち付ける暴行を加え、よって、同人に加療期間不明の頭部打撲及び脳挫傷の傷害を負わせたものである。」との公訴事実が記載された起訴状により、公訴を提起された。
〔設問1〕
冒頭手続において、甲の弁護人から裁判長に対し、実行行為者が誰であるかを釈明するよう検察官に命じられたい旨の申出があった場合、裁判長はどうすべきか、論じなさい。
〔設問2〕
冒頭手続において、検察官が、「実行行為者は乙のみである。」と釈明した場合、裁判所が、実行行為者を「甲又は乙あるいはその両名」と認定して有罪の判決をすることは許されるか
判決の内容及びそれに至る手続について、問題となり得る点を挙げて論じなさい

関連条文

刑法
60条(第1編 総則 第11章 共犯):共同正犯
204条(第2編 罪 第27章 障害の罪):障害
刑訴法
256条3項(第2編 第1審 第2章 公訴):訴因の明示
294条(第2編 第1審/第3章 公判/第1節 公判準備及び公判手続):訴訟指揮権
299条(同前):同前と当事者の権利
306条(同前):証拠物に対する証拠調べの方式
312条(同前):起訴状の変更
333条(第2編 第1審/第3章 公判/第5節 公判の裁判):
    刑の言渡しの判決、刑の執行猶予の言渡し
335条(同前):有罪判決に示すべき理由
338条4号(同前):公訴棄却の判決
刑訴規則
208条1,3項 (第2編 第1審/第3章 公判/第1節 公判準備及び公判手続):釈明等
209条(同前):訴因、罰条の追加、撤回、変更・法第312条

一言で何の問題か

1 訴因の特定と求釈明
2 実行行為者の択一的認定と争点顕在化措置

つまづき、見落としポイント

「犯罪の択一的認定」論証との相違

答案の筋

1 共謀共同正犯の場合、実行行為者の特定は訴因の特定に不可欠の事実に当たらず、また、公訴事実の記載から他の犯罪と識別できるため、裁判長は求釈明の義務は負わないものの、争点明確化の見地から任意的に行うべき
2 内容的には、訴因の特定に不可欠でない事実については、本来認定せずとも足りるのであるから、明示的択一的認定も許される一方、当該釈明と異なる実行行為者の認定をするにあたり、手続き上、争点顕在化措置を取らなければ被告人の防御権を不当に侵害するものであって違法

ここから先は

2,148字

¥ 500

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?