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旧司法試験 民法 平成19年度 第1問


問 題

 買主Xは、売主Aとの間で、Aが所有する唯一の財産である甲土地の売買契約を締結した。ところが、XがAから所有権移転登記を受ける前に、Aは、Bに対して、甲土地について贈与を原因とする所有権移転登記をした。

1 上記の事案において、(1)AB間の登記に合致する贈与があった場合と、(2)AB間に所有権移転の事実はなくAB間の登記が虚偽の登記であった場合のそれぞれについて、Xが、Bに対して、どのような権利に基づいてどのような請求をすることができるかを論ぜよ。

2 上記の事案において、Bは、甲土地について所有権移転登記を取得した後、Cに対して、甲土地を贈与し、その旨の所有権移転登記をした。この事案において、(1)AB間の登記に合致する贈与があった場合と、(2)AB間の所有権移転の事実はなくAB間の登記が虚偽の登記であった場合のそれぞれについて、Xが、Cに対して、どのような権利に基づいてどのような請求をすることができるかを論ぜよ。

関連条文

民法
94条(第1編 総則 第5章 法律行為 第2節 意思表示):虚偽表示
177条(第2編 物権 第1章 総則):動産に関する物権の譲渡の対抗要件
424条(第3編 債権 第1章 総則 第2節 債権の効力):詐害行為取消請求
424条の5(第3編 債権 第1章 総則 第2節 債権の効力):
 転得者に対する詐害行為取消請求
424条の9(第3編 債権 第1章 総則 第2節 債権の効力):
 債権者への支払又は引渡し
425条(第3編 債権 第1章 総則 第2節 債権の効力):
 認容判決の効力が及ぶ者の範囲

一言で何の問題か

虚偽表示と詐害行為取消請求

答案の筋

1(1) 177条で背信的悪意者は保護されない。(移転登記請求権➡特定物債権➡)損害賠償債権を被保全債権として詐害行為取消請求をすべき(B→Aの移転登記)
1(2) 通謀虚偽表示によりBは無権利者、所有権に基づく移転登記請求をすべき(B→Xの移転登記)
2(1) Cが背信的悪意者である場合、177条で保護されず、所有権に基づく移転登記請求をすべき(C→Xの移転登記)。また、425の5①より、BもCもAの行為がXを害することを知っていた場合は、詐害行為取消請求をすべき(C→Aの移転登記)
2(2) Cが通謀虚偽表示の第三者として、又は権利外観法理により保護される場合を除き、AB間の贈与が存在しない以上、Cは無権利者Bからの譲り受けにすぎず、Xは所有権に基づく移転登記請求をすべき(C→Xの移転登記)。また、425の5①より、BもCもAの行為がXを害することを知っていた場合は、詐害行為取消請求をすべき(C→Aの移転登記)

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