見出し画像

司法試験予備試験 民訴法 平成26年度

問 題

次の【事例】について、後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。

【事例】

Xは、Aとの間で、Aの所有する甲土地についての売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結し、売買を原因とする所有権移転登記を経由している。ところが、本件売買契約が締結された後、Xは、Yが甲土地上に自己所有の乙建物を建築し、乙建物の所有権保存登記を経由していることを知った。Xは、Yに甲土地の明渡しを求めたが、Yは、AX間で本件売買契約が締結される前に、Aとの間で土地上に自己所有の建物を建築する目的で、甲土地を賃借する旨の契約を締結しており、甲土地の正当な占有権原がある旨を主張して、これに応じなかった。
そこで、Xは、平成26年4月15日、甲土地の所在地を管轄する地方裁判所に、Yを被告として、甲土地の所有権に基づき、乙建物を収去して甲土地を明け渡すことを求める訴訟(以下「本件訴訟」という。)を提起し、その訴状は、同月21日、Yに対して送達された。
平成26年7月13日の時点では、乙建物は、これをYから賃借したWが占有している。

〔設問1〕

上記の【事例】において、YがWに乙建物を賃貸したのは平成26年2月10日であり、Xは、Wに乙建物が賃貸されたことに気付かないまま、Yのみを相手に建物収去土地明渡しを求める本件訴訟を提起し、その後、乙建物をWが占有していることに気付いた。Xは、Wに対する建物退去土地明渡請求についても、本件訴訟の手続で併せて審理してもらいたいと考えているが、そのために民事訴訟法上どのような方法を採り得るか説明しなさい。

〔設問2〕
(〔設問1〕の問題文中に記載した事実は考慮しない。)
上記の【事例】において、YがWに乙建物を賃貸したのは平成26年5月10日であり、そして、Wは、本件訴訟で、AX間で本件売買契約が締結された事実はないとして、Xが甲土地の所有権を有することを争いたいと考えている。
ところが、Yは、本件訴訟の口頭弁論期日において、AX間で本件売買契約が締結されたことを認める旨の陳述をした。
① Yがこの陳述をした口頭弁論期日の後に、Wが本件訴訟に当事者として参加した場合
② Wが本件訴訟に当事者として参加した後の口頭弁論期日において、Yがこの陳述をした場合
③ Xの申立てにより裁判所がWに訴訟を引き受けさせる旨の決定をした後の口頭弁論期日において、Yがこの陳述をした場合
のそれぞれについて、Wとの関係で、このYの陳述が有する民事訴訟法上の意義を説明しなさい。

関連条文

民訴法
38条(1編 総則 3章 当事者 2節 共同訴訟):共同訴訟の要件
39条(1編 総則 3章 当事者 2節 共同訴訟):共同訴訟人の地位
40条1,3項(1編 総則 3章 当事者 2節 共同訴訟):必要的共同訴訟
41条(1編 総則 3章 当事者 2節 共同訴訟):同時審判の申出がある共同訴訟
47条4項(1編 総則 3章 当事者 3節 訴訟参加):独立当事者参加
49条1項(1編 総則 3章 当事者 3節 訴訟参加):
 権利承継人の訴訟参加の場合における時効の完成猶予
50条1,3項(1編 総則 3章 当事者 3節 訴訟参加):義務承継人の訴訟引受け
51条前段(1編 総則 3章 当事者 3節 訴訟参加):
 義務承継人の訴訟参加及び権利承継人の訴訟引受け
52条(1編 総則 3章 当事者 3節 訴訟参加):共同訴訟参加
152条1項(2編 第一審の訴訟手続 3章 口頭弁論及びその準備 1節 口頭弁論):口頭弁論の併合等
179条(4編 証拠 1節 総則):証明することを要しない事実

一言で何の問題か

1 弁論の併合と明文なき主観的追加的併合(原告X側からの参加要請)
2 裁判上の自白と参加承継・引受承継(判決の影響を受けるWの争い方)

つまづき・見落としポイント

Wの参加形態に応じた被告Y自白の効果について場合分けできるか

答案の筋

1 明文なき主観的追加的併合は、併合前の訴訟状態を利用できるとは限らず、訴訟の複雑化や遅延を招いたり、濫訴が増加する危険もあり認められないため、裁判所の裁量次第ではあるが、別訴を提起して併合されるのを待つしかない
2 当該陳述は、主要事実にあたり裁判上の自白となる。
2① 参加承継にあたり、承継人は自らの意思によって訴訟に参加するので
あり、旧当事者の訴訟追行によって形成された訴訟状態を全面的に引き継ぎ、従前の訴訟状態に拘束されるため、本自白を争えない
2② 参加承継にあたり、独立当事者参加の審判の規律、必要的共同訴訟の規律が適用されるため、全員の利益となる行為のみ効力を生ずるところ、本自白はWにとって不利益となるため、本自白を争える
2③ 引受承継にあたり、同時審判申出共同訴訟の規律、共同訴訟人独立の原則が適用されるため、本自白を争える

ここから先は

2,741字

¥ 1,000

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?