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旧司法試験 刑訴法 平成10年度 第2問


問題

捜査官は、偽造の供述調書を唯一の資料として甲方の捜索差押許可状の発付を受け、同人方を捜索して覚せい剤を差し押さえた。そして、右覚せい剤を資料として、「甲は自宅において覚せい剤を所持していた」との被疑事実につき、甲に対する逮捕状の発付を得て、甲を逮捕した。甲は、逮捕・勾留中に右事実について自白し、供述調書が作成された。公判において、甲は右覚せい剤の取調べについて異議がないと述べ、自白調書の取調べに同意した。
覚せい剤及び自白調書の証拠能力について論ぜよ。

関連条文

刑訴法
1条(1編 総則):この法律の目的
319条1項(2編 第一審 3章 公判 4節 証拠):自白の証拠能力・証明力
憲法
31条(3章 国民の権利及び義務):法定の手続の保障
38条2項(3章 国民の権利及び義務):自己に不利益な供述、自白の証拠能力

一言で何の問題か

違法収集証拠排除法則と自白法則、同意の効果

つまづき、見落としポイント

学説(任意性説と違法排除説)の違いによる書き方の相違

答案の筋

偽造の供述調書を発端として得た覚せい剤は違法収集証拠排除法則で排除され、これを奇貨として得た自白についても、任意性説(自白法則+違法性の承継)により排除される。公判での同意も、違法の程度が高く公正さを容認できず証拠能力は否定される。

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