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旧司法試験 民法 平成9年度 第1問


問題

 Aは、その所有する甲土地にBのために抵当権を設定して、その旨の登記をした後、Cに対し、甲土地を建物所有目的で期間を30年と定めて賃貸した。Cは、甲土地上に乙建物を建築し、乙建物にDのために抵当権を設定して、その旨の登記をした。その後、Cは、甲土地上の庭先に自家用車のカーポート(屋根とその支柱だけから成り、コンクリートで土地に固定された駐車設備)を設置した。
 右の事業について、次の問いに答えよ(なお、各問いは、独立した問いである。)。
1 Bの抵当権が実行され、Eが競落した場合、乙建物及びカーポートをめぐるEC間の法律関係について論ぜよ。
2 Dの抵当権が実行され、Fが競落した場合、乙建物及びカーポートをめぐるFA間の法律関係について論ぜよ。

関連条文

民法
87条1項(第1編 総則 第4章 物):主物及び従物
242条(第2編 物権 第3章 所有権 第2節 所有権の取得):不動産の付合
370条(第2編 物権 第10章 抵当権 第1節 総則):抵当権の効力の及ぶ範囲
387条(第2編 物権 第10章 抵当権 第2節 抵当権の効力):
 抵当権者の同意の登記がある場合の賃貸借の対抗力
389条(第2編 物権 第10章 抵当権 第2節 抵当権の効力):
  抵当地の上の建物競売
395条(第2編 物権 第10章 抵当権 第1節 総則) :抵当建物使用者の引渡しの猶予
612条(第3編 債権 第2章 契約 第7節 賃貸借) :賃借権の譲渡及び転貸の制限

借地借家法
20条(第2章 借地 第3節 借地条件の変更等):
 建物競売等の場合における土地の賃借権の譲渡の許可

民事執行法
59条2項(2章  強制執行 2節 金銭の支払を目的とする債権についての強制執行):売却に伴う権利の消滅等
79条(2章  強制執行 2節 金銭の支払を目的とする債権についての強制執行):
 不動産の取得の時期
188条(3章 担保権の実行としての競売等):不動産執行の規定の準用

一言で何の問題か

抵当権と賃借権、カーポートの付合

答案の筋

1 建物所有者Cの賃借権は土地抵当権者Bのための抵当権設定登記後に取得されたものであり、抵当権に劣後するため、土地競落者Eは甲土地の所有権に基づき、Cに、乙建物収去甲土地明渡請求ができる。次に、カーポートの収去請求については、Cが乙建物の常用に供するために付属させたものであり、乙建物の従物であるとともに、Cが建物所有目的の賃借権を基に設置したものであり,Cにその所有権が留保されるため、Eの請求は認められる。
2 甲土地所有者Aは、建物競落者Fに乙建物及びカーポート収去、甲土地明渡請求をすることが考えられるも、建物抵当権者Dの抵当権の効力が、建物所有者Cが有していた甲土地賃借権にまで及ばなければ目的を全うできず、そうでなくても、賃借権は建物の従たる権利であり、従物に準じて、主物・主たる権利である乙建物に付随してFに移転する。また、FはAの承諾が必要とはなるが、これに代わる裁判所の許可を得ることでAに賃借権を対抗できるため、Aの請求は認められない。

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