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旧司法試験 民事訴訟法 昭和50年度 第2問


問 題

甲は乙に対して、不法行為に基づき100万円の損害賠償請求の訴えを提起した。
(1) 訴え不適法却下の判決に対して、乙は控訴できるか。
(2) 甲は、全額勝訴の判決を受けた後、損害額は150万円であることが判明したとして、控訴を提起することができるか。
(3) 訴えの提起後3年経って、甲の全部勝訴の判決が言い渡された後に、甲の右の控訴提起があった場合はどうか。

関連条文

民訴法
114条(1編 総則 5章 訴訟手続 5節 裁判):既判力の範囲
246条(2編 第一審の訴訟手続 5章 判決):判決時効
民法
147条1項1号(1編 総則 7章 時効 1節 総則):
 裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新
724条1号(3編 債権 5章 不法行為):
 不法行為による損害賠償請求権の消滅時効

一言で何の問題か

1 上訴の利益の判断基準(被告にとっての却下判決と棄却判決)
2 明示的一部請求訴訟と残額を争う控訴
3 残額に対する時効の更新の効力

つまづき、見落としポイント

不適法却下に対する控訴って?

答案の筋

1 控訴の利益が問題となる。乙が不適法却下の判決を求めていた場合、控訴の利益は認められない。しかし、乙が請求棄却判決を求めていた場合、紛争解決基準が示されるため、控訴の利益が認められる。
2 損害額150万円のうち100万円が認容され、残額を後訴で訴求することは既判力に抵触する。しかし、明示的一部請求訴訟でない場合、既判力が残額に及び、控訴が認められなければ残額を争えなくなる。この場合、例外的に控訴の利益が認められる。
3 明示が無い場合、時効の更新の効力が問題となる。時効の更新の効力は訴訟物の範囲に生じるべきで、訴訟物の分断がなされない場合、効力は債権全体に及ぶ。本件では、債権全体に時効の更新効力が生じ、残部は消滅していないため、甲の控訴は認められる。

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