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旧司法試験 刑訴法 平成19年度 第1問


問題

警察官Aは、住居侵入被害発生の110番通報を受け、被害者B女方に赴いた。Bの説明は、「私はこの家に一人で住んでいます。先ほど居間で夕食をとっていると見知らぬ男がかぎの掛かっていない玄関から居間に上がり込んできました。悲鳴を上げるとその男は何もせずに逃げて行きましたので、すぐに110番しました。」というものであった。
そこで、Aは、Bとともに付近を捜したところ、上記通報から約30分後に、B方から約200メートル離れたコンビニエンスストアで雑誌を立ち読みしている男性甲をBが認め、「あの男です。」と指示した。その直後、甲が同店から出てきたので、Aは、同店前路上において、甲に対し職務質問を開始した。甲の外見からは本件住居侵入を犯したことをうかがわせる証跡は認められなかったものの、甲がAの質問には何も答えずに立ち去ろうとしたことから、Aは、同所で、甲を本件住居侵入の現行犯人として逮捕した。さらに、Aは、その場で甲の身体を捜索し、着衣のポケットからカメラ機能付携帯電話、名義の異なる複数のクレジットカード及び注射器を発見したため、これらを差し押さえた。
以上のAの行為は適法か。

関連条文

刑訴法
212条(2編 第一審 1章 捜査):現行犯人
213条(2編 第一審 1章 捜査):現行犯逮捕
218条1項(2編 第一審 1章 捜査):
 令状による差押え・記録命令付差押え・捜索・検証
警察官職務執行法
2条1項:質問

問題文の着眼

甲には何らかの犯罪を犯したことをうかがわせる事情はなかった
差し押さえた物は、種類の異なる複数のものがあった

一言で何の問題か

・現行犯逮捕と準現行犯逮捕、緊急逮捕
・無令状捜索・差押え

答案の筋

現行犯逮捕、準現行犯逮捕及び緊急逮捕それぞれの要件に当てはめる。
逮捕に伴う差押えの物的限界を超えないか(逮捕者に危害を及ぼす恐れがないか、被疑事実に関連しないか)評価する。

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